一章六話 『ギルド宵闇亭』
今回は早めの投稿です。
前回は急にグロ系で驚かせてしまいすみませんでした。これからも急なグロ展開はあると思いますのでどうかご容赦を!
「ふぁぁ…」
小鳥がさえずる頃、寒さで目が覚めた。これくらいの寒さが残るこの時期、体感では覚えているのか…大体蛇遣い月だろう。この異世界では13の月に別れており牡羊月から始まり牡牛月、双子月、蟹月、獅子月、乙女月、天秤月、蠍月、射手月、山羊月、水瓶月、魚月、蛇使い月の順である。そしてひと月30日で一年が390日となっている。地球とは一年で35日ほどもずれている。っとまぁ与太話はこれくらいにして、この寝坊助を起こさなければな。
「おーい。起きろイヴ」
「ん…んぅ……」
やはり元死神とはいえ、今は女の子か…揺さぶって起こすのに肩に触れているが、女の子特有の柔らかさというか…いや、やましい気持ちはないぞ?こ、これは起こすためのごく自然的な行為であり……そんな風に自問自答しながら揺さぶること10回程度。
「大体、お前は隣のベットで寝てたはずだろ?何故俺のところに…ごふっ!?」
「ん……へ!?ひゃ!?きゃぁぁ!!」
俺の抗議は最後まで言わせてもらえず、代わりに鳩尾に下から抉られるようなアッパーを受け、眠りより深いところまで意識を持って行かれた。
「痛ってぇ…」
鳩尾へのクリーンヒットは思ったよりダメージが大きい様だ…
「大体なんで君と一緒に僕が寝てるんだい?」
「知らんが?イヴが入ってきたんだろ?」
「そんな事あるわけ……はっ!?」
「思い出したか?」
そうだ昨日、俺の酒を飲んでその上酔っ払って絡んできた……
「眠りの魔法で眠らされて連れ去られた!?」
「あながち間違ってないが、そこだけ抜粋するんじゃない。」
その言い方だと俺が誘拐犯か何かと間違われるだろ?あれ?でも傷物にした少女を奴隷にしてそして……いやまて違うぞ?傷物は語弊がある!断じてイヴには手を出してない!てか俺は幼女趣味ではない!
「なんだか凄くバカにされた気がする……」
「なんでもないぞ?気のせいだ。」
勘が鋭いのも考えものだ。今の年齢はさておき死神の時から会わせたら何億と生きてるやつだぞ?見た目は少女(幼女)に見えても中身は完全にBB…
「マスター?やっぱりバカにしてない?」
「な、何を言ってるんだ?気のせいじゃないか?」
怖っ!?鋭過ぎだろ!もう心を読むとかのレベルだぞ!?こいつにそんなスキル無かったはずだが?てか一瞬マジだったよな!?本気で暗殺者みたいな目をしてやがったぞ!…あ、いやこいつ暗殺者より達の悪い元死神か。
「まぁ寝かせてくれて運んでくれたのはありがたいけど…あんまり精霊魔法は人前で使わないことをオススメするよ。」
「覚えてるんじゃないか…でも何故精霊魔法が駄目なんだ?」
「駄目って訳じゃないけど…念のためかな?」
「まぁ、気を付けて置く」
精霊魔法はその名の通り精霊に助力を得て試行する魔法であり基本的には各属性の精霊と契約する事によってその属性の精霊魔法が使う事ができる。というものであるが、俺は例外で精霊とは契約せずに精霊魔法を試行できるが、その理由についてはまた今度にしよう。
「それで今日はどうするの?」
「とりあえずギルドへ行ってみる。」
実は昨日、この街に入った時にはもう日が暮れており、ちゃんとギルドの方へ顔を出すことが出来なかったのだ。身分証明が出来ずに王国の検問所では長く待たされた挙げ句入る時は夜とは…そしてそこの兵士に聞いたのだが、曰くギルドで身分証明を作れるということなので今後の為にも作るべきだと判断したわけだ。
「イヴ。行くぞ」
「マスター?着替えさせてよ。」
「あぁそうだな。着替えて行くか。…って、ん?どうした?」
