1話 サイコパス
「おい!持ってるんだろ!金!さっさと出せ!」
ガラの悪い3人組は裏路地で、おどおどしている制服姿の少年に向かって怒鳴っていた。
「だ、誰か助けて!!」
少年は全力で叫んだ。
「へっ!誰も助けにはこねぇよ!」
ガタイのいい男は鼻で笑った。
「そうだぜ!この辺の住人はわな!俺たちの報復を恐れて、誰も通報もしねえよ!」
声の高い男はへらへら笑った。
「だから諦めろ!早く出せ!」
リーゼントの男は胸ぐらをつかんだ。
「今時、リーゼントなんて、ツチノコ見た気分だね。」
「ああ!?」
3人は声のする方を見ると、
右手首に100%と電子で表示された腕時計をし、透き通るような銀色の短髪に、黒い瞳をし、背が低い、アイドルの様に可愛いらしい制服姿の少女が笑顔で立っていた。
(な、何考えているんの!?あの子!?)
少年は思った。
「その制服は、東高校の・・・」
ガタイのいい男は星羅を舐めるように見た。
「へえ!こんな可愛い子がいたんだ!」
声の高い男はへらへらしながら星羅に近づいた。
「4人か・・・」
少女は唇に手を当てながら呟いた。
「なあ!今から俺と一緒にいいことを・・・」
声の高い男は途中で言葉を失った。
「どうしたんだ?」
ガタイのいい男は近づいてきた。
「ああ・・・」
声の高い男はうめき声を上げながら後ろに倒れた。
「!?」
倒れた男の胸に、ガラスの様に透明な短剣が突き刺さっていた。
「なっ!?て、めぇ!!」
2人の男は戸惑いながら、腰のベルトからピストルを取り出して構えた。
「鈴鹿!無音!!」
少女は突然叫んだ。
少女の背後から、ピストルを構えた、ピストル型の髪留めをし金髪の短髪で青い瞳をした美少女と黒髪の短髪で茶色い瞳をした可愛らしい少女が現れた。
「撃ち殺せ!!」
2人の男は少女に向けてトリガーを引いた。
乾いた音と共に銃弾が発進された。しかし、
2発の銃弾は白髪少女の前で弾かれた。
腕時計の様なものは、95%と表示が変わった。
同時時刻、2人の少女はトリガーを引いた。
黒髪の少女が放った銃弾は、リーゼント男の額に着弾した。
「おう!?」
ピストルの型の髪留めをした少女の放った銃弾は、ガタイのいい男の胸に着弾した。
リーゼント男は力なく倒れた。
「く、くそ!降伏する!」
男はピストルを捨てて両手を上げた。
「もう外した!!無音ちゃんの、その・・・人の死が見える能力って、反則過ぎない?」
鈴鹿は無音を細い目で見た。
『お前が下手くそなだけだろ。』
無音はボードに書いた。
「おお!やっぱり銃声が聞こえなかったようだね!私の発明、無声銃は大成功だね!」
水色の長髪に紫色の瞳をした可愛いらしい少女は、鈴鹿と無音が所持しているピストルを見ながら言った。
「静ちゃん見てたんだ!」
鈴鹿は口を開けて驚いた。
「ちゃんと見てたよ!」
静は頷いた。
「冷静な判断だね。」
白髪の少女は笑顔で男に近づいた。
「ま、まさか、銃弾を弾くことが出来る中級魔術師クラスとは・・・」
男は震え声で言った。
「・・・」
「くそ!さっさと、警察にでも連れて行けよ!」
男は怒鳴った。
「警察?何言っているの?」
少女は首を傾げた。
「!?」
鈴鹿はピストルを男の額に当てた。
「じゃあね、永遠に。」
少女は笑顔で、そう言い終わると、無表情の鈴鹿はトリガーを引いた。
頭部が欠けて、脳みそが露出した男は倒れた。
「ふう、終わった。」
少女は前髪を手でさっと整えた。
「ああ・・・」
少年は腰を抜かして、倒れていた。
「大丈夫だよ。こいつらは始末したからね。」
少女は微笑んで少年に近づいた。
(そ、そうだよね!こいつらは死んで当然なやつらだったし、正当防衛で警察の心配もいらないし!それに、もう終わったんだから大丈夫!お礼をしなくっちゃ!)
