一章十二話 『王様』
最近雨が多いですね?雨が嫌いなパル猫です!
猫だからじゃありませんよ?名前に猫がついてても猫ではありませんよ?
「私がディルフェルト=クレイアジス=ファルネシウス。この国ファルネシウス王国の国王だ。」
そう自己紹介をした男は白髪でライオンのたてがみの様な髪型。身長は大体170くらいと言ったところか。リシーと並ぶと大分身長差があるのが分かる。
しかし王様だと!?くそっ…タイミングが悪すぎる。あの子がこの様になっていたのはこの人が許可をしていた可能性がある為だ。何かしらの罪を被せられたとしてもそれを罪だと判断する人がいるからこそ罪はあるのだから。
それに勇者に罪だと宣言出来るような人物など国王ぐらいなものだ。この国の最高権力者が黒と言えば白さえ黒になるのだ。それほどこの国は王に依存している。
「私は…ルーク=レイン…です。そしてこちらがイヴです。」
(イヴ、あの子の側に居てくれ。)
目で合図するとイヴは下がって隣のあの子が寝ている部屋へと歩いて言った。
「そんなに畏まらないでくれルーク殿。君の事は知っている。」
ど、どういう事だ?リシーが話したのか?しかしリシーには他言無用にしてくれと言ってある筈だが。とおもむろに王様は両手を床につけて土下座して
「この国の民が貴殿の気を損ねたのなら謝る!だからこの国を滅ぼすのだけは許してくれ!頼む!」
えっ?うん?な、なんのこと?ちょっと待って?話が掴めないんだけど?なんで急に土下座を見せられてるの?というか土下座が綺麗過ぎるんだけど!?えっ?てかこの人土下座してるのに一切隙が無いんだけど!?どゆこと!?なにこの人土下座状態からいつでも戦闘に移れますってか!?怖っ!この土下座怖っ!?
「ルーク様?お口が開きっぱなしですよ?」
「はっ!?ん、んん。ど、どういう事です?王様?」
「初めに何故君の事は知っているかだがユグドラシア大陸のエリシア殿から連絡があってな君に何かあったらエリシア殿率いるユグドラシア大陸の全勢力をもってこの国を滅ぼすと言われてな。」
ええ…まじか…エリシアさんマジぱねぇっす…!あのエルフのロリBBA…ん!んん!エルフの綺麗なお姉さんは今も現役という訳らしい。
「とりあえず立って貰って!こちらにお座り下さい!」
「失礼する」
とりあえず座って貰う。出入口で土下座されたままというのも問題だ!それも一国の王様だぞ!?見つかったらただじゃすまない。それに多分ここにこの人が来たのは土下座するためじゃない。
「ただ土下座した身で言うのもなんだが君が拉致した娘だけはこちらで預からして欲しい。君が例えユグドラシアの関係者であったとしてもだ。あの娘には罪を償わせなければならない。」
やはりか…。この場合はあたかも知っていた体で行こう。その方が有利に動ける。それにしてもこの人があの子に罪を下した本人か。だがしかしこちらにも事情と言うものがある…ほとんど私情だが!
「こちらにも事情があります。例えばあの子が罪を被せられてるとしたら?ほんとは無実としたら?貴方はその責任を取るのですか?」
「私は報告を受けそして状況やその他の証拠を見て判断したうえでその娘に罪を言い渡したのだ。それが間違っていると?例えユグドラシアの関係者だとしても王である私が決めたことに異を唱えると?」
確かにこの人は提出された証拠などから判断したうえで罪を言い渡したのだ。それでもイヴが神の目を使い見たことに違いはないだろう。だからと言ってもここで神の目の事を話すのは得策ではない。
「第一罪人と言えど勇者だぞ?何故、牢から出したのだ!」
「ど、どういう事ですか?私はこの子を保護したのですが?」
王様とは食い違いがあるようだ。とりあえず話を整理しつつ広場で見せしめにされていた事とこの子を治す前までの状態の事を話す。
「そ、それは本当なのか?し、しかしそんな状態だと死んでいるのではないか?普通なら死んでいるようなケガではないか?」
「もしやルーク様は精霊天使の慈愛をお使いになられたのですか?」
なにか不味かったのだろうか?確かあの魔法は今は使える人間がいないとかじゃなかったっけ?まぁ問題ないだろう?
「精霊天使の慈愛だと!?最高位魔法の!?こ、この人物は一体何者なのだ!?」
リシーはこちらをチラッと見る。俺の事を王様に話して良いかと目で訴え掛けてくる。イヴの事以外なら良いとジェスチャーで軽く返す。別に正体に隠しているわけではないからな?
