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建国神話オオナムチ 181人の子を産ませた王の物語  作者: 荒神神楽
第二章 イナバの国のヤガミ姫
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出会いと別れ

「オオナムチくん、お茶を入れましょうか?」


 ルウは潤んだ瞳で頬を赤らめながら、オオナムチに声をかけた。


「い、いや、今はいいかな。それと、ちょっと距離が近いんじゃないかな?…」


 女性が苦手なオオナムチは、積極的なミナに気圧されていて逃げ腰なのだが、ルウがぴったりと隣に寄り添っているのだ。


「俺ほしい!」


 ムルが横から声をかけるが、ルウは汚物を見るような目でムルをにらんで、すぐにオオナムチのほうに向き直り、にこにことしている。

 ドMのナオヤは、いつか自分もああいう厳しい目で見てもらいたいなと、よくわからない方向の目標を立てていた。


 オオナムチたちは、ミナの船でカロの港に向かっている。

 なぜ、そこにルウが載っているのか。それにはふたつの理由がある。


 オキ王ゴジムの依頼で船団泥棒のルウを討ち取るはずだった。

 しかし、他ならぬ海人族船団長から、ルウを許してあげてほしいという声が出た。


 そして、ルウに聞いてみると、船団を盗んだ理由が『イナバ国に行きたかっただけ』という素朴な理由だったことだ。


 海人族船団長の提案で、見逃すために『ルウが討ち取られて死んだとオキ王ゴジムに報告する』という具体的な案が出たことも大きい。

 オオナムチとナオヤは、情に流されて見逃し論に賛成したし、ムルはワイロで買収された。ミナは無関心だったので、今回は見逃すことになったのだ。

 ルウはすさまじい強運の持ち主でもあった。


 そして、ルウをミナの船に載せて、まずはカロの港まで連れて行くことになったのだ。


 オオナムチは隣でひたすら見つめてくるルウの視線に耐えられなくなった。とりあえず、無難な話題での会話に逃げることにした。


「ところでルウさんは、なんでイナバ国に行きたいの?」


「ルウでいいよ。さん付けとかいらないから」


「あ、ごめん。ルウ」


「キャ。呼び捨てにされちゃった」


 ルウは照れてうつむいてモジモジしている。

 半分は演技だが、半分は本気だ。

 ルウは生まれてはじめての恋をしているのだ。


「ルウでいいんか!」


「あんたは絶対にダメだからね!話しかけないでクズ!」


 ムルは横から話しかけたが、一瞬で全否定されていた。

 ナオヤは、僕もあんなふうになじられたいと、おかしなことを考えている。


「イナバ国の王は、ルウと同じ氏族って聞いてるの。だから会ってみたくて」


 ルウの話によると、ルウは2000年前に大陸で栄えた王朝おうちょう末裔まつえいだというのだ。そして、イナバ国の王は、海を渡った同族の子孫だと聞いているとのことだった。


 ルウの家には、王朝の血統を示す宝剣が伝わっていたが、何代か前の先祖が手放してしまった。

 大陸でさんざん探し回ったのだが、どうしても見つからなかった。

 オキ島に渡ったのは、海人族の流通網でその宝剣が見つかるんじゃないかという淡い期待もあったらしい。


「わたしは必ず見つかるって信じてるの」


 そう言って振り向くとオオナムチがいない。

 ミナが一生懸命に話している間に、オオナムチは逃げていたのだ。



「きっと見つかるよ!てか、俺が見つけてやるって!」


「話しかけんなって言ってるのゴミ!」


 すかさず代わりに答えたムルは、またもや存在を全否定されたのだが、まったく懲りていなかった。

 むしろ、ルウが王族だということで金の気配を感じ取り、さらにルウへのアタックを強くしようと心に誓っていた。

 ムルはイナバ国のヤガミ姫に求婚に行く道中なのだが、平気で他の女を狙うというおそろしい男なのだ。ムルにモラルは無い。


 航海は順調で、なにごともなくカロの港に着いた。活気のある港だ。

 大勢の海人族たちが、積荷の交易品を降ろしたり積んだりしている。


「にぎやかだなあ」


 オオナムチは、ヨドの港より規模の大きいカロの港にワクワクしていた。


 ここで積荷が分けられ、川を伝って上流の町や村に運ばれる。

 ここからはミナの船を降りて、川舟に乗り換え、イナバ国王の城があるヤガミの町に向かうことになる。


「師匠!またな!」


 ミナは北の国の母親に会いに行くとのことで、ここで別れることになった。

 いつキレるかわからない鬼神のプレッシャーがなくなることに安堵したが、同時に少し寂しい気持ちにもなった。

 ナオヤは別れに号泣していた。


「タケミナカタ様の客だと聞いております」


 川舟の海人族は、ものすごく丁重に扱ってくれた。

 家臣団の爺が、ヤガミの町へ直行する川舟を手配してくれたのだ。

 しかも、オオナムチ、ムル、ナオヤ、ルウの4人なのに20人乗りの川舟を貸切にしてもらった。

 爺は海人族では、かなり地位が高いようで、手配はとてもスムーズだった。


 船着き場をいくつも通り過ぎる。

 ヤガミの町への直行便だからだ。

 川をさかのぼるにつれて、見える村の規模が大きくなっていく。


 そして、ヤガミの町の船着き場に着いた。

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