ミーネ
司令官が録音データを待っている間の出来事。
「じゃあ皆さん、ここいらで外に出てみますか」
イチアールの一言で船内の掃除は終わった。やった、外に出れる! 窓から光が差し込んでこないから夜なんだろうけど、やっぱり暗くてもいいから外に出たい!
ランタンだけが照明になっている暗がりの中、イチアールの差し出したバケツにライオネルさん以外の全員の雑巾が回収される。ライオネルさんは掃除してないんだよね。ずっと寝っ転がってるだけ。まあ、今の状態じゃきついんだろうけど。
掃除を終えたガルフォンさんがライオネルさんを背負った。
イチアールが真っ先に床下の乗降口に走って行ったけどすぐに立ち止まった。
「イチアールどうした? 私はすぐに出たいのだが」
「いやこれ…ここから出たらやばいかもですね」
イチアールはクリスティナローラさんの方を見た。
「湖に突っ込んだのは船のどこの部分までか分かります?」
「操縦席と…ここも少しばかり」
「あーじゃあここ開けたら水が一気に入ってくる可能性ありますね。ここから出れませんね」
イチアールは操縦席から見て一番奥の座席(エイザクさんが座ってたとこ)の横にある裏口に向かった。これは乗降口と違って床に垂直な扉だった。
「ここから出ましょう」
「あ、ああ」
ランタンを持ったイチアールに誘導されるままに、みんなぞろぞろと裏口から出て行く。先頭がイチアール、次がガルフォンさんとライオネルさん、次にクリスティナローラさんで、それにエイザクさんが続く。
あたしはライオネルさん達の次に並んでたんだけど、裏口から出ようとしたその時にふと後ろを振り返って慌てて列から抜けたんだ。
床でハールドがうずくまっている。頭を抱えて背中を丸める、なんて彼にしてはとても珍しい体勢で。あたしは慌てて駆け寄った。
「あの…大丈夫?」
ハールドは顔を上げず返事もしなかった。よっぽど具合が悪いみたい。
一緒にいたライオネルさんがあれだから、ハールドは基地でクリスティナローラさん並みに戦ってくれてたのかもしれない。たくさん血を見たから流石に気分が悪くなった…なんてあたしじゃあるまいし違うよね。
「もしかして酔った? 乗り物酔いするタイプ?」
ハールドは返事をせずに頭を微かに動かした。しばらく待ってたら途切れ途切れの言葉を吐き出す。
「も…う…む…り」
「んー」
クリスティナローラさんの運転はすごくアクティブで辛かったけど、絶叫系がそんなに得意でもないあたしですら気分が悪くなったりはしてない。今は平気でピンピンしてるし。
「飛ぶ…前から…や、ばか…った…。俺は…もう…うちゅ…う船とか…乗らな…い」
そういう顔は汗だくで青かった。これ…ハールド本当に乗り物に弱いんだな。
「それに揺れるって…まるであの時の…」
それっきりハールドは喋らなくなってしまった。言いたくなさそうだったから、あたしもその先は促さない。沈黙が続いた。
「おふたりさん、どうしました?」
突然声がしたから慌てて顔を上げる。裏口からイチアールが顔をのぞかせている。ちょっと茶目っ気のある目でこっち見ていた。
「仲がよろしいのは結構ですが、こんな狭いところでいちゃついてないでみんなで朝焼けを待ちませんか?」
「あ…ちょっとハールドが酔っちゃったみたい」
「それはそれは…だったら尚更外の空気を吸った方がいいです」
「そう…する…」
ハールド立ち上がった。足元がふらついているのであたしが彼の手と背中を支えた。
「行ける?」
「あ…あ」
ハールドの身を心配しつつも、彼が立てるとわかったのであたしはもうすでに別のことを考えていた。
さっきの木星人の呟きとその視線の先にいる人物。
まさかね…。
嫌な予感が頭の中を支配していた。
ーー
裏口から一歩踏み出すとそこがちょうど外の地面だった。
ほのかな星の光に照らされた暗闇だったけど、なんとなく山があたし達の周りをぐるりと取り囲んでいるのがわかる。小鳥のさえずりなんかも聞こえてくる。
「おおー意外と木星って自然豊かなんだね」
「そうですよね、遠くの方から獣の唸り声なんかも聞こえますし」
イチアールがサラッと言うけどそれはだいぶ怖い。暗闇で襲われるのは本当に怖い。
