神剣の制作者
「あら、ミナちゃんじゃない。おひさしぶりね」
カワイキュンと名乗るオネエに引っ張り込まれたナオヤを追って武器屋に入ると、そこではじめてミナに気づいたようだ。
カワイキュンはミナをおそれない数少ないオネエである。
そして、荒くれ者の海人族に、怪人としておそれられているオネエなのだ。
ナオヤはすでに服を脱がされていた。
扉から入って5秒もたってないはずだが、全裸寸前の勢いである。
「よい子は見ちゃダメだ!」
オオナムチは慌てて、ミナが見るのを止めた。
「ち、違うわよ!採寸よ!採寸!ほら、あれよ。鎧のサイズを測ってるのよ!」
カワイキュンは焦って弁解しているが、あきらかに有罪である。
「え?ここって武器屋でしょ?」
「これから鎧も扱うのよ!業務拡張よ!あら、ミナちゃん、剣が傷んでるわよ。見せてごらんなさい!」
カワイキュンは強引に話題を変えて、ミナの宝剣雷斬を受け取った。
「どんな化物と打ち合ったのよ。芯には問題がないけど、調整してあげるわ」
そう言うと、カワイキュンは奥の部屋に入っていった。
そこは工房になっていた。
宝剣雷斬を炉に入れる。
剣が赤熱化すると、取り出して台座の上に置いた。
「フンハー!」
ハンマーを持つカワイキュンの腕が二倍に膨れ上がった。
血管の浮き上がったえげつないほどの筋肉が収縮した。それが一気に解放される。ハンマーが振り下ろされて台座の上の宝剣雷斬に打ち付けられると、豪快に火花が散っている。
5回ほど打ちつけてから、宝剣雷斬を近くの水桶に浸けて冷やした。
水蒸気と鉄が焼ける匂いが部屋に充満した。
「よしっと。いい仕上がりだわ」
カワイキュンは満足そうに宝剣雷斬を確かめると、ミナに渡した。
「ありがとう」
ミナは宝剣雷斬を受け取って二度ほど振って確かめていた。
(ものすごい技術だ)
それを見たオオナムチは感心していた。
ミナの斬撃の精度が増していた。
剣を調整してもらったからだろう。
このカワイキュンとやら、ただのオネエではない。
「俺のも見てもらえますか?」
「ウホッいい男!いいわよサービスしちゃうわ!」
「いや、見るのはそこじゃないです」
オオナムチは、服を脱がそうとしてくるカワイキュンの腕を止めた。ものすごい万力のような力だ。頬が赤く染まっているのがやけにウザい。
「そこは違いますから」
何度かそんなやり取りをして、やっとあきらめてくれたようだ。
オオナムチは、万宝袋から十握の剣を出して、カワイキュンに渡した。
「えっ!?これはどうしたのかしら?」
カワイキュンは剣を受け取ると、目を見開いて驚いて聞いた。
「ジジイにもらった剣です」
「これ、わたしが若い頃に作った剣よ。今見ると恥ずかしいけれどね」
「そうなんですか?」
ジジイが天津神アメノコヤネにもらったという剣だが、カワイキュンが制作者だという。
タダ者ではないオーラを出しているが、本当にタダ者ではないようだ。
神剣を打てるなんて、カワイキュンは神だということか?
オオナムチも混乱していた。
「でも、これはもうダメね。芯がやられてるわ。わたしが打った剣をこんなにするなんて…あんたたちどんな化物と戦ったのよ?」
「サルダヒコ元帥?…だそうです」
オオナムチが答えると、カワイキュンはさらに驚いていた。
「あんたたち、アレと戦ってよく生きてるわね。運がいいわ。わかった。その強運に免じて、代わりの剣をあげるわ。調整に少し時間がいるから、王城にでも行って王様と遊んでらっしゃい。ミナちゃん、案内してあげて!」
「行く!」
カワイキュンのすすめに、ミナは元気よく返事をした。
ミナの後をついて扉から出ると、後ろからカワイキュンが声をかけてきた。
「待って。この子の手伝いが必要なの。あなたは残りなさい」
そう言って、ナオヤの手を大きなグローブのような手で熱く握った。
もう一方の手をさらに重ねて、熱い目でナオヤを見つめている。
カワイキュンは、涙目で震えるナオヤの手をがっちりと握って、奥の部屋へと連れて行ったのだった。
「師匠!行くぞ」
「おう」
(ナオヤって剣を打つ手伝いができるのか。すごいな)
オオナムチの中でのナオヤの評価がまた上がった。
ちなみにムルは武器を盗むために残ろうとしたが、カワイキュンに追い出されていた。
こうして、ミナを先頭に、オオナムチとムルは王城に向かった。