「ファルネシウス王?この方は私の曾祖父であるダレン=クロノス=ヴェルランドと同じ時代の元勇者、ルーク=レイン様です。」
「四天勇者一行の一人『大賢者』ルーク!?ほ、本人なのか?おかしいだろう?一万年も前の勇者だぞ?生きている訳がないだろう!」
確かに信じられないだろうな。因みに広場でこの子を保護する前に本屋に立ち寄ったのだが。建国の時の大戦や俺たち一行の事が『伝説の四天勇者』というタイトルで本として売れており正直驚いたのだがそれ以上に恥ずかしすぎた。
「いえ私の曾祖父にも確認を取りましたので間違いはありません。」
「ダレン殿にか…それは間違いないな。それではその娘を助けたのは私情なのか?」
一応ダレンが生きてる?というのは王様は知っているようだ。なんだろうエルフの秘術とかとでも言っているんだろうか?なんかかっこいいな秘術!言ってみたい!おおっと話がそれてしまった!
「いえ元勇者ということで同情しましたがその程度では助けたりしません。私の魔法で確認しましたがあの子が罪を犯したという事実がなかったようなので保護しました。」
「それは過去を見るということか?」
「いえ違います。ただ罪を犯しているなら分かるといった魔法です」
過去を見る魔法も罪を確認する魔法も存在する。なので使ってみてくれと言われた時には使える。
ただし今回の場合あの子の精神は壊れてしまっていた為、罪を確認する魔法はあまり効果はないだろう。あの魔法は潜在意識に問いかけるといった魔法なのだ。
「そんな魔法が…裁判の時に使うなら便利だろうな。冤罪も起きないだろうな。今回の様に。」
「分かりました。簡易的に魔道具化させて後日お渡ししましょう。今回の様なことが起きない為にも。」
あの魔法程度なら広めても問題ないだろう。魔道具化してしまえば冤罪は減るな。そのあとも色々話し合いとりあえずある程度は納得して貰えた。
「ではその子は私が預りましょうか?」
「そうしたいのは山々なのだが回りが納得しないだろうな。そこでなのだがルーク殿。今回の真犯人を捕まえて貰えないだろうか?」
「ええ、元からそのつもりでしたので。しかし良いのですか?リシーさんを巻き込んでしまって。」
そうだ今回の事にはリシーは関係がない。俺個人の責任だ。
「それは未来の旦那様の為ですもの?頑張りますわ」
「平然とよく言えますね…確かにここで介抱するよりはリシーさんの所の方が早い対応が出来そうですね。」
「あのリシー殿が…」
王様は驚いている。普段のリシーでは見られないような雰囲気なのだろう。確かにクールっぽいもんなー?クールな妖精って感じなのかな?
「あ、そうだ」
思い立ったかの様におもむろに何もない空中に手を伸ばすそうすると手首から先が白い渦に飲まれて透明な試験管に似たようなビンが3本程出てくる。
「「そ、それは?!」」
王様とリシーは驚いた様に見ている。確かに空中から突然ものが出てくるのだ驚かない方が難しいだろう。
「これは私のオリジナル魔法で収納と言います」
「オリジナル魔法…ですか!初めてみましたが凄い便利そうですわね!」
「確かに地味だか凄い魔法だな。空間魔法の一種なのか?」
お?ここで王様が食い付いてくるとは。
「そうですね。後日でよろしければお教えしますよ?使えるかどうかは本人次第ですが。」
ー魔法薬精製ー
「よろしく頼んでも良いだろうか?さりげなく魔法を使うのだな……」
話の合間にさりげなく使った魔法で透明のビンに淡い青い光を纏った銀色の液体が湧いて溜まる。これで良い久しぶりに魔法薬を作ったがいい出来だ!
「こ、これは伝説級の魔法薬!?一瞬で作るなんて!やはり私の旦那様ですわ!」
「伝説級だと…?」
そんなに驚くような事なのだろうか?勇者として各地を回っているときはこいつに世話になったものだ。
「あの子が苦しんだときはその魔法薬を飲ませてやってくれ。それでも駄目なら私の所に来てくれれば大丈夫です」
「「の、飲ませる!?」」
いや魔法薬だし飲ませなきゃ効果が無いでしょ?
イヴちゃん除け者にしてごめんなさい!イヴちゃんの正体を知った王様を見てみたいですね!
とりあえずリシーかあいい!(妄想)