後ろを見ると、宇宙船が若干斜めになって水に浸かっていた。この宇宙船は高床式で、乗降口は滑走のための車輪から1メートル上に作られているんだけど、車輪を着けた脚が全て水に沈んでしまっていた。あれじゃ乗降口も水面下だろうね。
「イチアールさん」
クリスティナローラさんが声をかけた。
「だいぶ離れたところに着陸したとはいえ、私達はまだ木星人の基地の星から出てはいませんわ」
確かに追手が来たらまずい。その場にいたハールド以外のみんながクリスティナローラさんを見た。
「一刻も早く脱出したいのですが、あなたにはエンジンの修理はできますの?」
「まあ程度にもよりますが、多分できます」
まさかの即答。まじか。
でも助かった。あたしは船の修理なんてできないし、乗り物オンチのハールドも多分無理。後の4人もできなかったかもしれないし。
「多分工具なんかは船に置いてあるはずなんでそれを使いますね」
「実に頼もしい! 流石はグリーン星の予備隊兵士だ!」
ライオネルさんが手を叩いた。いつのまにか地面に降りて自分で立っている。あれ、脚大丈夫なの? 一応止血はしてあるっぽいけど…。
「でも、飛べるようにするには時間がかかりますよ?」
「どれくらいなんだい?」
「短くて一週間」
イチアールの返事を聞いてみんなは腕を組んで考え込んだ。
「基地まで戻って船を調達するのは?」
「いやライオネルさん、そこまで行くのは遠すぎます。たとえ着いても疲労が溜まった状態では捕まりに行くようなものですよ」
「とすれば、修理が終わるまでここに滞在しなくちゃいけないわけで…」
ガルフォンさんがどこから拾ってきたのか、一本の棒で地面に文字を書き始めた。
「ちょっと整理するね。木星人の衛星で、木星人に見つからないように最低一週間過ごす。…住居、衣類、食料がどうしても必要になってくる。住居は…乗ってきた船しかないよな。衣類は湖で洗濯できるし、2着目は船内の布で賄えるかもね」
「食料なら、一応あたし達3人で見つけてるよ」
生憎と顎に負担のかかる雑穀だけど。
「どういうもの? どれくらい?」
「雑穀を固めたレーションです。このくらいの大きさのが」
エイザクさんが指で形を作った。
「18本」
「多分それ、そのまま食べても少ないし美味しくないだろ? 器具があればだけど、お湯に溶かしてお粥にすることになるよな? それで2食分になったとしても、7…いや木星人入れたら8人分を3食で7日間。最低168食必要なわけだから足りないよ」
「木星人に食事を? 敵に情けをかける必要がおありですか?」
クリスティナローラさんが首を傾げる。今木星人は船の中に取り残されている。縛られたままで。
「そもそもあれを生かしておく意味はないでしょうに」
「いや、色々聞き出さなきゃいけないでしょ」
エイザクさんが口を挟んだ。
「あいつなら木星人に見つからずにグリーン星に帰れるルートを知っているかもしれないでしょうが」
「! 確かにそうですわね」
クリスティナローラさんは得心がいったとばかりに頷いた。
「あの…僕の話に戻していい? もうすぐ終わるからさ」
遠慮がちにガルフォンさんが切り出す。みんなが鎮まるのを待って再び話し出した。
「食事が足りないとなれば、まず船の中を見て保存食を探すべきだ。で、それでもなかったら…気が進まないけど、この星で植物採取したり獣を狩って食べるとかかな。見つかったら怖いけどそれしかないんだよな」
「実に楽しそうだ!」
危機感のない大声。ライオネルさんだ。その顔はワクワクしている。
「そうと決まればすぐに向かおう!」
「いや、待ってよまず船を見てさ…え? 夕莉?」
ハッと我に帰る。
エイザクさん達が捕虜の話をしていたときに、一瞬、本当に一瞬だけ目の前が真っ暗になったのは覚えている。でいつの間にかあたしは地面にぺたんと座り込んでしまっていたらしい。
「お前も…酔ったのか?」
「いや、違うと思う、多分疲れてるだけ」
あたしは隣のハールドに頷いて見せた。
具合が悪いとかじゃない。それは本当。ただ…少し変なだけ。なんだか身体に違和感がある、その程度。
体が怠い、でいいんじゃないかな。
「別に疲れているなら着いてこなくて良い、後で見つけたものを話してやるからな」
ライオネルさんは早く木星人の星を探索したくて仕方がないようだった。遊園地に行く前の子供みたいに体が忙しなく揺れている。というか、本当に脚、大丈夫なの?
