零章二話 『予想外の結果』
いやぁ!寒いですね!私の家には暖房器具が無いので死にそうなのです!ガクブル
では二話目をどうぞ!
ー六芒結界ー
しかし結界はほとんど意味を成さず切り裂かれ刃が迫る。それをギリギリのところで本能で身体を反らしてかわす。あ、あぶねぇ…今の受けたら絶対死ぬな…
「手厚い歓迎だな」
そいつはボロボロのフード付きマントを羽織っていてその中身は上半身の骨のみだった、見た目たそのまま死神と例えるのが1番近い。それに両刃の鎌に青い炎が浮かんでいるだけの目。
「流石に王道すぎないか?」
と言いつつもさっき六芒結界が切り裂かれたのは本当に予想外だった。それにこいつは物音を一切立てずに構え、切る。それは厄介過ぎる。どんなやつも今までは攻撃や何かしようとすると空気や大気中のマナが何かしらの変化があった、いやあるはずなんだ。身体を動かすにも武器を構えるにも何の変化もなしに出来ることじゃない。あの邪神さえそれは出来なかった、そう、そういうことだ。こいつはあの邪神すら相手にならないほど強敵だと。
「ヤットダ…ヤット本気デ殺レル奴ト会エタ…」
邪神はその一言を呟くと一瞬で間合いを詰めた、そして鎌を音も立てずに斬りかかる。
「ッッ!?」
ー八核結界・双ッッ!ー
ギャリィィィィィィ!!!
嫌な音が響いて鎌を弾く、少しだが隙が出来た。そしてそこを突く。
ーヘブンズフォールー
「オ前…!人間ジャ…!」
第9階級神魔法ヘブンズフォール、天使達が使う上級魔法だ。アンデットならほぼどんなやつでも即、天に召される。死神は人間である俺が神魔法を使うことに驚いているようだ。それはそうだ。俺は人間でも勇者として転移してきたこちらの法則には縛られない日本人だからな。他の三人の勇者はこっちで転生したある意味こっちの人間だが俺はあっちの人間だ。人間の日本人の可能性を舐めて貰っては困る。しかし死神はヘブンズフォールを受けてもボロマントが軽く燃えただけでそれ以外には外傷がない。
「死神ってアンデットじゃないのかよ…」
「神…ダカラ…?」
冷静に死神に突っ込まれた…この一本は痛い。というか本当に死神だったんだ…リッチとかデッドロードとかだったらよかったのに…。と思っていると鎌の刃が通り過ぎる。
「ちっ!あぶねぇ!」
「チィ…逃ゲルナ…!」
いや流石に殺されたくはないだろう?その会話の間にも鎌の刃は何度も通り過ぎる。こいつの一撃は間違い無く即死だろう。隙を突いてちょっと奥に飛ぶ。
ー光の精霊王、彼の者を塵すら滅せよ!ー
精霊魔法はどうだ?精霊魔法は特殊で相手に直接干渉し痕跡を残さない。しかし今の魔法は最上位である精霊王を使役し地形までもを変えてしまうほど強力なものだ。因みにこれを人に使うと国一つが滅ぶとか…爆発して舞った土煙から何事もなかったかの様に鎌の刃が飛んでくる。あ、駄目やつだこれ…避けきれずローブの裾が切り裂かれる。あぶねぇ!しかし止めと思い振った勢いで体勢を崩している。このチャンスにあれを使うしかない…魔力を練って魔力と錬度を高める。
ー炉心融解ー
俺の固有魔法である炉心融解だ。魔力を大量に使う為に使いどころに困る魔力だが、どんな相手も灼炎に包み溶かすほどの威力を持った強い魔法である。死神の頭上に灼熱の融炉の塊が現れ落ちて当たり灼炎に包まれる。しかし死神は何事もなかったかのに灼炎を切り裂き出てくる。これも駄目か…くそ…残すは一つ…しかしあれは魔力をもっと練らなければ…大幅な隙がいる…隙を作れれば……!、あるじゃないか!使えるか分からないが…いや!使える!俺になら!
ー絶対結界・七重っ!ー
絶対結界これは実際に使ったのは初めてだ。いままで使う機会がなかったのもあるが。これは神が使うとされた防御魔法でどの魔法にも属さない魔法だ。しかしその実態は固有魔法で最初に使ったであろう人物以外は俺を除いては使えないものだった。絶対結界の半透明の青白い盾が七つ身体の周りを回る、その間を縫って迫ろうとする鎌の刃を盾の一つが割り込み弾く、もう一回迫ってきて割り込み弾いて割れる。一つの盾は二回ほどしか耐えられないようだ。その間に魔力を練る。流石に死神も気付いたらしい練っている魔力の多さに。先ほど使ったヘブンズフォールなど比べ物にならないほど莫大な魔法がルークの身体から溢れている。溢れすぎている魔力がダンジョンの壁や地面、死神のマントを焼く。その間にも死神は鎌を止めず一枚、また一枚と盾を割っていく
「まだたりない…もっともっとだ」
魔法を練って増幅させる。循環させて練って増幅させて循環させて練って増幅させて…繰り返して繰り返して…
パリンッッ!
