感じた差異
最近、夜の投稿が多いです。
「手当は完了しました。出血多量で危ないところでしたが、命の危険はありません」
救護班の人は一礼し、気絶しているだけらしい迷彩服男を担いで物置を出ようとした。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます! ハールド、ハールド聞こえる? 手当済んだんだよ!」
あたしは嬉しくてハールドの頰をペチペチ叩いた。反応はない。まだ眠ってるみたいだ。
「あー良かった」
ハールドが助かったとたん、腰から力が抜けた。
「良かったね」
横に腰かけているガルフォンさんが微笑んだ。そういえば、この人にお礼言ってなかったな。
「あ、ありがとうございます…」
「いやいや、彼を助けられて良かったよ」
人の死ぬとこはもう見たくないんだ、と呟いてからガルフォンさんは慌ててごめんと言った。
「縁起でもないよな」
「い、いえ」
「ところで君はこの船に乗ってた人?」
「あ、いえ違います。スピッツの助っ人として来ました」
「スピッツ?」
ガルフォンさんは首を傾げた。スピッツのことを知らないのかな?
「その人はグリーン星の兵士?」
「はい、人じゃなくてウサギですけど…」
「へえ、そうなんだ。そういえば、グリーン星にはウサギの兵士がいたんだったな。じゃあ、ゲンネーさんの配下かな」
ゲンネーさん…さっきスピッツを連れて行った大きなウサギさんかな。
え、…ちょっと待った。
「ひょっとしてガルフォンさんってグリーン星人じゃないんですか?!」
「うん、そうだよ。僕は冥王星から来たんだ。聞いてないかな、グリーン星への援助のこと」
「冥王星…」
そんな身近な星の人がここにいるなんて超驚きだけど、それより援助ってことは…。
「木星人に狙われかけてるグリーン星の被害を銀河連盟に報告する…援助の人」
「うんそうだよ、僕はその一人。仕事、やりがいがあって楽しいんだ」
えええええええー!
あの少なすぎる援助をしに来た人…!
ガルフォンさんは構わず続けた。
「ついでに言うとさっきのエイザクも僕と同じさ。彼はエーディス星から来たんだって」
「はあ…」
「あいつがぶっきらぼうな態度で済まなかったね。国賓仲間の僕にも、積極的にコミュニケーションとろうとしないやつなんだ」
「はあ」
「何か理由とかあるのかもね。まあこちらもそこを聞くことはしないけどさ」
「はあ」
「けどね、もうすでに一日一緒に仕事をしているけど悪いやつじゃないのは分かるんだ」
ガルフォンさんがペラペラ喋ってる横で、あたしは複雑な心境に陥っていた。
なんでかって言うと、まずはガルフォンさんとさっきの青制服・エイザクさんとやらが同じ援助グループだったってこと。
あんな無神経男と無茶苦茶いい人っぽいガルフォンさんが、同じ仕事をしてる仲間なんてなあ…。なんらかの商売敵ならともかく、協力しあう仲なんて信じられない。ま、そこはガルフォンさんのコミュニケーション能力の力なのかもしれないけど。
もう一つはガルフォンさんがこの仕事を、何のためらいもなく「楽しい」と言ったこと。
地球に来た時のスピッツの縋るような顔を思い出した。「銀河連盟からの支援が少ない」とも言ってたっけ。あの支援はスピッツだけでなくて、グリーン星の人たちにとってもかなり不満なんじゃないのかなあ。
あの時のスピッツの真剣そうな言葉とガルフォンさんの楽しそうな感想。
助けてもらう側と助ける側との差異。
なんか…助っ人としてきた身としてはガルフォンさんの言葉は肯定しにくいなあ…。
「どうかしたのかい?」
気がつくと、ガルフォンさんが心配そうにあたしの顔を覗き込んでいた。どうやらあたしは、しばらくだんまりを続けていたらしい。
「あ、いえなんでも」
「そうか? しんどかったら救急班を呼ぶけど…」
本気であたしのことを心配してくれるガルフォンさん。いい人だ。とてもじゃないけどさっき考えてたことを正直に言えたもんじゃない。
「本当に大丈夫です」
「そんならいいけど…」
ガルフォンさんがふうと一息ついた時だった。
「失礼!」
突然物置のドアが開いて、口髭を生やした兵隊さんが入ってきた。
いや、兵隊さんといってもこれまでに見てきたようなのとは違う。軍服の色は緑色だけどなんか彼らより立派だし、胸に勲章とかつけてるし…うーん、重役っぽいかな? それになんだか部下みたいな人をたくさん連れている。その中にスピッツもいた。
「貴女が地球人の夕莉さんでよろしいか?」
野太い声に、スピッツに手を振ろうとして慌ててやめる。
「あ、ハイ」
「ふむう」
『重役』さんは鋭い目つきであたしの頭のてっぺんから足のつま先をジロジロ見た。なんか、身体検査されてるみたいで落ち着かない。
「あんたは本物の地球人でしょうな」
一通り見た挙句、『重役』さんはこんな質問を投げかけてきた。
「え?」
いやいや当たり前じゃん。今更何を。
「この船に乗っておったそうじゃないか」
彼の目が油断なくこちらを見ている。こっちの言い分なんて聞いてくれそうにない。なんか怖いな。
「まさか、フリージー星人ではあるまいな」
「隊長、間違いありません。夕莉さんは私の部下が連れてきた地球人ですよ」
『重役』さんの後ろから大きなウサギさんが顔を出した。この人はさっき、スピッツを叱りに行ったウサギの…ゲンネーさん?
「一緒にこの船に潜入したそうです」
「兵士が一般人と潜入? そんなのありえん。第一、ウサギの言うことなど当てにならん」
「現にそうだったのですから」
「…ふん、しかし一般人を捜査に巻き込むなどあってはならんこ…」
「わ、私が手伝うって言ったんです! だって助っ人ですから!」
スピッツに矛先が向けられる前に、あたしは発言した。
「あんたが?」
『重役』さん改め隊長さんは意外そうにあたしを見た。
「そうです! だって助っ人ですもの! …でも実は、助っ人ってどんなことするのかよく分かってないんです。今回の仕事が助っ人向きでなかったなら、これを機にグリーン星ではどのような役目を果たせば良いのか教えてください!」
一瞬、その場が固まった。
隊長さんはゲンネーさんを見て、ゲンネーさんはゆっくりとスピッツを見た。その視線の先ではスピッツが青ざめている。
うーん、やっぱり一般人が助っ人じゃまずいんだろうなあ。後ろを振り返ると、ガルフォンさんもあたしと同様首を傾げている。
しばらくしてゲンネーさんが恐る恐る口を開いた。
「助っ人…ですか」
「そうですけど…」
「ああ分かった!」
突然ガルフォンさんが叫んだ。一斉に注目が彼に集まる。
「要するに、アレですね。まだグリーン星では夕莉さんに具体的に何をさせるか決まってはいないんですね!」
ああ、なるほど! それでか!
続いて隊長が咳払いをした。
「ゴホン、その通りなのだ実は」
「中途半端に夕莉さんをお迎えして申し訳ないことです」
ゲンネーさんも頭を下げてくれる。別にそこまでしなくても良いのになあ。
スピッツはというと、なんだか一人複雑そうな顔をしていた。せっかく助っ人を連れて帰ってきたのに、ちゃんと迎える準備ができてないから怒ってるのかな。
「いえいえ、大したことないですよ」
思いっきりスピッツに聞こえるように言ったのに、彼女の顔は晴れなかった。
早くライオネルとクリスティナローラを描きたいです。




