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六人の異邦人  作者: 椎名れう
異邦人集結
6/107

異邦人四人 1

いよいよメインキャラクターの登場です。

「ほ、本日は、遠くから遥々グリーン星にお越しいただき、誠にありがとうございます」

フェアーナ国の大臣の一人が席から立ち上がり挨拶を述べた。

「こちらこそ、このような歓迎を受けたことを感謝している」

大臣たちに向かい合う国賓席に座っている四人の異邦人うち、一番左に座っている人物が四人を代表して礼を返した。長い濃いめの灰色の髪に同じく灰色の目をした、いかにもこんな場に慣れている青年である。歳は二十歳位だろうか。

(それにしてもまた…若いくせに尊大な)

まるで自分の家来に、労いの言葉をかけているようだ。

大臣席の後ろに控えるフェアーナ軍将官の中に紛れる、予備軍隊長ゲンネーは思わず苦笑した。



ここはフェアーナの首都ポリスにある貴賓館である。本来なら、国外からの使節などを歓迎するための場所だが、今回は宇宙会議で決定された役目を果たす四名を迎え入れるために使用されている。

その四名というのが、今国賓席に座っている異邦人達であった。男性三名。女性一名。



それにしても…。

なあ?

若すぎないか?

俺もそう思う。



国賓席に座る四人を見たときから、こんなヒソヒソ話が将官たちの間で交わされていた。口にこそ出さないが、おそらく大臣たちも同じことを考えているのだろう。

さっき挨拶を述べた大臣がいい例だ。いつもは雄弁な彼が出だしでつまずいた。よっぽど動揺していたのだろう。



彼らの前に座っている異邦人たちの平均年齢は、見たところ10代後半だった。



あれで、大丈夫なのかよ。みんな子供だぜ。

援助と言っても、四星からだけだし形式的なものだからな。

いい加減に選んだんじゃないのかね。

ひそひそ声は止まない。そろそろやめたほうがいいんじゃないかとゲンネーが思った時だった。



「どうも、私たち四人はあまり歓迎されてはおりませんのねえ」

突然、国賓席の左から二番目の席から声が上がった。その高いけれど威圧するような声に、会場のひそひそ声は一瞬で一掃された。

「さっきから我々を軽んじるような発言が丸聞こえですわ」

ウェーブの金髪の頭に花飾りのついた大きなつばの帽子を被ったその眉目秀麗な少女。端正な顔を勿体無いほど顰めている。宝石のような目も笑ってはいない。臆することなく淡い青い目で大臣たちを睨み据えている。

「私たちがそんなにあてになりませんかしら? 確かにまあ、他のお三方のことは私も存じ上げませんわ。でも私は一応戦闘はできますし、小型の宇宙船の操縦くらいならこなせます。ですから自分の身くらい自分で守れますわ。性格もしっかりしているつもりですから、どんな状況に陥っても銀河連盟の連絡先や、連絡事項を忘れたりはいたしません。私を軽んじることは祖星を軽んじること。それだけは決して許しはいたしません」

「しかしその…えっと」

大臣の一人が何か言いたげに立ち上がった。しかし、なかなか言葉が出てこない。

「失礼。名乗るのを忘れておりましたわ。私はクリスティナローラ・ライヨル。ライヨル伯爵家の三女です。カルメヂ星から参りました」

「で、ではライヨル嬢」

相手が伯爵令嬢と分かってどもりながらも、その大臣は彼女の服装に目を向けた。

「なんでしょうか」

「救援としてグリーン星にお越し下さったとのことでしたが、その服装ではどうも…」

「これのどこがおかしいんですの? まあ着替えなら、これと同じようなものはありますけど…」

クリスティナローラは心底不思議そうに聞き返した。



彼女が身につけているのは、膨らみの大きい水色のドレス。本来の用途は舞踏会と言ったところか。そんなわけでレース・宝石等の飾りの多さは言うに及ばず。一見しただけで高級そうなものだとわかる。他の三名が簡素な服装なだけに、彼女は余計に目立っていた。

「場合によっては戦闘が起こるかもしれません。その格好では、いささか動きづらいかと…」

「そんな風に見えるのですか」

クリスティナローラはラベンダー色の扇子で口元を隠して冷ややかに笑った。

「戦闘にお詳しい方なら、そうは見ないでしょうね。グリーン星の重鎮の方がさほどに見る目がないとは…」

「は、はあ…」

「私はこれで十分ですわ」

「どうやら」

今度は先程の灰色の髪の青年が立ち上がった。

「グリーン星の方々は個人戦に詳しくないようだな。これは余計に私たちがしっかりしなければならないな」

偉そうにいう口がついている顔は若干呆れた様子。そしてその目はそのままクリスティナローラに向けられる。それもたいそう忌々しげに。それでもどこか面白げに。

「席次の順に名乗るのが本来の礼儀であったはずだが。それに貴女は伯爵令嬢だが、こちらはそれより上なのだ。そこらへんはどうなのかな?」

「それは失礼いたしました。しかし、問われたのですからお答えしたまで。それにここはそちら様の星でも私の星でもありません。それぞれの身分は自星でしか通用しないものかと」

「フン」

トゲトゲした攻防戦はすぐに終わりを告げた。どうやら青年がクリスティナローラの言い分に納得させられたらしい。彼はすぐに大臣たちに向かい合った。



「みっともない小話をお聞かせして申し訳ない。私は天王星アレスファリタン領の第六王子・ライオネル・アレスファリタン。父王の命によりグリーン星の救援に参った。ライヨル嬢が言った程度のことは私もできる故、心配はご無用。後、私に気を使うこともない。どうやらライヨル嬢とやらの言ったことが正しいらしく、私の身分はこの星では通用しないらしいからな」

最後の一言は、クリスティナローラを横目で見ながら言い切った。そしてそのまま無言で席に座る。

何もかも言ってやった。質問などないだろうとその灰色の目は語っている。

(十分偉そうじゃないか。思い切り自分は王族だとアピールしているな)

ゲンネーはまたしても苦笑した。どうやらこの青年はいちいち自分を苦笑させてくれるようだ。

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