絶対結界の最後の盾が割れるそして追撃の鎌の刃が迫る
--終焉絶技・神卸し--
恐る恐る目を開けるとそこには鎌の刃が1ミリほど間を開けて宙に浮かんだまま止まっていた。
「はぁ…怖かった…」
そう言って仰向けに倒れるとカランと音を立てて鎌も床に落ちたようだ。
終焉絶技・神卸し、神話上の魔法であり神を葬る時に使ったとされた空想上の魔法だ。いや空想ではないな、使ったと印されている。そう使ったのだ誰かが、一度でも使っている魔法は存在する。だからこそ使うことが出来たのだ。まぁ魔力を使い過ぎて立っていられず仰向け状態なのだが…その結果死神は……
「ん……?」
右手のこの柔らかい感触は…?二度、三度と揉む…揉む?いやいやまずは状況の確認を…
「ひゃんっ…」
あははっ?おっかしいなぁ?ここは次元を通り抜けた先にあるダンジョンだぞ?そんな可愛い声を出す魔物が居るとでも?いないぞ?いやしかし死神が居るくらいだからなぁ…ん?そういえば死神は?
「マスターはよっぽど溜まってるんだね?僕の身体に欲情するとか人間としてどうなんだい?」
誰だ?マスター?いやいや俺は奴隷とかそういうのは持ったことがないぞ?いやそういう制度があるのは知っているが。と思いつつも恐る恐る声の発生源である、自分の上に目を向ける。そこには白い猫耳のパーカーにニーソックスというなんともよく分からないセンスの女の子がいた、まぁそこが問題じゃない、いやそれも問題だか俺の右手が彼女の襟元から右胸を揉んでいる、そして彼女の見た目は12~13歳ほど…あはは…お巡りさん…これは事故なんだ事故なんだ…
「まったく…一体なにを考えているんだい?それより早く手を退けてくれないかな?そんなに触りたいのかい?まさかホントに幼女趣味…」
さっと手をどける…しかしこの子は…
「ん?僕が誰かって顔をしてるね?僕はさっきの死神の成れの果て?みたいなものだよ?君が神卸しなんていう非常識極まりない魔法を使ってくれたお陰で僕の神性が引き剥がされてしまったんだよ?だから今の僕はただの女の子だよ?どうする?止めを刺す?それともこの身体に君の情欲をぶつける?まぁもう僕の管理権は壌土されてしまったから君の好きにすればいいさ。マスター?ご主人様?」
まぁなんというか…一言で言えば分からん…とりあえずわかったことはこの子がさっきまで戦っていた死神さんで?そしてこの子の主になってしまったようだ?なぜハテナばっかりついているか疑問だろうが俺自信分かってないんだ、無理だろう?そして怒ってらっしゃる…と。彼女の表情からは怒りと…呆れかな?を感じる。
「なんか…その…すまない…」
「なんで?謝っているんだい?君は神に並ぶ者を下したんだよ?誇るべきだと思うよ?」
確かにそう思う奴もいるが…なんだか女の子をいじめていたと思うと…な?まぁこの子と俺の感性は違うらしい
。
「はぁ…よく分からんが君の名前は?」
「ないよ?あえて言うなら死神?」
まぁあの死神さんだからねぇ?
「その…なんだ…名前がないと不便だからな。そうだなイヴって言うのはどうだ?」
「うん、いいね?気に入ったよ!でも奴隷の私に名前なんているのかい?人種は奴隷を物の様に扱うと思ってたのだけれど?」
まぁ奴隷をそういう風に扱う人も居るにはいるが。俺はそうじゃない。
「まぁ、そういう扱いをする奴もいるが俺はそうじゃないからな」
「ふ~ん?比較的いい人に当たったって言うわけだね?死神にも運なんてあるのか知らないけど?なら呼び方はどうするの?」
「なんでもいいぞ?」
確かに呼び方はあった方がいい。戦う時も「お前」や「おい」などでは通じにくい。
「マスター?」
いやマスターっていう立場じゃないな
「いやそんな立場じゃない」
「ご主人様?」
まずまずこの子はメイドさんってキャラじゃないだろう?
「いや雰囲気的に違う」
「う~ん、難しいなぁ…ならお兄ちゃん?」
ぐっ…なんだろう凄く、ぐっと来た
「ち、違うな!?」
「なんか満更でもなさそうだね?」
「そんな訳ないだろう?ルークでいいさルークでな」
あぶねぇ…なんだ今のクリティカルヒットはこの子怖ぇ…この子のペースに乗ると怖ぇ。
「分かったよルークだね?私はイヴだね?いい名前だなぁ♪」
イヴは貰った名前がとても気に入った様だ、さっきまでの怒りを忘れるくらいには。
「んで、まずは色々説明してくれないか?まず此処はどこだ?」
たしかに今はそれが1番知りたいこどである。自分が何処に居るのかも分からないのに対策なんて出来ないからな。
「えっ?此処は巨大次元迷宮パンドラだよ?」
「は?」
気の抜けた返事が大部屋に空しく響いた。
ボクっ娘…いいですねぇ!