ヤンキー×オタク
「ヤンキーがオタクでなにが悪い!!」を目に止めて頂きありがとうございます。
初めて書く小説なので、色々苦労や間違いだらけです。
何かと読みにくかったり、分かりにくい表現があるかもしれませんが、是非最後まで読んで下さい。
また、ご感想や評価を頂けるとありがたいです。
劇的な人生とは何か
薔薇色の人生とは何か
「俺の人生は劇的だったぞ!」
俺の親父はよくそう言っていた
「母さんと出会ってからは、常に人生薔薇色だった。そお!まさに俺と母さんは劇的な出会いをし、劇的な人生を共に歩んだんだ!」
親父はしつこいくらいに、その話を俺達に聞かせていた。
「劇的な人生ってなんだよ?」俺が聞くと、親父は決まって言う
「お前もいつかわかる日がくるさ」
その曖昧な返答にいつも俺はイライラさせられていた
‐いつかっていつだよ‐
‐どうしたら劇的な人生だと決まるんだよ‐
数年後、俺の人生を大きく変える出来事が起きた
親父とお袋が交通事故で死んだ
原因は、衝突したトラックの運転手の居眠り運転だった
俺と弟と妹は、両親を失った
‐なぁ親父。これでも自分の人生が劇的だったって思えるのか‐
‐死んじまっても幸せだったって思えるのか‐
‐残された俺達はどうすれば良いんだ‐
‐これじゃむしろ、悲劇的なんじゃないか‐
俺は、自分が死ぬ時に劇的な人生だったと思えるのだろうか
大抵の人間は寝てるであろう時刻。
町にある目立たない、普段誰も近寄らないような廃工場。
普通に歩いていても特に気に止めないような場所。
しかしこの場所は、この町に住む高校生の中ではあまり近寄りたくない場所でもある。
お化けが出るとか、そういう話ではない。
‐いや、一度だけそんな噂を聞いたような事があるような……‐
とにかく、みんなの認識としてはそういう物ではない。
簡単に言うと、ヤンキーの溜まり場なのである。
夜になると、この場所には何十人ものヤンキーと呼ばれる輩が集まり、何をするわけでもなくただ騒いでいる。
しかし、月に何度かイベントめいたものが行われるのである。
「虎狩り」(とらがり)
そう呼ばれるイベントである。
誰が始めたでもでもないそのイベントとは、ある一人の男と喧嘩をしたい者が挑戦を叩き込むという物だ。
63戦無敗を誇るその男は、この廃工場に集まる町のヤンキーと呼ばれる男達のトップ。つまり、頭である。
その男こそが俺なのだ。
そして今現在も、ゴリラの様な大男と対峙しているのである。
大男は、大木の様な両腕に龍の入れ墨を入れていて、見るからに柄の悪い男である。
‐ジャイアンが本格的に非行に走ったら、きっとこうなるのだろう‐
龍の入れ墨の入った両腕をぶんぶんと振り回し鼻息を荒くしながら、戦いのゴングが鳴るのを今か今かと痺れを切らして待っている。
「おい、キングタイガーだかリトルタイガーだか知らねぇが、泣き入れんなら今の内だぞ?俺は喧嘩が始まったら、誰が止めに入ろうが相手が動けなくなるまで止まんねぇからな!」
さも負ける事なんか考えてもいないというような様子で、俺に叫んでいる。
‐既に止まる気なんかないだろ‐
「別に構わねぇよ。それより、やるならさっさと始めないか?この後予定があんだよ」
俺の余裕そうな言葉にさすがに頭にきたらしく、大男は余計鼻息を荒くしながら「おい!いつになったら始めんだ!」と、レフェリー役の男に怒鳴り散らしている。
レフェリー役の男が「わかったわかった」と言いながら、両手を挙げて「じゃあ、お互い準備は良いな?そっちのゴリラ君は聞くまでも無さそうだが、くぅも良いか?」
