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六人の異邦人  作者: 椎名れう
異邦人の戦い〜フェアーナ国編〜
38/107

発覚と新たな疑問

久々の投稿になります♡

「だいぶたまったけどこれ、一体どうすんだ?」

大量の段ボールに箱詰めにされた被害報告用シートを眺めながら、ハールドはガルフォンに尋ねた。

仕事もひと段落して、今から昼休みという時分である。

「これは銀河連盟に送ってもらう。で、支援物資が届くのを待つわけ。明日、前回の町の分と合わせて送るって聞いたな」

「随分と手間のかかることだな」

それでは、木星人から攻撃されてもすぐには援助はこないわけだから。

「それにそんなちゃちな援助じゃ、グリーン星が完全には救われたことにならないわけだろ」

正直に言ったら、ガルフォンは困ったような顔をした。

「まあそうだけどね、これが僕らの仕事だからなぁ」

「ふん。まあどうでもいいけど」

ここはグリーン星。ハールドは部外者の異邦人。所詮自分には関係のない話だ。



ーー

昼食の時間になった。ハールドたちは五人で一つのテーブルを囲み、食事待ち。本当は自分だけ別の場所で食べたかったのだが、ライオネルに禁止された。

兵士たちは残らず広場の片隅に集まって食事を取っている。

(五人なんて嫌だな…まあ今は監視がないだけマシか)

なぜ五人が嫌なのか。それはハールド自身にもわからない。

「おうい、昼食はまだか!」

「はいはいただいま!」

地面に置かれた自動組み立て椅子にどっかりと座り込んだライオネルの前に、夕莉がスコーンと紅茶を置いた。

「ほほう、美味そうだな」

「でしょ! あ、あと良かったらこれもどうぞ。予備隊訓練所で作ってもらったんだ」

「綺麗なサンドイッチですこと」

「だよね! まだお代わりあるからたっぷり食べてねー。で、今度は兵隊さんたちか。行くよ、スピッツ!」

「はいよ!」

一通り昼食を置き終わると、ハールドが話しかける間もなく、夕莉は再びどこかに駆け出していった。



「昼食持ってきましたー!」

「待ってました!」

「こっちにくれ!」

「おおうまっ」

「まだおかわりありますからねー」

「ありがとうございます、夕莉さん!」

兵士に囲まれながら、ウサギ兵士と二人で昼食を配る夕莉。

(あいつ溶け込んでるな)

置いていかれたような、寂しいような、それでも微笑ましいような、そんな気持ちだ。

「料理するのが好きなんだと思うな」

ハールドの視線に気がついたのか、隣に座っているガルフォンが笑いながら言った。

「初日からずっとああなんだよ。エイザクも、元気が有り余りすぎて鬱陶しいってぼやいてたっけな」

「後ろのウサギは?」

不意に、まったく関係のない質問が口から出た。

「あ、あの薄ピンク色のウサギ? あれはゲンネーさんの配下のスピッツだよ。夕莉共々僕たちに協力してくれる」

「荷物…運びでか?」

「夕莉は基本、僕たちのアシスタントだからね。ただし木星人が現れたら、護衛の方に回るって本隊隊長が言ってたな」

(護衛…?)

一瞬、耳を疑った。

「あいつ…戦闘できるのか?」

「護衛するくらいならできるんじゃないか? もっとも、彼女が来てから木星人来ないから実際に戦ってるのは見たことないけど」

「…」



ハールドは宇宙船の中での戦いを思い出した。

ポケットに銃が入っているのが見えたけれど、なぜかそれを一度も使わなかった夕莉。彼女は殴られっぱなしで正直全然戦闘向きではなかった。闘志もなかった。ものすごく弱かった。

見ていて救いの手を差し伸べなければと思うほどに。


(隠れた能力でもあんのか? だけどあれじゃまず、戦闘における精神がなっとらんと思うけどな…)

「どうした? 何か不審な点でもあるのかい?」

「いや…あいつ本当に護衛できるのかなって思ってな」

「うーん。まあちょっと体格が小柄だからね。でもいざとなったら夕莉がいなくても、僕たちは自力で自分の身くらい守れると思うけど?」

「だろうな。第一俺は、年下に守ってもらうなんてごめんだ」

「年下?」

ガルフォンの隣に座っていたエイザクが、紅茶のカップから顔を上げた。

「それって夕莉さんのことですか?」

「?」

「だったら年下は間違いです。あの人は僕やあなたと同じ十六歳ですよ」

(なに?!)

