一章十一話 『精霊天使の慈愛』
気付いたら日にちが経っているって怖いですよね(棒)ほ、本編どうぞ!
「さて、準備をしようか。」
「そうだけど…僕、必要かな?」
「ん?…まぁ特には……でもこの子が起きたら男の俺よりイヴの方が相手しやすいだろ?」
「そっか…分かったよマスター。この僕におまかせなさい!」
その言葉に頷くと何処から取り出したのか白いロウソクを取り出す。これは収納と言われる魔法でルークが作り出したオリジナルの魔法である。
これは魔力の総量に比例して収納に入るものの量も決まるため魔力をほとんど持っていない者には使いにくい魔法ではあるがルークにはあまり関係がない。
特に物入れている時に魔力を使う訳でもないためルークの自信作のオリジナル魔法だ。
「やっぱりその魔法何度も見ているけど根源が理解出来ないなぁ…だから僕には使えないのかな?」
「そういう訳でもないと思うぞ?多分だがこの魔法は闇系統と無系統の混合魔法だからな、性能は落ちるが媒体を作って魔術にすれば出来るかもな?」
とロウソクに火を付けながらイヴに返す
「毎回媒体を通すなんて面倒くさいことしないよね?」
「確かにな。」
厳密に魔法と魔術の違いを言うと魔法は自分の魔力を直接操作して魔法を作り上げるもの"魔力を直接操作する方法"と書いて"魔法"魔術は魔法を魔法陣や媒体を通して発動させ個人の負担を減らすもの、そのため威力や多様性には欠けてしまう。
一方魔術は"魔法を術式的に簡略化させた方法"と書いて"魔術"なのだ。しかし魔術には魔術で良いことも無いわけではない。手数勝負や設置型など魔術には魔術で良いこともある。
魔法では魔力を直接操作するので単発的な威力に依存してしまい魔術ほど手数がなくなってしまう、それに魔法はその場で発動してしまうので地雷のように置いて置くことも出来ない。魔術は逆にそういうことが出来るのだ。
他にも他愛のない話をしながら魔力を練っていく、魔力が可視化されて部屋をほど走る。一応窓には黒い布を掛けて遮光カーテンのようにしているので問題はないだろう。大体魔力の操作が終わったのだろう、ルークは両手をベッドで横になっている女の子に当てる。
ー精霊天使の慈愛ー
欠損部分の修復、手や傷だらけの体などの修復も含めて精神面も癒してくれるのが精霊天使の慈愛の特徴でもある。
本来なら長い年月をかけながら患者の心を癒していくものを精霊天使の慈愛は発動と同時に精神の修復も可能にする魔法である。それでも心に負った傷が大きければその全てを癒すのはこの魔法でも不可能だ、あくまでこの魔法は精神的に癒すだけなのだ。
女の子はみるみるうちに回復していく。無かった手も傷だらけの体も。そこには黒髪の美少女がいた、もといた日本でも中々見かける事のない程の美少女、大和撫子…と言えば分かるだろうか長髪の黒髪に長い睫毛など本当に整っている。しかしまだやることは残っている。
「次は精神面だな……」
そう呟くと今まで以上に魔力を高める。外傷など人の内側を治すのに比べたら天と地ほどの違いがあるのだ、今まで以上に魔力を練っていく、部屋をほど走る魔力からポロポロと結晶が出来ては床に当たり音もなく砕ける。
これが魔力の結晶化だ魔力を高めるとこういう風に魔力が結晶化することがある。しかし魔力結晶の強度はほぼ無いに等しいのでまるで雪の様に消えていく、まるで部屋の中に雪が降るという幻想的な事が起きるのだ。
「綺麗だね…」
イヴはこの幻想的な光景に夢中になっている様だ、第一魔力の結晶化が出来る程魔力を練れる魔法使いは俺は一人しか知らない。その人も一万年も前の人で現代には生きてはいないだろうが。
