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第11話 イベントに向けて

 レツトさんはチームに加わることを快く承諾し、改めて自己紹介をしていく。


「俺はレツトと言います。皆さんお世話になります」


「私はツバサです! 一緒に頑張りましょう」


「ボクはメイ。力を合わせて共に戦おう」


「みんな知ってるから俺の自己紹介は必要ないな。……それじゃあ4人フルメンバーが揃ったところで、イベントに向けての計画を立てて行こうか」


 ユウキさんは仕切り直してから続ける。


「イベントの簡単な作戦についてはさっき話した通りだから省略させてもらう。それじゃあ何の計画を立てるのかと言えば、俺たちの強化計画だ」


 勝つためには私達自身も更に力を身につける必要があることは間違いない。事実、現状の私ではヘイローさんに手も足も出ない。

 ただ、一言に計画と言ってもその中身までは考えているのだろうか。少し聞いてみる。


「強化計画と言っても何をすればいいの?」


 簡単だよとユウキさんは答えた。


「みんなの戦闘スタイルを確立すればいい。俺たちには心強い道具製作者も味方についたから、道具を交えていくのもありだな」


「えへへ」


 心強いと頭を撫でられてはにかむレツトさん。本当に性別バグでは?

 微笑ましいやり取りが行われている中だけど、今の話を聞いてどうしても気になる点がある。


「チームなのに連携はいいの?」


「それはボクも疑問に思ったところだ」


 私にメイさんも続いた。話を聞いてる限りではチームでの活動については一切触れられていない。確かに、個々の能力の強化は重要だ。特に私はヘイローさんとの戦いですごく実感している。


 しかし、それでは折角のチームイベの利点を殺してしまっていると思う。そんな指摘をもらったはずのユウキさんの表情は変わらない。何か考えがある様子だ。


「チームでの連携とかは確かに重要だとは思う。ただ、それ以上に個々の能力が重要ってことだよ。スポーツでもそうだろ? それぞれの強さがあってこそ連携も光るってもんだ」


「「…………」」


「急に黙り込んでどうしたんだよ!?」


 思いの外考えていて素直に驚いた。確かにそれぞれの強さがあってこそだ。メイさんでもチームでの活動を第一に考えていた中で、全体を見据えていたことに感心する。

 今日のユウキさんどうしたんだろう?


「大丈夫? 熱とかない?」


「風邪薬は……レツト、持っているか?」


「え? えええ!? 急にお願いされても困りますよ!」


「お前らに俺がどう思われているか段々分かってきたよ!」


 ようやくか。


「まあいい! とりあえずまずは行動だ行動! まずはツバサ!」


「は、はい!?」


 もうユウキさんは気にしないで行くらしい。急に私を呼んできた。思わず返事をしてしまう。


「確か光線銃を持っていたな。それをレツトに見せてみな」


「ど、どうぞ……」


 急に指示されると反射的に従っちゃうこと、あると思います。

 私は言われるがままに光線銃をレツトさんに渡すと、レツトさんはそれを観察し始めた。


「珍しい武器を持っていますね。これをわざわざ買うということは、遠距離攻撃のない超能力でそれを取得するために使ったというところでしょうか。そしてそれを今でもすぐ使えるように持っていたとなると……TPの節約とかですかね?」


