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六人の異邦人  作者: 椎名れう
異邦人追憶
99/107

脱出

大変お待たせいたしました!!!!

第四章の締め!!!!

落ちていく。

ただ、落ちていく。

遠目でもはっきりと見える。

地上から100メートル以上の高さからの落下。



喉の奥からほとばしるのは声にならない声。

ドアをこじ開け、彼は草原の真ん中に走り出ていた。



□□

◇◇

セレクトバーを動かし、「離陸準備」に合わせる。間もなく滑走が始まり、そして機体がふわりと宙に浮くのが分かった。


船は勢いを緩めずそのまま上空へと飛び出していく。

上昇、右に旋回、高速直進。スムーズな運転だ。もはや、エンジンに不具合はない。

「流石はイチアール。大した整備士だ」

操縦席に座るライオネルはにっこりと笑った。


「全てが片付いたら、美味い食事に連れて行ってやろう」

腹に溜まるグリルがいいか、洒落たカフェにしようか、やはり海辺の海鮮レストランが王道か・・・。

呑気にそんなことを考える彼の視界に不意に黒い点が入ってきた。1つ、2つ、3つと、続々と増え続けている。

「さあ、問題はここからだ・・・」

予想していたことなので、別に慌ててはいなかった。


まずパネルを操作し、防御シールドを張る。そして左右の操縦バーをしっかりと握りしめた。

この作戦は自分の腕前にかかっている。失敗は許されない。否、許さない。

「大役、確かに果たさせてもらうぞ」


パネルの端に小さく映る、地上の森。それをライオネルは一瞥し改めて敵機に向き直った。



派手に動き回り、敵の目を引き付ける。

『逃げ回るだけじゃ怪しまれます。ほどほどに攻撃してくださいね』

敵機の側面を狙う。逸れた。あまり射撃は得意ではない。


「まあいい・・・墜落させては元も子もないからな」

『間違っても敵機を破壊しちゃダメですよ? 逆に、敵の攻撃には当たってください。操縦不能にならない程度に』

「気に食わんが仕方ないか」

座席が振動した。数発ほど当たったのだろう。



警告ランプが光始めると同時に、ライオネルは下降を開始した。

背後から砲撃されながらもなんとか地表に降り立つ。

ゴッと音がして足元が揺れる。かまわず座席から離れ、船から転がり下りた。



◇◇

「機体を捨てた。森に逃げ込んだな」

「地上戦に持ち込むつもりか。注意すべきは不意打ちだな。あいつ以外に敵の姿は?」

「ない。・・・ん? あいつもどこに消えた?」


走っていた()天王星人は不意に姿を消した。

「やむを得ん。地上を捜索しよう」

「もう二、三体来てもらう。あとは上空に残ってもらうか」


木星人の機体は静かに下降し、地上すれすれの高度を保ちながら森の中を進んでいく。

少しして操縦席に座る木星人の手が止まった。


「時間がないんだぞ」

「いや、何かを検知した。・・・これは、シールドか? なぜこんなところに張られている?」


刹那、ガラスの割れる音がした。木星人が反応する暇もなく、ギラリと光るものが窓から差し込まれた。



◇◇

上空からではこの館も、それを覆うシールドも視認できない。機体に持っている状態でも同様だ。

シールド内に潜み、木星人を待ち構えて機体を奪うのはたやすいことだった。


「でも三体か・・・しかも小型」

「仕方ありません。夕莉さん達には元の機体に乗ってもらいましょう」


奪った機体は、クリスティナローラとエイザク、ガルフォンがそれぞれ操縦する。

元の大型船はイチアールが操縦し、ライオネルと夕莉、ハールドが乗り込む。例の死体と、今殺した兵士の死体も一つだけ積んだ。


「殿下、ここからは私の番です。お二人を宜しくお願いいたします」

「任せろ。そなたも気を付けるのだぞ」



クリスティナローラは、ひらりと操縦席に飛び乗り一足早く上空に飛び立った。

操縦の仕組みを把握するのに時間はそれほどかからなかった。

湧き出る敵機を一つ、また一つと撃ち落としていく。


数分後、視界の端で大きい点と小さい点二つが離陸するのが見えた。

クリスティナローラが敵の目を引き付け、エイザクとガルフォンが大型船の護衛をして敵の包囲網を突破する。そういう作戦だ。


だから自分が一機でも敵を潰しておかなくてはならない。

大型船の方に向かおうとした機体を背後から狙い撃つ。続いて転回し、自分の背後を取ろうとした敵機のエンジンを射撃する。


不意に、前方にいた敵機の一つが消えた。

「後ろに回り込んで挟み撃ち」

猛スピードで前方の敵機に突っ込み、ぶつかる寸前でハンドルを切って90度のカーブを切る。

前方の敵機の放った銃弾は後方の敵機に直撃した。

再び向きを変え、前方の敵機の背後を取る。無防備なそこを撃ちぬいた。



「皆さんは・・・」

安堵した。三機とも無事だった。

だが、それは束の間の時間だった。



◇◇

『冥王星人、カルメヂ星人、謎の異邦人が小型。残りは大型に乗っていると思われます』

「分かった」

臓器は死体から取る。偽天王星人の正体も解剖して調べればよい。

「国賓以外の邪魔者を排除だ」



◇◇