「そろそろか…」
魔力を練り終わったのかルークは女の子に手を再び当てる。
「んっ…ふぁっ!?……ああっ!?」
「目を覚ましたか…不味いな。」
「えっ!?大丈夫なの!?」
一応精霊天使の慈愛は悪い言い方をすると無理矢理精神を回復させるものなのだ、その為その被験者には大きな負担がかかる…らしい。実際このような事態になったのは初めてなのだ。第一この魔法は睡眠させる魔法も同時に施行してるはず……
「そうか…勇者の耐性か。」
「耐性?」
「後で話す。とりあえず抑えつけてくれ。」
「わ、分かったよ!」
「ああああっ!!?ちがっ!?私じゃなっ!?あうぁぁぁああああ!?」
やはりなにかトラウマか何かか。ルークはまだ神の目を使いこなせているわけではない。死神の時ではないにしろイヴは神の目を使いこなしている。神の目は全てを見通す目であり対象の過去など全てを見ることが出来るのだ。だからこそイヴはこの子の過去を見たからこそ無実と言ったのだろう。
「私はたべ…ちがっ!?ああああぁぁあああっ!?」
「くそっ…」
何か意識を失わせる方法はないか…。睡眠系の魔法は勇者の耐性でほとんど効いてない、あとは…
「えっと…覚えてないことを祈る…それとすまない。」
「えっ…マスター!?何を?」
「んっ!???んんんっ???!!」
そう一言謝りを入れて女の子の唇に口付けをする。所謂キスだ。
「ちょっ!ちょっとマスター!?」
「んん!?んんんんんん!!?…………ん………」
ガクンという擬音が出そうな感じで女の子の意識が落ちる
「…変態……」
「ちょっとまて。何してたか理解してるだろ!?」
「無抵抗の女の子の唇を貪ってた、最低…」
「魔力吸収だろ!?」
通常魔力吸収は相手に触れるだけで出来るものなのだが勇者として高い耐性を持っているこの子には触れるだけでは魔力吸収が出来なかったのだ、なので強行手段だがキスという方法に出たのだが……解せぬ。
そのあとも魔力を女の子に流し込みつつ精神の安定をしていた。約二時間程治療しただろうか。
「これで精霊天使の慈愛は終了だな」
「マスターが女たらしってことしかわからなかったなー」
「棒読みで言うの止めてくれないか?無性に傷付く。」
「でもこれで大丈夫なんだね?これが神の名を冠する魔法ねぇ?ふぅん。」
「なんだ?気に入らないのか?」
「別にぃ?」
そんな話をしているとドアをノックする音が聞こえた。一応中の音が漏れない様にイヴに消音の魔法を発動してもらっているので問題はないはずだが。
「ルーク様。イヴ様いらっしゃいますか?」
「この声はリシーか?イヴ、扉を開けてくれ」
「はーい。リシーさんいらっしゃい。」
リシーには泊まっている宿と部屋の事は教えてあるためここにきたのだろう。多分この子を拐ったことも知っている。
「んで、紹介してくれるんだよな?」
そう言ったのはリシーの後ろに白髪の男性が立っていたためだ。見たことは……ないな。初めて会う人物だ。雰囲気的には貴族か?執事?いや違うなそれよりはもっと格上の位の人物だろう。
とりあえず一言言うとこの人中々強い。それだけはわかる雰囲気もそうだが隙がない。いつでも戦闘態勢に移れるといった感じだ。
「はい。ルーク様、こちらは…」
「大丈夫だ、私から言おう。…私はディルフェルト=クレイアジス=ファルネシウス。この国ファルネシウス王国の国王だ。」
国王と来たか…これは厄介だな。
さて!遅くなってしまったお詫びを…(チャキ)
あ、ちょっと待ってい、イヴさん!?そ、その振り上げた鎌をどうするおつもりで!?
ニコッ(イヴ様の不敵な笑顔)
やっ!?ちょっ!?いやぁぁぁぁあ!?