 そしてそれだけで私の光線銃の用途をあっという間に見抜いた。


「これはこれは……」


「フフン」


 これにはメイさんも素直に驚きを見せており、ユウキさんは何故か得意気である。レツトさんの実力が確かなことだけは間違いないことは私でも分かった。

 その間にもレツトさんはブツブツと分析を続け、何か閃いた様子で私の方に向き直した。


「この銃の強化方針いくつか思いつきました! ツバサさんが目指してる超能力の姿を教えてください!」


「私が目指してる超能力の姿……」


 あの時から決めている。


「私が目指すのは――」



 私は強化してもらった光線銃を手に、街の外に向かっていた。早速新しい銃の力を試したいところだ。

 個々の戦力を強化するのが目的のため私一人だが、不思議と心配はなかった。それだけの力強さを銃からは感じられた。


 メイさん達は今頃道具を作ってもらったりしている頃だろうか。

 そんなことを考えながら歩いていると、街の中にも関わらず能力が炸裂する音が響いてきた。それも長く続いている。


 以前のヘイローさんとコタロウさんのように街中での能力のぶつけ合いとかもないわけではない。しかしながら、今回については違和感がすごい。

 硬いものに連続で能力をぶつけているような音だ。少し気になった私は翼を展開して、音の方向に真っ直ぐ羽ばたいて行った。


 私が向かった先には建物に向けて石を連続で放つプレイヤーと巨大な斧を地面に向けて叩きつけているプレイヤーの2人組の男がいた。薄汚れたジャケットにズボンと、如何にもな風貌をしている。


 その2人の攻撃によって、少しずつ壊れていく街の風景が私の目に入る。

 その光景に思わず呟いていた。


「なに、これ……?」


 そんな私の呟きに対してか、或いは騒音に集まった野次馬全員に向けてかは分からないが、斧を叩きつけていた男が腕を止めて大きな声で笑い始めた。


「フハハハハ! テスターからの情報を聞いていたなら知っているとは思うが、場所によっては街を壊すのも自由! だったらこういうプレイスタイルもありだろう! 文句があるならかかってきな!」


 その言葉を聞いた私はすぐにそいつに向かって飛んでいた。

 ここは戦闘可能エリア、実力で分らせてやる。


「私達の街を壊すなー!!」


 私は都市を自由に飛び回りたくてこの世界にやってきた。その願いを叶える前に街の風景が失われていく姿が我慢できなかった。


「誰が来ると思えば翼使いかよ! いいぜ? 来な!」


 翼使いと見るや否や、その表情からは明らかな侮りを感じられた。ますます許せない。

 このまま全速力で飛んで翼で引き裂いてやろうとも思ったが、彼もちゃんと超能力を強化した上でここに来ているようで、大きな斧を軽々と振るった。


 想像を遥かに超える速さで大回りで躱すしかない。

 躱して着地したところで、私は翼を解除した。そのことによって塵が光を反射してキラキラと舞った。

 人によっては美しさに見惚れると思うその姿も、男には関係ないようで下品にも笑い始めた。


「ハッハッハ! もうTP切れかよ! これだけでTP切れとはな! おっと、そんな貧弱武器で俺に立てつこうってかー?」


 案の定と言った感じだ。自分の知る情報だけを見て翼を弱いものとしか見ていない。今私が向けている光線銃も、彼からすればすぐTP切れする翼使いの可哀想なTP切れ対策にしか見えていないだろう。


 私は銃に一言謝ってから、その油断と隙を遠慮なく突く。


「ごめんね。初戦闘なのに相手が人で」


 私が引き金を引くと。彗星のように白い尾を引く水色の羽が放たれ、斧の男の身体を貫いた。


「んな!? なんだこれは!?」


 たった一発。それにも関わらずこれだけの驚きとなると、思いの外ダメージが大きかったのだろう。

 レツトさん最高の仕事しています。ゆっくりと彼に感謝を捧げたいところだが、まずはこの戦いを終わらせるとする。


 続けて引き金を2回連続で引いた。


「当たるかよ!」


 放たれた2枚の羽を横に跳ぶことで男は躱すが、この勝負は私の勝ちだ。

 飛んでくる羽に意識を向けすぎたことで、翼で急加速した私への対応が追いつかない。


「ちくしょう!!」


 『翼撃』で引き裂いたところで、斧の男は光の粒子となって消滅した。

 これで1人はオッケーだ。

 もう1人の方に向き直すと、彼は拍手をしていた。


「やるじゃないか。だけど俺はそいつのようにはいかないよ」


 その余裕も今のうちだ。

 こちらこそ今の戦いは全力から程遠い。

 進化した力を見せつけてやる!

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