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六人の異邦人  作者: 椎名れう
異邦人の戦い〜フェアーナ国編〜
32/107

異邦人六人 1

「さあどうぞ、メイサ特製のお弁当です! 今日中に食べてくださいね!」

差し出された大きなバスケットには、ハムや野菜やフルーツやジャムを挟んだサンドイッチがたくさん。

「あ、ありがとうございます…」

あたしはとりあえず受け取った。

色とりどりでものすごく美味しそう。それは間違いない。だけどなあ…。

「あの…」

「なんでしょうか!」

相変わらず元気がいいメイサさん。

「明日の活動ではおにぎりを作っていただけますか?」

「おにぎり?」

聞き返された?

「おにぎり…何を握るんですか?」

ええええ?!



「夕莉ちゃん」

スピッツが服の端を引っ張ってくる。

「おにぎりって何?」

「え?!」

こっちも? 冗談でしょ?!

「おにぎりってほら、お米に梅干しとかいれて握ったやつ…」

ジェスチャーまでつけて説明したのに、二人ともに首をかしげられた。

「オコメ?」

「ウメボシ?」

「夕莉さんの星の郷土料理ですか?」

最後のはラーシルさん。この人もってことになると…。



「ひょっとして、この星にお米ってないんですか?」

「そういうモノは聞いたことがないですねー」

「私の国では、お米って主食なんですが…」

「うちはもっぱら小麦ですねー」

「そうそう。パンとかパスタとかね」

「じゃあうどんはあるの?」

「うどん? 何それ?」

「デザートの一種ですか?」

「デザートといえば、パンケーキもありますよ〜! 今度一緒に作りましょうね!」

ううううううう…。



道理でこの数日間、洋食しか出てこなかったわけだ。パンに、ステーキに、ポタージュスープに、アップルパイなどなど。最初は美味しいって思ってたけど、昨日あたりからなんだか物足りなくなったんだ。

そろそろ和食を食べたいとか思っちゃった。

だけどここには和食がないらしい…!

そういえば、真空レールの中でスピッツはお箸のことを知らなかったっけ…。

あああああ〜うどん食べたい、鰻食べたい、天ぷら食べたい〜! せめて鰹出汁くらいは飲ませてよ!

フォークとかスプーンじゃなくて、お箸を使って思いっきり食べたーい!



「メイサ、ご苦労だった。じゃあ、行きましょうか」

ゲンネーさんの一言で、あたしの心の叫びはストップさせられた。

「気をつけてくださいねー」

「帰ってきたら昨日の夜のゲーム、もう一回やりましょうね〜!」

ラーシルさんとメイサさんに見送られて、あたしたち三人は予備隊訓練所を出た。



「メイサは料理が大好きでしてね」

「はあ」

「今日も早く起きて作ってたんですよ」

カラフルな色のサンドイッチを見ながら、ゲンネーさんは楽しげに教えてくれる。

嬉しいですよ、いやほんと。

だけど、このままずっと和食がないって嫌だなあ。まあ、グリーン星にいる限りは食べられないからしょうがないけど…。

となると、あたしはいつまでここで仕事してたらいいんだろうな…。ちょっと地球に帰って、和食を食べに行ったりできないかな…。

グリーン星にきてまだ一週間もたってないのに、そんな不埒なことを考えているあたし。



今はもう、あたしにとっての初日活動日から数日が経っている。運のいいことにまだ木星人の襲撃はない。

貴賓館の近くの町の調査が完了したので、今日からは別の町で活動するらしい。しかも向こうに泊まり込みで。

「そこも木星人に攻撃された町ではあるけど、死亡者はそんなに出なかったんだ」

「へええ。いいねえ」

「ただ、建物がいくつか壊されたんだって」

ゲンネーさんが運転する、すり鉢型円盤に乗って空中をプカプカ浮きながら、あたしとスピッツはおしゃべり中。

お互いに一回も下の景色を見ようとしないのは、単純に怖いからだと思う。

「もうすぐ着きますよ」

ゲンネーさんの一言でものすごく安心した。



ーー

芝生の豊かな平地に円盤を停め、三人で集合場所に向かう。目指すはこの町の広場。スピッツが言っていたとおり、この町の住宅地はほとんど無事で人もいっぱいいる。ただ、ところどころ倒壊した建物が目立つばかりだ。

