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ぼエ恋  作者: えび
3/4

惑星ドラス


ーーーーーーー宇宙船の中


マキは台帳を見ているが、落ちつかず、時々、ジックの方をチラチラと見ていた。


ジックはたった今、9(ナイン)の調教をしている。

ジックはぼくもマキも知らない薬剤をエイリアンに次々と刺して、自分好みの性格のエイリアンにする。


ジックは調教士のなかでも、極めて異端だ。

本来、長い月日をかけて調教するがジックの場合、2時間もあれば十分、という。


ジックが調教したエイリアンは、極めて寿命が短いという噂を聞いたことがあるが、マキもぼくも文句は一切いわない。




マキ「次の星の1位は台帳にあるぞ。依頼主はスタント製薬会社だ。」


1位とは食物連鎖頂点の生き物を指す。


ジック「スタントという製薬会社は聞いたことないな。獲物は強いのか?」

針を刺しながらマキの方をみた。


マキ「まぁ決闘用のエイリアンではないし、ミウラがいれば問題ないだろう。新しい9や最高クラスの3(スリー)もいるからな。スタント製薬は新興企業らしいぞ。まぁ、こちらとすれば、金をくれれば、どんな企業だろうが気にしないわ」


ぼくは、マキのぼくへの根拠のない期待と金に対する執着が嫌いだ。

思わず眉間に皺がよる。


ジック「もうすぐ惑星ドラスに着くぞ」


オンボロの宇宙船が大気圏に入り、強烈な振動がぼくらをおそう。


9「ゲボガボォゲー」


9が宇宙船の床によだれなのか汚物なのかわからないものを吐いた。


9「.......すみません」

弱々しく謝っている。今にも倒れそうだ。


ぼく「マキ、新品の船を買ってくれ」


3「9のくそが」


5(ファイブ)「新人よぉ!ふざけるな!!誰が掃除すると思ってるんだ!」

8(エイト)「くさい……」


マキは振動音で聞こえてないのかもしれないが、ぼくらのやりとりを無視しているように見える。




————————惑星ドラス


ジック「1位はどこにいるんだ?」


9「すぐそこに生き物がいますね。(くらい)は不明ですが」


3「ミウラさんよ、捕獲は新人エイリアン9にやらせようぜ。初めての戦闘系の後輩だしよお」


マキ「だまってろ3。最初から、そのつもりだ。おまえは、捕獲対象を殺しすぎるからな。」

マキが答えた。


3は、新規エイリアンを捕獲するときにぼくと同行する。いわばエースだ。3は凶暴で強い。3を捕獲する際、1と2のエイリアンは殺されている。



5と8のエイリアンは基本的に捕獲者のぼくと同行しない。戦闘タイプではなく、捕獲する仕事は向いていないからだ。

なぜか、5はジックと、8はマキと一緒にいることが多い。

5と8は、主に宇宙船の運転や修理を任せている。


5の見た目は人間の男に限りなく近いが、よく見ると腕とか足に1つ関節が多い。


8の見た目も関節も人間の女に近く、非常に魅力的なエイリアンである。ただし、舌が異常に長い。3m近くのばしているところを偶然見たことがある。何をしていたかは不明だ。


5と8は到着するなり、9の汚物を掃除していた。文句は言うが仕事熱心なエイリアンだ。


マキは自慢げだが、ぼくは、仕事熱心なエイリアンに調教したジックの凄さを知っている。


ジック「おい。いたぞ。台帳に載ってるやつではないがな。」


近くにいたエイリアンはゴリラの容姿に限りなく近い。四足歩行で体調は5メートルくらいあるが。

おそらく食物連鎖上位のエイリアンである。


ぼく「9捕獲できるか?先手必勝だぞ。」


ぼくは9に任せることにした。いつもは、3に指示をだし、()()()コントロールし、エイリアンを捕獲する。二度とジックの人差し指を半分しない。



ぼくは、ある程度、最初の戦闘でエイリアンの力をみさだめる。




9「ホォォウ!!ホウ!!ホウ!!」



9は急に強烈な奇声を発した。

ぼくは、目を見開き、ブチ切れそうだ。マキは膝を地面につけ呆然としている。


3はぼくが気づいたときには、既に9に殴りかかっている。


ジックは耳を塞ぎながら笑いこけている。あたかも、奇声を知っていたかのようだ。


すると先ほどのゴリラのようなエイリアンは、もはや居ない。逃げられたのか。


ぼくは叫んだ。

「3殴るのをやめろ!9は早くゴリラを追え!」


ジックはまだ笑っている。

「その必要はないよ。ミウラ!」


ジックは続けていう。

「もはや、捕獲完了だ。そこにゴリラはいる!」


ゴリラのようなエイリアンは、青白い光に覆われて、痺れるように横たわっていた。



3は9に対して震えていた。今までに見たことがない光景だった。


そして、ジックは奇妙に笑い続けている。


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