「まあ、私たちが船を担当するんでその間だけならいいんじゃないですか?」
イチアールが難色を示すガルフォンさんを見やった。
「滑走だけなら多分できるんで、明るくなる前にクリスティナローラさんに宇宙船を動かしてもらいます。船が木星人に見つからないよう山の中に隠して、それから衣類と食料を探しときます。待ち合わせは今いるここで」
「まあそういうことなら分かったよ。ライオネル、ほんとにちょっとだけだからな?」
「よし、そうと決まれば今度こそ出発だ!」
ランタンを奪ったライオネルさんがガルフォンさんの袖を引いて…走り出した! え…本当に脚、大丈夫なの?
2人の後ろからエイザクさんも着いていく。口に出さなかったけど、あの人も行きたかったのかな?
「イチアール! 後で船で何と何を見つけたか、ちゃんと僕に教えてね!」
暗闇の中、遠くからガルフォンさんの叫び声だけが聞こえてきた。
「ガルフォンさんはしっかりした方です。あっちはお任せしましょ」
イチアールは肩をすくめてクリスティナローラさんを見た。彼女も促されるまま再び船の中に入っていく。イチアールは裏口まで歩いてからこちらを見た。
「夕莉さん達は乗らないんですか?」
「ん…ごめんハールドを見てる」
「具合が悪いなら無理は禁物、待ってていいですよ」
裏口が閉まり、しばらくしてから船のエンジンがかかった。船は陸地に向かってバックし、完全に水から出ると山の方に滑走を始めた。
あたしとハールドは2人きりで原っぱに取り残された。
ーー
1時間くらい経ったかな。相変わらずハールドと2人きり。
そのハールドは30分前から寝てる。「気持ち悪いから起きてるのきつい」とか言って地べたに横になってそのまま起きてこない。
あたしはというとそんなハールドのそばにずっと座り続けている。夜うろつくのが怖いという理由の他にも、さっきの倦怠感がより一層酷くなってきて動くのが辛いわけで。
なんでかな。しばらく寝てないから? それとも色々やばい目にあって疲労が溜まっているからかな?
「でも、このまま座ってても退屈…」
流石に地面で寝るのは嫌だし、ちょっとだけ散歩してみようかな。気分転換になるし、新鮮な空気を吸えば怠いのも治るかもしれない。
あたしが立ち上がると、それまで眠っていたハールドの目が薄く開いた。
「ん…あいつら戻ってきた?」
「いや、散歩したいから立ち上がっただけだよ」
「散歩」
「遠くになんて行かないよ、怖いもん。この」
さっきの湖を指さす。
「湖の周りを一周するだけ」
「ん…」
ハールドは安心したのか再び目を瞑った。
「暗いから遠くに行くなよ」
それでまた寝息を立て始めた。
ーー
湖は広かった。元いた原っぱからじゃ遠近感が分からなかったけど、ものすごく広くて大きい。深さを想像したら震える。しかもこの湖の周りにはフェンスなんてない。普通の人の場合、どこまでが陸でどこからが湖かちゃんと見えないだろうから下手したら溺れるんじゃないかな。
歩いていると土が深くえぐれた場所があった。ここは、さっき宇宙船が突っ込んだところかな。なんだか落とし穴みたいで怖いね。
相変わらず体は怠いけど、動くのは楽しいし新鮮な空気を吸えるのもいい。木星人の星がこんな快適だなんて思わなかった。
これで今が夜じゃなくて真っ昼間だったら、あたりの景色がバッチリ見えて綺麗なのかな。
そんなことを考えながら立ち止まり、湖の周りの景色をグルリと見回す。山、山、山、山。うっすら木も見える…かな。
ここから一番近くに見える木は山々から少し離れたところにある。でかい。葉っぱの部分がこんもりとキノコの傘みたいに茂っている。広葉樹かな。
色的に実もなってるっぽい。どんなのかな、と目を凝らすと見えたものに既視感を覚えた。
「え…あれ…なんで…」
見えたものに困惑した。そしてパッと閃いた考えにも困惑した。そんなこと…ありうるの?