レフェリー役の男が俺に聞いてくる。
゛くぅ゛と言うのは俺の事である。
茶宮琥雅というのが俺の本名で、さっきジャイアンが呼んでいたキングタイガーというのは、言わば通り名である。
琥雅というのは完全に当て字であり、干支が豪の虎だから、王に虎と付け、琥雅。「こうが」よりも「くうが」の方がかっこいいからという、親のセンスだ。
そして「琥」を文字って、キングタイガーなる通り名になったのである。
つまり、キングタイガーに挑戦を叩き込む。つまり、虎を倒すから「虎狩り」というイベント名になったというわけだ。
ちなみに、俺を゛くぅ゛と呼んだレフェリー役の男は、俺の幼馴染みである「篠宮孝司」である。
「誰がゴリラだ!てめぇからぶっ殺してやろうか!」
ジャイアンが喚き散らしている。
「良いからさっさと始めてくれ」
俺が言うと、了解了解と言いながら右手を高く挙げ「そんじゃ始めるが、試合が始まったら基本的に相手がギブアップするか、戦闘不能になるまで終わらないからな?誰も止めには入らない」
「そんなんわかってる!どのみち俺は途中で止まるつもりなんかさらさらねぇよ!」
大男は既に突っ込む気満々の体勢で叫ぶ。
「よし、それじゃ始めるぞ」そう言い孝司が右手を降り下ろす。
「始め!!」
「うぉぉぉぉおおお!」
大男がラグビー選手よろしくの勢いで、俺を目掛け突っ込んでくる。
俺はそれを躱すと、大男はその巨躯に似合わぬ素早さで瞬時に体勢を変え、右拳を叩き付けてきた。
それも躱すと、今度は瞬時に左蹴りを放ってくる。
いや、放とうとしていたが俺が止めた。
俺は右足で大男の膝を押さえ付け、足が上がらない様にブロックしたのだ。そして、そのまま大男の膝を踏み台にしてジャンプし、大男の左こめかみに回し蹴りを叩き込んだ。
グラッ
大男はそのまま倒れ込み泡を吹いて失神した。
いくら体格が良いとはいえ、こめかみに思い切り良いのをもらえば三半規管が揺すぶられ立ってはいられないだろうとは思ったが、まさか一撃で失神するとは……
「おい、あの巌がたったの一発で失神するなんて」
「やべぇ、さすがキングタイガー」
「あの巌相手じゃさすがに今回は危ないと思ったのに……」
「俺は最初からタイガーが勝つと思ってたぜ」
外野がざわつく。そもそもこいつらは、これが見たくてわざわざこんな夜中に集まってきているのだ。
「おい、もう終りで良いんだろ?孝司」
俺が孝司に声を掛けると「あぁ、お疲れさん。今回もお前の圧勝だな」
ニヤニヤしながら肩を叩いてくる。
‐ちっ、わかってたくせに‐
「じゃ、俺は帰るぞ」
そう言って俺が去ろうとした背中に「なんだ?またアニメか?」
孝司が小馬鹿にした様子で聞いてくる。
「うるせぇ、関係ねぇだろ」
言いながら俺はさっさとその場を後にする。
「なぁ、これで64連覇だぜ。本当に人間かよあいつ」
「しかも終わるといつもさっさと帰っちまうしな」
残った外野達、もといヤンキー達が騒ぎだす。
「いったい何時になったらタイガーを倒せる奴が現れるんだよ」
「何か弱点とかねぇのかな?」
「おい孝司、お前タイガーの幼馴染みだろ?何か弱点とか知らねぇのかよ」
聞かれた孝司は頭をポリポリ掻きながら、不敵な笑みを浮かべ「いやぁ、弱点かどうかはわかんねぇけど」
「なんだよ。何かあるなら教えてくれよ」
総勢3・40人のヤンキー達が孝司に注目する。
「…………………あいつ、ものすごいオタクだぜ」
一瞬辺り全体が静まり返る。
「「「…………………………………………なにぃ~~~~~~~~!!」」」