個室の方からボンッと音がした。機体が揺れ、警告音が鳴り響く。

ライオネルはとっさに、寝ていた夕莉とハールドを胸に抱え込む。

「ライオネルさん・・・?」

「夕莉、離れるな。いいな」


グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ。

ビーッビーッビーッ。

「イチアール、何が起こった?! 無事か?」

グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラグラ。

ビーッビーッビーッ。


振動音と警告音にかき消され、返事が聞こえない。

壁が、天井が、床が揺れる。揺れが激しく、立ち上がることもできない。

「イチアール、イチアール!」


ビーッビーッビッッッ。

焦るライオネルをあざ笑うかのように警告音は鳴り響いていたが、不意にそれが止まった。

次の瞬間、床が消えた。


否、バラバラになったのだ。


ライオネルは空中に投げ出された。



◇◇

「夕莉ッ」


体勢が崩れたライオネルさんの腕から投げ出された。

「ああっ」

一瞬狼狽したけど、すぐに体は空中になじみ体勢を立て直す。そうだ、そうだった。


「ライオネルさん、手を!」

右手でイチアールの耳を掴み、左手を伸ばし下降するライオネルさんを追う。


ライオネルさんはハールドを抱き込んだまま首を振った。

「私はいい、イチアールをッ。痛い・・・」

舌を嚙んだらしい。

「いい?! 何言ってるの! こんなところから落ちればどうなるか分かってないの?!」

「心配するな、ハールドは守ッ」


そうしている間にもライオネルさんの体はものすごいスピードで落ちていく。

早く、早くしないと・・・。

イチアールを落とさないよう抱きしめながら、必死で地上に向かって下降する。けどライオネルさんの方がずっと早かった。


ダメだ、追いつけない。



ドゴッ。

私の目の前で二人は墜落した。

ライオネルさんは頭を強打し、全身を地面に叩きつけられた。

「ライオネルさん! ハールド!」

返事はない。目を閉じ、ハールドを抱きしめたままピクリとも動かない。ハールドも・・・応答がない。

まさか・・・まさか・・・。


駆け寄りたい。揺さぶって耳元で叫びたい。

気持ちと相反するように、体はこれ以上の下降を許さず空振りを繰り返す。



「ライオネルッ」

大声にハッと目を向ける。二人の墜落場所から数メートル先で、ガルフォンさんが機体から転がり落ちていた。



ーー

◇◇

「ライオネル、返事をしてくれ、ライオネル」

ライオネルからの返答はない。大地に叩きつけられたままの状態で、目を閉じたまま微動だにしない。

「すまない・・・僕のせいだ」


クリスティナローラを付き合わせてまで考えた作戦の果てがこれか。

自力で脱出したいなどと言わなければ、ライオネルはこんなことにならなかったのに。


自己嫌悪と感傷に浸っていた彼は一方で、周囲の状況を確認することを怠っていた。



「動くな、異邦人ども」

気が付いた時にはもう遅く、真上には敵機が群がっていた。

空中の夕莉の周りも囲まれているようだ。


「無駄な抵抗はよせ」



結局。

(僕は何もできない)

役立たずなのだ。その上、関係ない人まで命の危険にさらしてしまう。

こうなったのは・・・自分のせいだ。何もできなかった自分のせいなのだ。


・・・だったら今更何を命を惜しむことがあるものか。



(降参したふりをして、敵の船を乗っ取ってやる)

自分は死んでも、みんなは助ける。


ガルフォンが敵機を睨みつけたその時だった。



「大気圏外に敵機確認! 散開せよ!」

自分達を囲んでいた敵機が一斉に上空に散らばっていく。

だがすぐに、一機また一機と撃ち落とされて機体が次々に地面に叩きつけられる。


上空に姿を現したのは、灰色の大型船だった。

黒い小型機が取り囲んでは射撃を繰り返すが、頑丈で攻撃がまるで通らない。

さらに、大型船から無数の小型の灰色の小型機が出てきて木星人を撃墜する。


もはや場の勝敗は明らかだった。

木星人たちはなすすべもなく撤退し、黒い機体は空から一つ残らず消え去った。



大型船は下降し、ライオネルのそばで呆然としていたガルフォンの数メートル先に着陸する。

すぐに灰色の軍服を着た男が出てきた。

「国賓の皆様方。怪我はありませんか」

「あなた達は、もしかしてフリージー星人の・・・」

「いかにも。フリージー軍所属のバリッツ大尉と申します。皆様方を保護しにまいりました」

にこやかな笑顔を浮かべながら、だが有無を言わせぬ態度で彼は続けた。

「わが軍の船にお乗りくださいますね?」


間違いない、言わせようとしている。

「怪我人が2人います。それから、病人も2人・・・」

「喜んで治療いたしましょう。本拠地までお越しくださいますね?」

「っ、よろしく・・・お願いします」



(結局、こうなっちゃうんだな・・・)

無力感と諦めが押し寄せてくる。


だが少し、ほんの少し、ほっとしている自分がいるのも事実だった。

今日はもう一話・・・。

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