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六人の異邦人  作者: 椎名れう
異邦人追憶
88/107

少年の代償 雇われ清掃人

お待たせしました。

今回ちょい長め。

皮剥ぎの助手になってから数年がたった。


「ハールド」

夕食を終えて工房の隅で横になろうとした時、男が声をかけてきた。

「なに」

「明日、クルシェトラの家に行くぞ」


クルシェトラ。上から二つ目の身分だ。通称、貴族である。

「…何しに」

「牛が死んだから引き取りに来てくれって言われたんだよ」


人間以外の死骸の処理も皮剥ぎの役割の一つである。いつにない力仕事だが、正直なところ面倒さより特典の良さの方が上回る仕事だ。

まずは、牛の死骸から採れるもの。常人には穢れであるが、皮剥ぎにとっては貴重な商売道具だ。特に牛脂はセッケンを作るのに必須である。

それに報酬。依頼者がバウニアの時も銅貨数十枚は得られるが、クルシェトラならばその十倍は固い。



なのに。

「なんだ、仏頂面して」

一時的とはいえ、クルシェトラのもとで働く。それがハールドは気に入らない。


「おっさんがあいつらの為に働く必要あんのか?」

「必要というか義務だからな。いったろ、雇い主のようなもんだって」


皮剥ぎは共同体から排除されており、常人が使う市場や店で皮を売ることはできない。無論、食品や生活用品を買うことも。よって指定された場所で物品の受け渡しや売買をする。死刑の手伝いの打診もその場で告げられる。くじ引きで割り当てられたのか、いやいややってきたバウニアが二人の相手をするのだ。

どうしてその仕組みが成り立っているかというと、その地を支配するクルシェトラらが後ろ盾になっているからである。指定された場所というのもクルシェトラが直接管理する敷地だった。


クルシェトラが皮剥ぎを尊重しているわけでは決してない。むしろ穢れと差別し忌み嫌っている。だが、クルシェトラにとって皮剥ぎは必要であり皮剝ぎもまたクルシェトラに逆らうことはできないのだ。



頭では理解していても、自分の尊敬する皮剥ぎがクルシェトラに生殺与奪を握られているという事実が気に食わないのだ。

「嫌なら待ってろ」

「行くって。一人じゃ大変だろ」

ハールドはため息をついて目を閉じた。



翌日、朝からクルシェトラの家に向かった。工房やバウニアの自宅なんかよりはるかに大きい邸宅だった。立派な門に、奥には白い彫刻も見えた。

裏口から来訪を告げると、ハールドや皮剥ぎよりも浅黒い肌の女が出てきた。粗末な身なりから見るに、召使だろうか。

「牛は?」

「案内スる」

片言の言葉で答え、女は先に立って歩き出した。


連れていかれたのは屋外の牛小屋だった。

「ソコに、死んだ牛、イルかラ」

それだけ言って女は振り返ることなく立ち去った。ハールドと皮剥ぎはさっそく死骸の解体を開始する。

牛を解体して手押し車にすべて積むと、女が報酬を渡すからと二人を呼んだ。


「あの女もタルトクなわけ?」

「違う」

「俺らと普通に口きいてるけど」

「あれはシェルードル。奴隷だ。バウニアの下の身分」

基本的に、皮剥ぎやタルトクとバウニア以上の三つの身分の仲介をするのがシェル―ドルらしい。



シェル―ドルの女に報酬を渡され、続いて母屋から離れた厨房に案内される。

「飯が出るのか?」

「違う」

「これ、好きなだダケ、トれ」

厨房の外に残飯を入れた木の桶が放り出されていた。茶色い塊に中に根菜の皮や肉の脂身がのぞいている。桶の横にはそれ以外のごみがずらりと並んでいた。


「飯、今回はいい。牛の肉もあるしな」

皮剥ぎはごみの中から一つの箱を手に取った。柄を見るに、カードゲームだろうか。


皮剥ぎはくるりと厨房に背を向けた。女はそれ以上何も言うことはなく、残飯の入った桶を抱えて厨房に入っていく。

そして鍋の中に、桶の中身を空けた。軽い衝撃を受け、ハールドは瞬きしてしまった。


「クルシェトラも残飯を食うのか?」

「まさか。シェル―ドル用だろ」



厨房から牛小屋に戻る途中、緑の映える中庭が目に写った。果物を実らせた木々に咲き乱れる花々。その端に佇むのは白い壁状の彫刻。それを何気なく見た時、ハールドは思わず立ち止まった。