イヴがじっとこっちを見つめている。あれか?ドラ○エで言う"仲間になりたそうに(ry"みたいなやつか?あれか?突っ込み待ちか?よーし!ここは一発いい突っ込みを…
「マスター?着替えたいから出てってくれない?それともみたいのかい?」
「あ、いえ。すんません…」
ちょっとイヴに凄まれてしまい。あわててローブを掴んで外にでる。あえてもう一度言っておこう。俺は断じて幼女趣味ではない。断じて幼女趣味ではない!大事な事なので二回言わせて貰った。
そしてイヴの着替えが終わり下に降りる。何故女性というものは準備に時間がかかるのか…一時間だぞ?というか追い出されたせいで俺も着替えれなかったじゃないか!それはさておき、ここ宵闇亭ギルドはファルネシア王国の最大の大きさのギルドであり宿屋や酒場も兼ねているというほど大きいらしい。らしいというのも門番の兵士に説明されただけなので分からないからだ。一万年前もギルド自体はあったがここまで庶民化してはいなかった。それよりは冒険者というものは畏怖や軽蔑の対象であった。時が流れるということはここまで変わる事なんだなと改めて理解する事にもなった。ギルドの窓口には赤髪の獣人の女性が立っていた。どの種族か分からないが首輪がしてあるということはギルドの職員であるとともに奴隷なのだろう。
「すみません。昨日ここで泊まったものなんですが。ギルドで身分証明を作れると聞いて来たのですが。この子の分もお願いします。」
「ではこちらに記入をお願いします。文字はかけますか?書けない場合は代筆しますが?」
「あ、いえ私は大丈夫です。この子は代筆を。」
「なんで僕が文字が書けないってわかったんだろう…」
そういって淡々と文字を書いていく。しかし文字が変わって無いことだけが救いである。流石に一万という時を経て文字が変わらないというのも不思議ではあるが変わってないに越したことはない。この世界に来てから二年で頑張って覚えた異世界の文字だ。因みにイヴが書けないこと知っていたのは昨日の酒場の注文の時にメニューを読めていなかったからだ
「どうかしましたか?」
「あ、いえ…」
「この首輪が気になるのですね?」
「え、えぇ…まぁ…」
「マスター…デリカシーに欠けるよ…」
「す、すまない…」
確かにチラチラと見てしまっていた自分が悪い。ギルド職員が奴隷というのもなにか事情があると言うのに、イヴの言うようにデリカシーに欠ける行為はやめなくては。
「私は大丈夫ですよ?私は見てわかる通り奴隷ですが、ご主人様であるリシー様には優しくして頂いておりますので大丈夫です。身の安全のこともありますし。見たところイヴ様もルーク様の奴隷で有られる様ですが。首輪は?」
首輪を着けなくても手の甲にある奴隷紋は見えてしまうので奴隷とバレたのだろう。
「うちは着けないことにしているのです。」
「そ、そうなのですか…すみません自己紹介が遅れてしまいましたが。私はクラリアと申します、以後よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いします。」
「それでは当ギルドの説明をさせて頂きますね。」
一通りの説明と書類の記入が終わり俺達にはステータスカードが配られた。これはこの世界に来た当時、当時の姫様が勇者のステータスを見るために使った詠見結晶をカードにしたものに近いな。ギルドの評価であるギルドランクと職業、種族と小物程度だが簡素なアイテムボックスの機能まで付いている。なんとも初心者には優しいものだ。しかしこの俺のカードにはギルドランク以外には何も記されていない白紙のカードであった。
ついこの間に春の妖精さんが「はるですよ~」って言ってたから暖かったのに最近寒すぎやしませんかね?