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第15話 混戦です

「みなさん! 頑張りましょう!」


「うん!」

「ああ!」

「おう!」


 その言葉と同時に全員行動を開始する。


「まずは作戦通り、俺とメイさんは隠れる拠点を探します。ユウキさんとツバサさんは別々に行動して、可能な限り俺の近くの敵を倒してください!」


「「「了解!」」」


 私達はリーダーの指示通りに動いてく。

 まずは目に入った近くの4人組チームに攻撃だ。

 私は翼を展開すると速度全開でその4人組のチームに近づいた。すると1人を守ろうと他の3人が前に出る。


 なるほど。あいつがリーダーね。

 私は3人の攻撃を避けながら奥の1人に近づいて、元光線銃――スティングで切り裂きながら進み続ける。

 そして距離が少し空いたところにスティングで氷の弾を何発かプレゼントしたところで、そいつのHPが0になってチーム全員が粒子となって消えた。


「リーダーって分かりやすいのはダメだったねー」


 彼らに届きもしない言葉を送っていると、左右両方から私に向かって飛びかかってくるプレイヤーがいた。


「シロちゃーん!」

「悪いけど倒させてもらうよ!」


 私はすぐさまそれぞれに氷の弾を撃ち放ってから、翼で飛行して建物を利用して彼らの視界から姿を消す。ってかシロちゃんって何!?