それに何の意味があるのか。そこまで深く考えてしまうわけではない。ただ、足を止めて見入ってしまいたくなる。

そんな奇妙な絵が彫り込まれていた。



まず目についたのは巨人だ。絵の中央で巨人が手足を広げて突っ立っている。そしてその周りに数人の女が侍っていた。

一人の女は、巨人の肩に乗り両手で巨人の頭を抱えている。

二人目の女は、巨人の手首に乗り大きな手のひらに自分の頭をこすりつけている。

三人目の女は、巨人の膝の間に挟まれている。

四人目の女は、巨人の足に踏みつけられつつも上半身だけは脱出に成功している。


巨人の表情は雄々しく、女たちも奇妙な体勢でありつつも皆一様に柔和な顔をしている。さらに、巨人と四人の女の周りは美しい花で満ち溢れていた。



そこまで見た時、ハールドはふと四人目の女のさらに下の部分に目をやった。

そこには・・・それまでとは全く違うモノが彫り込まれていた。


髪をかき乱し苦悶の表情を浮かべる女。その女の周りを取り巻く炎。

女は手を頭上に差し伸べ助けを乞うような姿勢をとっている。だが、巨人も四人の女も、誰一人として下方に目を向けてはいない。


誰にも見向きもされないまま炎に燃やされる女は苦しそうで・・・。

(炎? 炎・・・ほんとにそうか?)

瞳が、見えたのだ。縦横無尽に這いずり、女を逃すまいと飲み込む炎の中に。


(まるで・・・)