「え…なんで…」
「何がです?」
背後の声にびびって振り向く。悪戯っぽい目の女の子がそこにいた。
「イ、イチアール。脅かさないでよ」
「けけけけ、ドッキリならぬビックリ大成功ですね」
「いや、ここ湖だからさあ」
あたしは落ちずに済んだことに安心してため息をついた。
「で、何を見てたんですか?」
「あの木…見える?」
指さしたけど、イチアールは首を振った。
「何かあるのは分かりますけど木だとは分かりませんね」
あー、じゃあそこになってる実も分かんないか…。
実際に見て貰えばいいかな。あたしは木星人基地で手に入れた拳銃を手に取った。
「あのさ、今からあたしがあそこの木になってる実を撃ち落とすから、それが地面に落ちる前にキャッチしてこっちに持ち帰ってくれる?」
「100メートルはありますが」
イチアールの返事の前に誰かが口を挟んだ。イチアールより少し遠くから聞こえる声。クリスティナローラさんだ。
「100メートル以上離れたところから、実をダメにせずに撃ち落とすなど聞いたことがありませんわ。しかも視界も悪いというのに」
「いや面白そうです、やってみたい!」
イチアールはクリスティナローラさんの指摘をガン無視した。ノリが良いね。
「私は目は悪いですけど、耳はいいんで果物の落下音を聞いてちゃんと受け止めますよ!」
イチアールは木の方に向かってタッタッタっと軽快に走り出した。
しばらく待ってから、あたしは弾を再確認し木の方に向かって拳銃を構える。角度は…このくらいかな。狙った果物の位置を再確認しながら微調整し引き金を引いた。
盆地に銃声が響き渡る。まあ、それほど大きい音でもないけど。
果物を吊っていた枝が折れるのが見えた。流石、木星人の銃は射程距離が違うね。
「さてと、あとはイチアールの耳を信じるだけ」
あたしは拳銃を腰のベルトに戻した。これも木星人基地で拾ったものだ。
「この暗がりで命中したのか分かるのですか?」
「まあね」
あたしの視力は常人に比べてかなりいい。聴力とか嗅覚はそんなでもないけど。
クリスティナローラさんは呆気に取られた顔をした。
「夕莉さんは射撃がお得意ですの?」
「うん」
イチアールは知らないけど、6人の中では私の腕前はダントツだと思う。
「でも、基地では…」
「そりゃ人を撃つことに抵抗があるからだよ」
頭では致命傷じゃなくてもちゃんと狙わなきゃって分かってるのに引き金を引けない。戦場とか初めてだったし。
「ああいう現場で戦ったことなくてさ」
クリスティナローラさんは一瞬言葉を止めた。よく分からない、といった表情だ。
「射撃が得意なのに人を撃ったことはないと?」
「それって実弾の話?」
「ええ」
「それは…ないな」
クリスティナローラさんは、心底呆れた、という顔であたしを見た。
「そのような軟弱な有様で、どうしてこれまで生きてゆくことができたのですか?!」
「軟弱…まあ人間相手に戦うなんて地球じゃ滅多にないんだよね。戦闘なんてろくに学んだことないし」
「基礎すらも学んだことがないと?! まったく考えられませんわ!」
ああ…責められてるな、あたし。ちょっとここは話を変えようか。
「カルメヂでは戦闘訓練とかあるの? だとしたらすごい星なんだね」
「当たり前でございましょう。地球などという辺境の星と一緒にしないでくださいまし」
お、口調が変わった。得意になってる。さっきまでの非難がましい態度から一変してくれた。
「お待たせしました!」
突然の陽気な声に振り向く。そこにいたのは茶目っ気のある目つきの女の子…じゃなかった。