 氷の弾に気を取られていれば、翼の速度ならそれくらい容易い。


 建物の陰から彼らが私を見失ってる姿を確認したところで、スティングを使って今度はレーザーのような氷を一人の足元に放った。

 一人にそれが命中して地面にくっつくと、もう一人がビームを撃った方を見る。


 だけどそれは悪手だ。ビームを撃った位置よりも高い位置から近づくことで、彼は私に気がつくのが遅れる。

 翼の速度の前では一瞬の隙が命取りである。

『翼撃』二回と氷の弾を数発撃ち込んだところで、彼もまた粒子となった。


 その間にもう一人も足元の氷に対処したようで、走りながら私に向けて拳を突き出すと、拳を起点に緑色の竜巻が発生した。

 私は翼でそれを防御すると、次の瞬間には彼の姿を見失っていた。すると後ろから声がした。


「ここだぜシロちゃん」


 急いで振り向くと、そこには緑の軌跡を描きながら高速で動く彼の姿が。その腕には緑の風が渦巻いており、私の背中に直接それを叩きつけた。


「きゃっ」


 それを受けて前に飛ばされて何度か地面を転がるけど、翼が生えていたおかげでそれなりにダメージは防げただろう。

 転がりながらも何とか立ち上がったところで私は彼と睨み合った。


「戦いの世界だ。文句は言わないでくれよ」


 一応私が女子だからか罪悪感を感じたのか、それを見た彼が言ってくるが、もちろんそんなこと承知の上だ。

 何なら心臓とか首とか狙ってダメージ増加を狙ってる私の方が残虐過ぎるくらいだしね。


「もちろんだよ」


「そりゃ助かるぜ!」


 私が答えたところで彼は緑の軌跡を描きながら高速で私との距離を近づける。


「速さは翼の専売特許じゃないぜ!」


「そんなこと知ってるよ!」


 ユウキさんの肉体強化もかなりの速度を誇っている。訓練でそれは体感している。だから対処法もある。

 私は翼で飛び上がることで接近を許さない。仮に彼が飛べたとしても、空中能力には翼の右に出るものは現状存在しないと思う。


「飛ぶ相手への技くらい持っているっての!」


 彼は全身に纏っていた緑の力を凝縮して飛ばしてくるが、空中に自在に動ける私はそれを回避するだけだ。

 でも避けてるだけでは私も勝てない。スティングを構えてビームを繰り返し放っていく。

 私が彼の攻撃を回避できたように、彼もまた私との距離があるから楽々回避する。


 このまま続けばTP消費の差から私が落ちるだけだろう。でも地上と空中では決定的な差がある。

 それは地面のコンディション。避け続ける中で彼も気がついたようだ。


「まさか足元を凍らせて!?」


「その通り!」


 地上の氷の範囲が広がったところで私は彼に一気に近づいた。

 彼も私に対処するべく動こうとするが、氷で足を滑らせてしまう。


「うわぁ!?」


 滑りやすい路面は意識しても足を滑らす人がいる中で、急いで行動しようとすればそうなる。

 彼が立ち上がろうとしているところに、氷の翼と刃で彼を貫いたところで、彼の姿が光の粒子となった。


 序盤から想像を超える激戦だ。しかし、勝利のためには止まっていられない。TP回復薬を飲みながら、近くに敵がいないか探していく。

 周りの捜索をしていると、黒の学ランをマントのように羽織り、左腕に包帯を巻いた赤い瞳の少年がこちらに向かってフラフラと歩いてきた。

 敵だ。私も学ランの少年に向かっていく。


 10メートルくらいの距離まで近づいたところで、少年は足を止めて、叫んだ。


「貴様! ハーレムの一員か!?」


「な、なんでしょう?」


 戦いは想定していてもいきなりの質問は想定していない。

 思わず聞き返してしまうが、少年は最初から話し合いを考えていなかったのか、そのまま続ける。


「良かろう……。ハーレムなんて悪しき文化だ。我がぶち壊してやる」


 少年から闇のオーラが溢れ出す。幻とかではなく言葉通りにだ。

 ごめんなさい。ふざけてたらついてしまったチーム名なんです。と言いたいところだけど、そんな余裕はなさそうだ。

 闇のオーラを纏った彼の拳を左の翼を展開して受け止める。


「白き姿に透き通るような翼……、その純真無垢さ故に染まってしまったか。……我が闇の色に染めるのも面白そうだな!」


 翼と拳のぶつかり合いの際に、何かよく分からないことを言っていたが、それが少年の力になっていたようで、徐々に力が強くなっていくのが分かる。

 押し負ける前に右の翼も展開して後ろに飛ぶことで、力のぶつけ合いから離脱するが、少年が掌から放った闇の弾を直撃してしまう。


「くっ……!」


 少年は追撃するためか、闇のオーラが上半身全体に獣のような形を作りながら纏わりついていき、最終的には狼人間

のような姿になった。

 見た目通り速度もかなり上がっており、あっという間に私に追いつく。


 空に飛び上がることで追撃を回避したいところだが、間に合わない。両方の翼でオーラで形作られた爪による攻撃を防ぐが、勢いを殺しきれず宙を舞うことになった。


「左腕に封印されし獣を解き放った今、お前が我に勝てる確率はゼロだ。せいぜい足掻くといい」


 痛々しい言葉を口にしているが、その実力は馬鹿にならない。無理でも翼を動かすことで高度を上げていく。

 高度が少し上がったところで体勢を整えながら少年の方を見ると、口を大きく開きそこから紫色の炎のようなものを吐き出していた。


「シャドウブレス!」


 獣のようになったと思えば炎を吐いたりと、何でもありか!?

 思わず叫びたくなるところだけど、それよりも防御だ。翼を動かすことで氷の塊を作り出し、それをぶつけることで何とか相殺する。


「姑息な!」


 少年はそう叫ぶが、それぞれ戦場が違うだけだ。

 まずは体勢を立て直させてもらう。一度距離を取れば炎を吐いても簡単に……え!? 私は度肝を抜かれた。


「姑息だと言ったろう! その場凌ぎでしかない! 大空の支配者を自分だけとは思うなよ!」


 少年の肩の部分のオーラが伸びて、一対の翼を作り出していた。

 そしてそのまま空へ。

 もう訳が分からなすぎる。空を飛べて炎を吐ける狼人間ってなんだろう。

 正直気になるところだけど、今気にするべきことは勝つことだけだ。


「……来るなら来い!」


 迎え撃つ覚悟をしたところで、空から降り注ぐ白い光が少年の身体を貫いた。


「がっ……!? 何奴!?」


「面白そうなことしてんじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」


「ヘイローさん!?」


 光の先には2枚の黄金の翼を広げたヘイローさんがいた。

 こんなに早く遭遇するなんて……!?

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