炎の形をした魔物、ハールドにはそう映った。


刹那、どきり、と心臓が鳴った。魔物と目が合ったような気がしたのだ。



「ハールド?」

はっと我に返る。皮剥ぎが怪訝そうにこちらを見ていた。

「帰るぞ」

「ああうん・・・」


ハールドはさっと彫刻から目をそらした。目が合った、なんてそんなことはさすがにあり得ない。とは思うけれど、これ以上あの彫刻を見てはいけない気がする。


それからは彫刻のことを思い出すこともなく早々に手押し車を引いて工房に帰った。



ーー

もう長らく両親の家には帰っていない。ずっと皮剥ぎの工房に居候している。

皮剥ぎとともに、動物の皮を剥いだりセッケンや家畜の飼料を作ったりしてそれを売る日々を送っていた。


「俺、そろそろ自分で金を稼げるようになッたほうがよくないか?」

ある日、ハールドの口からぽつりと出た提案。ある程度体を鍛えてたくましくなってから切り出そうと思っていたそれをついに口にする。


「自立したいのか。いいんじゃないか?」

皮剥ぎは特に驚いた風もなく答えた。

「もうお前は十分強い。一人でもやってけそうだ」

「いやそうじゃなくて」

ハールドは男の言葉をさえぎった。自分で金を稼ぎたい、とは言ったがそういう意味にとられてはかなわない。


「俺も働いて、この家に金を入れた方がいいんじゃないかって」

「なんだ、そういうことか」

「俺も食う量が増えるし、あんたの手伝いをするだけじゃ悪いってな」

ハールドが成長するにつれ、食費が増えたのは確かだった。一日一食でも十分だった幼少期とは違い、今は三度三度きっちり食べないと身が持たない。

ハールドの食欲のために皮剥ぎが死刑の手伝いに積極的に参加しているのも知っていた。



皮剥ぎは机に肘をついて宙を見上げた。

「食いぶちのことなら気にするな」

「そういうわけには」

「それより俺はお前がやりたいことを見つけて自立したいのかと思ったんだ」

そういう理由ならよかったんだが、と彼は続ける。


その言葉の意味が理解できず、ハールドは数秒固まった。

「・・・やりたいこと? どういう意味だ?」


やるべきこと、なら分かる。

生きていくために、食べていくために、安全に眠るために。自分はかっぱらいに始まり、狩り、格闘訓練、そして今は工房でせっせと動物の皮を剥いで売りに出している。

そこには希望も選択の余地もない。やらなくては死ぬ。だからやる。それだけだ。



「若者が、皮剥ぎなんて長いことやっても楽しくないだろ」

「いや、そんなことはない」

皮剥ぎという仕事そのものは楽しいも楽しくないもない。だが、自分が男のもとで働くのを選んだこと自体は自分の希望によるものだ。


「あんたと働くのは楽しんだ」

自分を助けてくれ、かっぱらいに比べて安定した生活の仕方を教えてくれた皮剥ぎ。自分が働くことが彼の助けになっている。その事実はハールドに生きてきた中で一番の喜びを与えてくれていた。

かっぱらいをしていた頃は上等の肉にありつけた時が一番の幸福だったが、今は男と一緒にいられることが何より嬉しかった。



「だからあんたが助かるんなら、俺も働いて金を稼いでおきたい」

男への恩を返すために。

「やりたいことはそれだけだ」


「そうか」

皮剥ぎはふぅーと息を吐いた。特に表情の変化はない。

「ま、今はそれでもいい。それで話を戻すが」

肘をついていた腕をテーブルから降ろした。


「お前が自分で金を稼ぎに行くってのには賛成だ」

「そうか、良かった」

「ここ以外の場所で働くことは、お前にとっちゃいい刺激になるだろう」

皮剥ぎの言うことにはピンとこなかったが、ハールドは明日からの職探しに意気込みつつ眠りについた。



ーー

数日後、ハールドはとある雑木林の外れに来ていた。周りにはタルトクと思しき数人の男女がハールドと同じく立ち往生している。雑木林からは大きな建物の白い壁が見えていた。

この白い建物を含む広大な敷地は、バウニアの子供たちの通う学び舎だった。ここは最近できたばかりで、清掃人などをタルトクから集めていた。この学び舎が今日からハールドの職場になるのだ。


ハールドは他のタルトクとは距離を置いて立っていたが、ずっと彼らからの敵意のこもった視線を感じていた。中にはひそひそ耳打ちし合っていたり舌打ちをしたりする者もいる。ケンカを売ってくる気配がないので終始無視していたが。



ハールドが来てから一時間後、一人の浅黒い肌の男が雑木林に入ってきた。バウニアほど良い身なりではないがタルトクほど粗末な服装ではない。

(奴隷の・・・シェルなんとかだったか?)

特に感じるものは何もないが、男が手にする鞭はハールドの目を引いた。


男はタルトクを一瞥すると、そのまま背を向けて歩き出した。

「案内スル」

ついて来いということらしい。全員が素直に従った。

ハールドは念のために殿についた。



建物の裏口から入り、寒々しい廊下を通って一つの部屋に案内される。埃だらけの薄汚れた部屋で、壁や床のところどころが黒ずんでいた。特に家具もなく、今ここにいるタルトク7人が入りきって少し余裕があるくらいの狭い部屋だった。

「ここがお前ラの共同部屋。用がナイ間はここに居ロ。飯もここデ食エ」



その後、共同部屋の中でそのまま仕事の説明を受ける。

教室を除く建物内の掃除、残飯の処理、便所の汲み取りが主な仕事だ。これらは直接バウニアの生徒とは関わらない仕事で、彼らの授業中と下校後に作業を行うことになっている。