驚いたのはハールドだけではなかった。

「夕莉が十六歳?!」

「本当ですの?」

「十歳は離れてると思っていたぞ!」

ガルフォンたち三人も食べる手を止めて、唖然とした顔でエイザクを見ている。



「本人がそう言ってたんだから、間違いないんじゃないですか?」

一人冷めた顔のエイザクは、ゆっくりと紅茶をすすった。

(本人が言ってたって…)

「…そんなことあったか?」

「個人的に教えてもらいました。といっても、半分怒鳴りつけられたようなものですけど」

「…」

「あのフリージー星人の物だとかいう宇宙船からの帰りの時でしたっけね」

すまし顔で言うエイザク。

その一言で、急にあの襲撃のことが頭の中を占めた。あれは自分の宇宙船だ。そう言いたい。けど、怒鳴ったところでどうせ誰も聞きやしない。ハールドは我慢した。



◇◇

「それにしても…フリージー星人とはなんなのであろうな」

他の四人より先に食べ終わったライオネルは、一人空を見上げてポツリとつぶやいた。ガルフォンが不思議そうに尋ねる。

「フリージー星人…なんでいきなり彼らのことを思い出したんだい?」

「いや、エイザクの言葉を聞いてあの日のことを思い出してな」

数日前、ライオネルはフェアーナ国の軍隊に同伴し、グリーン星製の真空レールを攻撃していた宇宙船に乗り込んだ。


木星人による被害ではなかったため特に仕事はしなかったが、代わりにライオネルはそこで奇妙なやり取りを目にしたのだ。

怪我を負ったらしい少年を取り囲み、フリージー星人だと責め立てる本隊隊長。彼に付き従い、少年を連行しようと手ぐすね引いて待ち構える兵士たち。

(真偽はどうであれ、ハールドがフリージー星人だという疑いがあるというだけで、なぜ彼をあそこまで執拗に責めたのであろうか…)



「あれからフリージー星のことについて本隊隊長に聞いてみたが、全然教えてはくれない。ガルフォン、お前もゲンネーに聞いたけれどはぐらかされたそうではないか」

「うん…まあそうだけど…」

「どうやら、フリージー星についてなんらかの秘密があるらしいな。ここはひとつ、軍以外の誰かにフリージー星について聞こうと思うのだが」

「いや…もう僕は必要ないと思う…」

「あの宇宙船の存在そのものが怪しいとは思わないか?」

「さあな…」

ガルフォンはどこか煮え切らない態度である。その目は、話が進むにつれて暗い表情になっていくハールドをちらちらと見ていた。

(そうか、ハールドはあの宇宙船に乗っていたな。奴らの手がかりを何か掴んでいるかもしれない)

彼はその時のことは何も話してはくれなかったし、ライオネルも詳しいことは知らない。ここで聞いておくいいチャンスだとライオネルは単純にそう思った。



「おい、ハール…」

「フリージー星人の話してるの?!」

突然の夕莉の乱入。

「…そうだが」

兵士たちに聞こえていないかとライオネルがハラハラしている横で、夕莉は椅子をテーブルに寄せながら真剣な表情で言った。

「ああ、あたしも実はちょっと気になってたんだよね。だってスピッツとかゲンネーさんとか、ラーシルさんに聞いても、誰も教えてくれないんだから」

「ほう」

「ここにいる誰かがそのことを知ってて、今その話をしてるのかと思ったんだけど」

「あ、なるほど」

言われてみれば、この中の誰かが知っているかもしれない。

「クリスティナローラ、知らないのか?」

「存じ上げませんわ」

「ガルフォンも…知らないのだな。ではハールドは?」

ハールドの顔が不機嫌そうにピクリと動いた。



「なんでもいい。知っていることがあるなら教えてほしい」

「何も知らんね」

そのぶっきらぼうな物言いに苛立ちを覚えた。

「ただ教えてくれと言ったのだ。なぜそのような態度をとる!」

「知らんものは知らんと言ったんだ。それに俺はもうその話はしたくない」

ガタンと音を立てて席を立ったハールドの手首を、ライオネルはむずと掴んだ。

「そのほう、怪しいぞ。もしかして何か知っているのか?」

「何にも知らないって。もういいだろ」

「よくない。さては何か隠しているな。説明しろ」

「なんでだよ」

なかなか折れないハールドは、もはや怪しい人間にしか見えなかった。

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