ウサギがいた。ふわふわの、ぬいぐるみみたいなウサギ。スピッツと同じような感じのウサギ。
ただし、毛並みはピンクじゃなかった。黄緑…かな。
「イチアール…でいいんだね?」
「なんか途中で変身解けちゃったみたいで〜」
そういう彼女の目はさっきの女の子と全く同じだった。
「キャッチしましたよ、ほら」
イチアールが差し出したのはずっしりと重い赤い実だった。受け取りしげしげと見る。スイカ並みに大きいけど、見た目はプルーンとかプラムに近い。傷みやすい感じ。
丸ごと一個を見るのは初めてでしかも前のはこんなに大きくなかった。けど、あたしの思っていたものに間違いない。
「イチアール、これ何か分かる?」
「ミーネ…ですかね? フェアーナでとれるやつはこんなに大きくないですけど」
「だよねえ…」
イチアールも困惑している。その顔はいつもより真剣で1秒たりともミーネから目を離していない。あたしと同じことを考えているっぽいな。
「ミーネとは?」
クリスティナローラさんは首を傾げている。実物を見ても「知らない」という顔。この人は覚えてないんだね…。
「いや、食べたじゃんフェアーナ国で」
「覚えがございませんわ」
「居酒屋で果物の盛り合わせ頼んだでしょ」
「そうでしたか」
「…。丸々一個ではなかったし、メロンみたいに切ってあったけどさ」
「本当に覚えがありませんが」
「…」
ーー
「これは…確かにミーネだね」
口の中で熟れた果実を咀嚼してガルフォンさんが頷く。
集合後、イチアールが船内で見つけたという果物ナイフでミーネを一人一人に切り分けて渡していた。
「甘い! 美味いな!」
さっきまで見つけたものの話をしたくてうずうずしていたライオネルさんは、今ではすっかり落ち着いてミーネを頬張っている。
「大事な話がある」って言って、無理矢理この人の冒険談?を遮ったからライオネルさんは数分前までぷんぷん怒ってたんだよね。
「流石とれたては違う!」
「美味しいよね。でも…これってさ、傷みやすいんじゃない?」
ガルフォンさんは遠慮がちに言った。この人の頭は食料問題でいっぱいなんだな。
「確かに生のままだと日持ちしないかもね。ま、それはおいおい考えるとしてちょっと聞いてほしいんだ」
みんなの視線があたしに集まる。自分から話を切り出すなんて滅多にないからちょっと緊張する。
「あの…ミーネってフェアーナ国で一回食べてるじゃん」
ガルフォンさんとライオネルさんがうんうんと頷く。
「あたしの記憶では、確かミーネってグリーン星の特産品だったと思うんだけど…」
「そんなこと誰か言ってました?」
エイザクさんが口を挟む。あの人だけミーネに全く手をつけていない。
「えっと居酒屋の人…」
言ってた、気がする。あたしは自分の記憶力には今ひとつ自信がない。
「いや、実際にそうなんですよ。ミーネはグリーン星でしかとれないんです」
助け舟のつもりか、イチアールがあたしの横で手を挙げた。
「まあ銀河外の話は知りませんが、少なくとも太陽系の気候ではとれないってことは証明されてます。多分空気の問題です」
「エイザク、食べないのならもらうぞ! 全く勿体無い!」
突如、ライオネルさんの緊張感のない声がその場に響いた。だけど誰も取り合わない。
「え…じゃあ」
あたし達の言いたいことを理解したのか、ガルフォンさんが恐る恐る言葉を続けた。
「ここってもしかして…木星じゃ、ない?」
「でしょうね」
イチアールが真剣な面持ちで呟く。
「グリーン星のどこか。そう考えるしかないでしょうね」