「ないと思うガ、生徒の坊ちゃマらとは会うナ。アノ方々がお前らの穢レに触れることがアレバ・・・」

持っていた鞭を床でぴしゃりと鳴らす。タルトクの女二人がヒッと息をのんだ。

「次、作業を割り当てル」


ハールドに与えられた仕事は建物内の掃除だった。タルトクの男二人と一緒だ。やはり敵意のこもった目を向けてくる。二人して屈強な体つきだがハールドはそこまで警戒していなかった。

(こいつらは見掛け倒しだ。二対一でもなんとかなる)

まあ油断をするつもりは毛頭ないけれど。



その後、共同部屋で待機していると別のシェル―ドルの男2人がハールドらを呼びに来た。授業時間が始まったので廊下の掃除をしろと言う。

「教室ニハ入るな」

それだけ言ってシェル―ドルらは子供たちの声の聞こえる方へと歩いて行った。ハールドたちが来ないかどうか見張りをするのだろう。


シェル―ドルは洗い粉を床に置いて行ったのみで、汚れを拭きとるための布などは一切支給されなかった。自分たちの服か手で掃除しろということだろうか。

ハールドは廊下の壁をじろりと見た。汚れが酷い。何が原因で汚れているか分からないほどに酷い。

(病気とかもらったら面倒だ)

