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六人の異邦人  作者: 椎名れう
異邦人の戦い〜フェアーナ国編〜
26/107

予備隊訓練所でお菓子作り

メイサとラーシル、再登場!

◻︎◻︎

「部屋ですが、スピッツとここを共同で使っていただいてもよろしいですか? ベッドは運ばせますので」

「はい!」

ゲンネーさんに聞かれてあたしは喜んで答えた。スピッツとなら心強い。横でスピッツも頷く。

「決まりですな。じゃあスピッツ、ちゃんとお世話をするんだぞ」

「はい」

ゲンネーさんはスピッツの部屋から出て自分の部屋に戻った。多分仕事があるんだろう。



これがざっと、二日前のやりとり。


ーー

「それにしても、あーあ」

あたしはスピッツのベッドに転がり込んで大欠伸をした。

「なんか色々あって疲れたねえ」

「うん」

「いざグリーン星についた時はドキドキしたよ! どんな人たちが住んでるんだろうって」

「うん」

「テレビで見た宇宙人みたいなのだったら怖いなとか思ったけど、なんか地球人と変わんないから安心した!」

「うん」

「でもよく考えたら、もうすでに宇宙船で兵士の人たちを見てるんだよね」

「うん」

「それにしても、ハールドはどうしているんだろうなあ」



◻︎◻︎

緑色の宇宙船がグリーン星に帰還してすぐ、あたしは何故かあまり元気のないゲンネーさんから、彼の元に厄介になることを教えてもらった。

「ハールドはどこに行くんですか?」

と聞くと、貴賓館だという。

「貴賓館?」

「国賓や国にとって重要な方をお迎えする館です。しばらくはそこで静養していただこうかと」

国賓ね…そう言えばガルフォンさんも国賓だったっけ。

「ハールドのお見舞いとか行ってもいいですか?」

「はい。あ、あとどこへ行っても構いませんが、ただお一人で行かれることのないようにして下さい」

そりゃそうだ。私はここでは異邦人。グリーン星については何一つ知らないんだし。うっかりマナーに反することをしたらやばいもんね。



ーー

「ここにこもってるの飽きたし、あたし明日にでもハールドに会いに行きたいな。あとガルフォンさんにも」

「うん」

「一人はダメってゲンネーさんが言うから、ついてきてくれる?」

「うん」

なんか変だ。スピッツはさっきから「うん」しか言わない。しかも床に座って三角座りし、うつむいたまま。そういや、真空レールとか潜入した宇宙船でも彼女はたまに変なそぶりを見せたっけ。グリーン星(ここ)についてからも元気がない。

「どっか具合でも悪いの?」

「…別に」

いやいや絶対何かあるだろ。

「本当になんでもないよ」

無理に笑顔を作って見せてくる。いや、嘘がバレバレだって。



スピッツが元気のない理由は分からないけど、どうやったら元気になってくれるか…。

そうだ、何か美味しいものでも作ったげよう。真空レールで彼女はお好み焼きを食べて初めて笑顔を取り戻したんだし。

「ちょっと一旦出るね」

一声かけて廊下に出る。そこでちょうど暇そうなウサギとぶつかった。

「あ、すみません」

「いえいえこちらこそ」

丁寧に返答してくれた黒ウサギ。えーっと、確かあたしが予備隊訓練所(ここ)に着いたときに出迎えてくれたような…。

「メイサ…さん?」

「あ、覚えておいてくださったんですね! 感激です!」

メイサさんはあたしの手を掴んでぶんぶん振り回した。…まだ終わりませんかあ〜。



「おいメイサ、そのくらいでやめとけ」

向こうから別のウサギが歩いてきた。今度は毛並みが白い。彼にも見覚えがある。

「うちの補佐官がすみませんねえ」

確かラーシルさんっていう名前のウサギは、メイサさんの腕を抑えてからあたしにぺこりと頭を下げた。

「何かメイサに御用でしたか?」

「あ、いえ。偶然あたしからぶつかっただけでして…」

「メイサ、お前また前見て歩いてなかったんだろ」

「そんなことない! 欠伸してただけだもん!」

「それでよそ見してたんだろうが」

喧嘩しちゃってるよ…。ていうか、二人ともぬいぐるみっぽいなあ…。



「あのお…」

「「はい!」」

二人同時にこっちを向いた。

「ここってキッチン…的なものあります?」

言いかけてから、しまったと思った。ここは予備隊訓練所。そんなのんびりしたものがあるわけないじゃんか。

「あーありますよ」

メイサさんが間延びした声を出した。え、あるの?!

「訓練所に?!」

ラーシルさんもにこにこ笑いながら説明してくれる。

「訓練とか仕事ばっかりじゃ、みんな疲れますから。兵士たちに食事を出す調理室とは別に、息抜きとして設置したんですよ」

「息抜き…」

「他にもジムとかプールとかあるんですよお!」

ここは娯楽施設か!

「ねえ、今から三人でプールで遊びましょうよお!」

「残念だけど、僕は今から薬物班の所に行くんだ。メイサはちゃんと夕莉さんをキッチンまで案内するんだぞ」

あ、ラーシルさんは仕事中だったのか。悪いことした。

「すいません、引き止めて」

「いえいえこちらこそ。メイサ、くれぐれも寄り道するなよ」

念を押してから、ラーシルさんは去って行った。



「じゃあ行きましょう!」

メイサさんはあたしの手を取って色とりどりの壁の横を通り抜け、ぐんぐん先に進んで行く。何気に足が速い。

「あ、ここですここ! ここがキッチンです!」

あっという間についた。

「キッチン」の中をのぞいてみると、まずその広さに驚いた。これがキッチン?! カフェの間違いじゃないの?!

部屋の隅に個人業のカフェで見るようなおしゃれな調理場があって、その前には沢山のテーブルと椅子。それらは全部木製! おまけにテーブルの上にいちいち小さい植物乗ってるし…。

「おしゃれなんですねえ…」

「雰囲気が大事なんですよ」

自慢気に言うメイサさんと一緒に調理場に入った。なんか綺麗すぎる。あたしなんかが使っていいのかな。

「好きな食材を使ってくださいねえ」

メイサさんは冷蔵庫をのぞいている。

「じゃあ…卵あります?」

「ありますよ、四つ」

「牛乳は?」

「瓶が一本」

「砂糖と小麦粉は?」

「砂糖、小麦粉…」

メイサさんは冷蔵庫を閉じて横の棚を見た。

「砂糖はありますけど、小麦粉はないですねえ」

「そうですか…」

クッキーを作ろうと思っていたけどやめた。



「どうしても必要なら一緒に買いに行きますけど?」

「あ、大丈夫です。予定変更します」

とりあえず卵と牛乳と砂糖を台の上に置く。あとは鍋と蒸し器かな…。

あたしが準備を始めると、メイサさんは調理場を抜けテーブルの一つについた。

「楽しみです、夕莉さんのお料理」

舌なめずりの音が聞こえるのは気のせいかな? あと、料理というかお菓子なんだけどな…。

あれ、そういえばメイサさんは仕事をしなくていいのかな?

そのことを言うと、メイサさんはこともなげに答えた。

「別に私に決まった仕事はないんです。補佐官ですから」

「へえ…」

「あと、うちの副隊長は優秀ですしねー」

安心して夕莉さんのお料理が食べられます、とメイサさんは笑った。

夕莉が何を作るのか、分かりますか?

次回、スピッツ視点の予定です。

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