「ああ、あそこです」

ゲンネーさんが指差す方を見ると、見慣れた緑色の軍服の兵隊さんたちがすでに活動している。


「あ、いたいた! ライオネルさーん! クリスティナローラさーん! エイザクさーん!」

この数日、一緒に仕事をしてきた(ていうか、あたしはアシスタントかな?)異邦人の皆さん。

「やっときたか夕莉、スピッツ!」

「公衆の面前で何という大声を出すのかしら」

「相変わらず騒がしいですね、貴女は」

「いいじゃんか、別に!」

こんな挨拶にももう慣れっこだ。



「あれ? そう言えばガルフォンさんは?」

「ガルフォンは一足先に野営の支度を手伝っている」

「え? もう?!」

今はまだ朝っぱら。

「町外れに広い砂地があってな、当分寝泊まりはそこだ」

「ええっ? ホテルじゃないの?」

「ホテル?」

エイザクさんが呆れたように肩をすくめた。

「だっていっぱい見えるじゃん」

あたしが崩れていない建物のいくつかを指差すと、彼はため息をついた。

「なによ!」

「これからも僕たちは、調査をすることになるんですよ。こんな人口500人以上の町から、ほぼ無人と言っていい田舎までね」

「…」

「いつでもどこでもちゃんとした寝泊まりができるわけがないでしょうが?」

「まあ…それは」

「要は、今からテントの環境に慣れておくためだな」

「貴女にもそのくらいは耐えていただきますわ」



…この人たちは慣れてるんだろうなあ。

あたしは初キャンプで全然寝れなくて、今でもテントは敬遠してるっていうのに。

「あのお…」

「ん? どうしたスピッツ」

「キャンプって外ですよね…」

「無論だ」

当然と言うように頷くライオネルさんの前でスピッツはモジモジと手を動かした。

「ですよね…」

「テント苦手なの?」

「違うんだよ夕莉ちゃん、ただその…犬が出ないか心配でさ」

ああね…。

「犬が苦手なのか?」

「ハイまあ…」

「スピッツにそんな弱点があったなんて意外だなあ」

「あははは、正直で良いではないか!」

「そんなことよりさっさと仕事を再開しましょう」

クリスティナローラさんの一言でおしゃべりはピタリと止んだ。

ライオネルさんたちは仕事を始める。あたしとスピッツはアシスタントの仕事があるまで待機。



そう言えば、エイザクさんてちょっと前まで無口だったけど、最近は少し喋るようになったんだ。 …スピッツ以外とは。

それだけじゃなくて、ゲンネーさんとか兵隊さんが話に入って来ると、突然会話を打ち切ろうとする。

なぜ?



◇◇

「ったく、なんで俺がこんなことしなきゃいけねえんだよ」

ハールドはテント立てから引き揚げながら、ぶつぶつ文句を言った。

「そう言うなよ。君が手伝ってくれたおかげで助かったんだしさ」

隣を歩くのはガルフォン。二人の周りにはハールドを油断なく監視する兵士たち。

「こいつらがついてちゃ、鬱陶しくてしょうがない!」

「そりゃ君はまだ容疑者だもんな」

「まめまめしく働いてたら、グリーン星の俺を見る目が変わる? 今の監視はなんなんだ?!」

「すぐに監視がなくなるわけじゃないさ。しばらくは我慢しな」

なだめるガルフォンを見てから、ハールドは聞こえよがしにため息をついた。



ーー

ハールドとガルフォンは、彼らの仲間(・・)が待つ広場に戻ってきた。

「ロインドさん、ハールドさん、おかえりなさいませ」

「ライヨルさん、そっちはどうですか?」

「順調ですわ。さあ、これをどうぞ」

ガルフォンに一枚の被害まとめ用のシートとペンを、ハールドに大量のシートを入れたファイルを差し出すクリスティナローラ。


『この方は、どこの出身ですの? 銀河連盟には加盟していますの? …さようですか。ところで戦闘はおできになりますの? 私どもの足手まといにならないことをお願いいたしますわ』

『ハイハイ』



「ガルフォン、戻ったのか!」

「ああ」

「了解だ。おい、ハールド! 一枚終わったから、新しいシートを用意せよ!」

偉そうに命じるライオネル。


『出自などはどうでも良い。ただ、私たちと作業する気なら私の指示に従うように』

『俺はあんたの家来じゃない』

『家来扱いするわけではない。私がまとめ役なだけだ』



「ガルフォンさん、この花を保管しておくことをお勧めします」

「保管て…。なんで摘むといいんだい?」

「この花は腹痛に聞くらしいので」

ハールドが差し出したシートで花を包むエイザク。


『見るからに不健康そうですね。ちゃんと食事とってます?』

『あんたの知ったことか』

『せめて緑黄色野菜だけは摂っておくことを勧めますね』



「ハールド、紙一枚取ってくれ」

「…」

「どうも。しばらくしたら昼食だから、それまで頑張ってくれな」

笑顔でハールドから紙をもらうガルフォン。


『どうだい? 一緒に来る気になった?』

『いくら釈放を早められるかもしれないっても、あんたたちに付き従うなんてごめんだ』

『他にもメリットがあるよ』

『なにが』

『君の健康かな。君は全然外に出ないって聞いたけど』

『…監視付きで散歩して楽しいか?』

『だからって、閉じこもってるのは体に良くない。明日から少し遠出するから新鮮な空気を吸わないか? あと、来てくれたら、君にとってはちょっとしたサプライズにもなるかもな』


初めてガルフォンに誘いを受けてから今日までのやり取りを思い出し、ハールドはため息をついた。



「ハールドさんの戦闘力を知りたいですわ」

(またそれかよ)

「ライヨルさん、ハールドは念力使いなんですよ」

「まあ」

「それはなかなか頼もしいことではある」

「本当ですこと。それにしても…」

クリスティナローラは何か考え込むそぶりを見せた。

「もう一人の助っ人の方の戦闘力は如何なのかしら。あちらの方はフェアーナ国公認なので、ダメでも追い出すわけにはいかないけれど…」

(もう一人の助っ人?)

ハールドが首を傾げた時だった。



「みなさーん、飲み物どうですかあ!」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

今日のおやつは、草餅とみたらし団子と最中です♡

食べ過ぎですね…。

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