その点は皮剥ぎに注意されている。直接触らないほうがいい。ハールドはズボンの中から常備している手拭きを取り出し、それに洗い粉をまぶして壁を拭き始めた。


シュッシュッと壁をこする音は一つだけ。真面目に掃除をしているハールドと違い、男2人は向かい合って雑談に興じている。ハールドは特に注意することなく掃除を進めた。



それから5時間、男2人は掃除せずにずっとしゃべり続けていた。

そこにトテトテと聞こえてくる足音。シェル―ドルの男達が戻ってきたのだ。


ハールドにはとっくに聞こえていたが、タルトク2人はシェル―ドルが近づいてくるまでそのことに気づけなかった。

姿が見えて初めて、慌てて雑談をやめて廊下の方を向き、いかにも掃除をしていた風を装った。


「今日ハ、ここまででイイ」

「どんな感じダ」

壁を見た男たちはほうと目を見張った。ハールドが休まず磨いたおかげで壁は真っ白、とはいかないまでも汚れは完全に落ち切っていた。

「イイだろう」

「報酬をヤル」

「ちょっと待った」


タルトク2人がいそいそと手を差し出したのでハールドは声を上げて制止した。せっかく働いたのに、不当に報酬を持っていかれてはかなわない。

「そいつらは働いてない。やったのは俺一人だ」


タルトク2人は、眼を剝いて無言の圧力をかけてきたがハールドはそれを黙殺した。

「だから報酬は俺だけのもんだ」

シェル―ドルらは一瞬目を見合わせ、それからハールド達3人をしげしげと見た。汚れのたまった手拭きを眼前に差し出す。タルトク2人には洗い粉や汚れの跡はない。



シェル―ドルらはふたりしてズボンのポケットに手をやった。取り出した手中には鞭が握られている。


「壁を向いテ頭に手をツケ」

「ちょっ、」

「違うんすよ、俺らだってやりました!」

「このガキが嘘ついてるんすよ!!」


シェル―ドルは2人の訴えには耳を貸さず、むち打ちの刑を執行した。

ハールドは3人分の報酬を受け取り、そそくさと手拭きを捨てて帰り支度を始めた。



「おい」

ちょうど帰ろうとしているときに声を掛けられる。案の定、憤怒の形相の男2人がハールドを睨みつけていた。

「てめえのせいで罰を受けたじゃねえか」

「落とし前付けろや」

2人はハールドを雑木林に連れて行こうとする。


共同部屋から出てきた他のタルトクも面白そうに2人に加勢した。

「やってやんなさいよ、旦那方あ」

「皮剥ぎにくっついて甘い汁吸ってるガキめ、思い知れ」

野次馬のタルトクがはやし立てる中、雑木林で男2人はハールドに掴みかかった。



そして次の日以降、彼らが学び舎に働きに来ることはなかった。

他のタルトクがハールドに向ける視線も、敵意が引っ込み恐怖の混じったものとなった。


タルトク連中からは距離を置かれ、仕事はずっと一人だったが、当のハールドは全く気にならなかった。むしろ持って帰れる金が予定の3倍に増えたことを喜んでいたのである。



ーー

そんなこんなで働き出してから数か月がたった。昼には持ってきた弁当を食い、夜には皮剥ぎのもとに帰ってその日の稼ぎを渡す。

仕事中はほとんど誰とも関わらない、会話しない。そんな日々が続いた。



そんなある日、ハールドは仕事を早めに上がるよう指示され夕方のうちに帰路についていた。

工房の近くにある市街地まで来た時、ハールドからかなり離れたところから言い争いの声が聞こえてきた。数人の人間が円を作って何やら騒いでいる。

最初はタルトク同士の小競り合いかと思ったが違った。バウニア以上の衣服を着た、しかもハールドくらいの年の少年たちだった。

そしてただ騒いでいるだけでなく、円の真ん中にいる子供を全員で攻め立てているようなのだ。


「なんでお前が学び舎に来てるんだよ」

「そんな身分じゃないくせに」

「知ってるぞ、お前のお父上は尊い身分の方だけど母親がシェル―ドルだってな!!」

「つまりお前は奴隷の子なんだ、僕らと一緒にいる資格なんてないんだよ!!」


真ん中の子供はー表情は見えないがー、特に言い返すこともなくただ「ごめんなさい」と繰り返しているようだ。少年たちは罵りながら、路上にぶちまけた子供のカバンの中身を靴で踏みにじっている。


「・・・」

面倒だし放っておこう、自分には関係ない。そう思う一方でハールドは苛立ちを抑えられずにいた。陰湿な嫌がらせをする少年たちにも、全く抵抗しようとしない意気地なしの子供にも。



「おい」

気づくと彼は少年たちの背後に立って威嚇していた。

「いい加減にしろ」


「はあ、なんだ・・・と」

「やばい、こいつタルトクだ!!」

「目合わしたらだめだっ」

少年たちはハールドの姿を見るや否や、ばっと四方八方に散っていった。


その姿かたちが完全に見えなくなったのを確認し、ハールドはそのままその場を立ち去ろうとした。

「あのっ」

足元から声を掛けられる。未だへたりこんだままの少年のハシバミ色の瞳がこちらを見上げている。ハールドは彼と目を合わせることなくくるりと背を向けた。


「ありがとう、ございます・・・」

ハールドは返事をせずに歩き続けた。会話をしない方が少年のためだ。


「あのっ、僕はラムバムラっ、ラムバムラ家のラクープです!!」

「絶対に、絶対にいつかお礼をっ!!」


背後からの叫びには一切答えることなくハールドは工房への道を急いだ。



ーー

「仕事はどうだった? 知り合いはできたか?」

その日の夕食後、食器を洗い終えた皮剥ぎがいつものように尋ねてくる。ハールドもいつもと同じように返した。

「別に楽しいも何もない。ずっと一人だったから仕事に集中できた」


いつもなら皮剥ぎの「そうか」で終わりだが、この日は珍しく彼はハールドの目をのぞき込み真剣に語りかけてきた。

「お前が俺の為に働きに出てくれるのは嬉しい。でもな、ただ毎日働く。それだけであってほしくはないんだ」

「俺は別にいいけど」

「よくない。俺に依存し過ぎなんだ。自分の生きがいを持ってほしい」


聞きなれない言葉に、ハールドは首を傾げた。

「生きがい?」

「堅苦しい言い方をするなら“生きる意味”だな。お前がやりたいことを見つけて自分自身の人生に意義を見つけるんだ」

「はっ、生きる意味? 人生?」

ハールドは寝ころび皮剥ぎに背を向けた。

「俺はタルトクだぜ? そんなの自分でどうにかできるもんじゃないさ」



正直、皮剥ぎの言っていることの意味は全く分からない。分かる気もない。

でも。


生きる意味。この言葉はハールドの耳でいつまでもこだましていた。

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