惑星ドラス
ーーーーーーー宇宙船の中
マキは台帳を見ているが、落ちつかず、時々、ジックの方をチラチラと見ていた。
ジックはたった今、9の調教をしている。
ジックはぼくもマキも知らない薬剤をエイリアンに次々と刺して、自分好みの性格のエイリアンにする。
ジックは調教士のなかでも、極めて異端だ。
本来、長い月日をかけて調教するがジックの場合、2時間もあれば十分、という。
ジックが調教したエイリアンは、極めて寿命が短いという噂を聞いたことがあるが、マキもぼくも文句は一切いわない。
マキ「次の星の1位は台帳にあるぞ。依頼主はスタント製薬会社だ。」
1位とは食物連鎖頂点の生き物を指す。
ジック「スタントという製薬会社は聞いたことないな。獲物は強いのか?」
針を刺しながらマキの方をみた。
マキ「まぁ決闘用のエイリアンではないし、ミウラがいれば問題ないだろう。新しい9や最高クラスの3もいるからな。スタント製薬は新興企業らしいぞ。まぁ、こちらとすれば、金をくれれば、どんな企業だろうが気にしないわ」
ぼくは、マキのぼくへの根拠のない期待と金に対する執着が嫌いだ。
思わず眉間に皺がよる。
ジック「もうすぐ惑星ドラスに着くぞ」
オンボロの宇宙船が大気圏に入り、強烈な振動がぼくらをおそう。
9「ゲボガボォゲー」
9が宇宙船の床によだれなのか汚物なのかわからないものを吐いた。
9「.......すみません」
弱々しく謝っている。今にも倒れそうだ。
ぼく「マキ、新品の船を買ってくれ」
3「9のくそが」
5「新人よぉ!ふざけるな!!誰が掃除すると思ってるんだ!」
8「くさい……」
マキは振動音で聞こえてないのかもしれないが、ぼくらのやりとりを無視しているように見える。
————————惑星ドラス
ジック「1位はどこにいるんだ?」
9「すぐそこに生き物がいますね。位は不明ですが」
3「ミウラさんよ、捕獲は新人エイリアン9にやらせようぜ。初めての戦闘系の後輩だしよお」
マキ「だまってろ3。最初から、そのつもりだ。おまえは、捕獲対象を殺しすぎるからな。」
マキが答えた。
3は、新規エイリアンを捕獲するときにぼくと同行する。いわばエースだ。3は凶暴で強い。3を捕獲する際、1と2のエイリアンは殺されている。
5と8のエイリアンは基本的に捕獲者のぼくと同行しない。戦闘タイプではなく、捕獲する仕事は向いていないからだ。
なぜか、5はジックと、8はマキと一緒にいることが多い。
5と8は、主に宇宙船の運転や修理を任せている。
5の見た目は人間の男に限りなく近いが、よく見ると腕とか足に1つ関節が多い。
8の見た目も関節も人間の女に近く、非常に魅力的なエイリアンである。ただし、舌が異常に長い。3m近くのばしているところを偶然見たことがある。何をしていたかは不明だ。
5と8は到着するなり、9の汚物を掃除していた。文句は言うが仕事熱心なエイリアンだ。
マキは自慢げだが、ぼくは、仕事熱心なエイリアンに調教したジックの凄さを知っている。
ジック「おい。いたぞ。台帳に載ってるやつではないがな。」
近くにいたエイリアンはゴリラの容姿に限りなく近い。四足歩行で体調は5メートルくらいあるが。
おそらく食物連鎖上位のエイリアンである。
ぼく「9捕獲できるか?先手必勝だぞ。」
ぼくは9に任せることにした。いつもは、3に指示をだし、適切にコントロールし、エイリアンを捕獲する。二度とジックの人差し指を半分しない。
ぼくは、ある程度、最初の戦闘でエイリアンの力をみさだめる。
9「ホォォウ!!ホウ!!ホウ!!」
9は急に強烈な奇声を発した。
ぼくは、目を見開き、ブチ切れそうだ。マキは膝を地面につけ呆然としている。
3はぼくが気づいたときには、既に9に殴りかかっている。
ジックは耳を塞ぎながら笑いこけている。あたかも、奇声を知っていたかのようだ。
すると先ほどのゴリラのようなエイリアンは、もはや居ない。逃げられたのか。
ぼくは叫んだ。
「3殴るのをやめろ!9は早くゴリラを追え!」
ジックはまだ笑っている。
「その必要はないよ。ミウラ!」
ジックは続けていう。
「もはや、捕獲完了だ。そこにゴリラはいる!」
ゴリラのようなエイリアンは、青白い光に覆われて、痺れるように横たわっていた。
3は9に対して震えていた。今までに見たことがない光景だった。
そして、ジックは奇妙に笑い続けている。