少年は立ち上がった。
「次は君の番だからね。」
「え・・・?」
少年は戸惑いながら少女の微笑んでいる顔を見た。
「!!?」
突然、少年は、可愛らしい少女の笑顔は酷く不気味に感じ鳥肌が止まらなかった。
「た、助けに来たんじゃ・・・」
少年は震え声で言った。
「はあ?助けに来た?」
少女はゴミを見るような冷たい目で少年を見た。
「こいつ、300円しか持ってない!チッ!まじゴミ!」
鈴鹿は財布を投げ捨て、リーゼント男の死体を蹴った。
「こいつらの臓器売れたら、いいんだけどな・・・」
静は人差し指を唇に当てながら言った。
「この通り、最初からお金目当てだし、それに・・・」
少年はつばを飲み込んだ。
「目撃者は生かしておくわけにはいかないからね。」
少女は少年の肩に手を置いた。
「ハア・・・ハア・・・!」
少年は息苦しくなってきた。
「どのように死にたい?」
少女は不気味に微笑みながら言った。
「お、お願いします・・・財布を上げるから、助けて下さい・・・」
少年は半泣きで、財布を少女に渡した。
「いくら入っているかな?」
少女は財布の中身を空けた。
(今だ!)
少年は腰の銃ホルダーからピストル(M92)を取り出し、安全装置からフルバースト状態に切り替えた。
「死ねえええ!!」
トリガーを引いた。
17発の全弾が一瞬で発射された。
(中級魔術師クラスとはいえ、至近距離でこの被弾だったら、流石に銃弾は弾けないはず!)
「!?」
少年は首を掴まれた。
「なかなかやるね!油断したよ!」
少女は微笑みながら右手の力を少し入れた。
「うう!!?」
少年は苦しそうに少女の手を引き離そうとしたが、びくともしなかった。
「ごめんね、実は中級魔術師より格上なんだ。」
(何でこんなに強い奴がこんな所に!?)
少年は視界がぼやけ始めた。
突然、男の胸に突き刺さっていた短剣が勝手に抜けて、少女の左手に渡った。
「さようなら。」
笑顔で左手を頭部にめがけて、振り下ろした。
「さてと、」
少女は頭部に突き刺さって動かなくなった少年の死体を投げ捨てた。
その途中、頭部に突き刺さっていた短剣は、散りになって消えていった。
星羅は少年の財布を拾った。
「星羅ちゃん、いくらあった?」
静は近づいて来た。
「5万!ガキの割にはよくもっているね。」
「おお!4人で合計、8万3千4百24円だね。」
「それより、誰かが来る前に、処理しないと!」
鈴鹿は周りを見て、おどおどしながら言った。
「そうだね、ミニミニマム!」
星羅は叫ぶと、右手から白い光が発生し、4人の死体を包んだ。
血痕と死体は服ごと小さくなり、親指のサイズになった。
「後は任せた。」
星羅は静の方を向いた。
「うん!」
静はバッグから、白いボトルを取り出した。
蓋を開けて、死体をつまんで中に入れた。
「中身なんだっけ?」
鈴鹿は聞いた。
「水酸化ナトリウム!完全に溶かすことは出来ないけど、これでほとんど溶けるから。」
静はふたをして振った。
「所で魔力は誰ぐらい減った?」
静は聞いた。
「えーと・・・残り85%だね。」
星羅は腕時計の様なものを見ながら言った。
「前は70%だったから、減りが少ないね・・・」
鈴鹿は星羅の腕時計の様なものを覗いた。
「まあ、人を殺せば、殺すほど、私は強くなっていくからね。」
星羅は髪をかきあげた。
「終わったよ!」
静はボトルをバッグに入れた
「さてと、今日も稼いだことだし、帰るか!」
星羅達はその場を去った。