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プロローグ

「忌まわしき時から100年経った……」


男は薄暗い部屋に設置された気味の悪い祭壇を見上げる。

灯された蝋燭は青く燈っている。

火に照らされた男の顔は初老を過ぎた辺りだろうか周りと同じように不気味な雰囲気を持っていた。


「だがまだだ……勝海かつみに封じられた地脈はまだ思い通りにはいかぬ……」


男は懐から銀の短刀を取り出し、祭壇の中央の人形に突き刺した。

すると、人形はまるで意思を与えられたかのように目を開いた……

その姿は何ら人間と変わらない、精巧に作られたドールだ。


「頼んだぞ……我が娘よ……手回しは済んでおる……あとは」


「大丈夫です、お父様」


人形はニッコリと微笑みかけた。

男は安心したように笑うと、近くの椅子に腰かけた。


「それでは行って参りますね」


「ああ」


人形は闇へと消えていった。





――――1923年。関東を襲った大地震があった、死者・行方不明者を十万人以上を出した大地震……あれから100年近くたった現在……2020年、安定せぬ経済、私利私欲に塗れた政治、反発し合う国民……そんな日本を脅かす100年前と同じ規模であると予測される地震が近づいていることを計測した気象庁はとある財団に協力を依頼する……



「それで、なんとかなりませんかね?」


その筋の事務所と言っても納得できそうな大げさな事務所で椅子にふんぞり返っている男にびっしりとスーツを着こなし眼鏡を掛けた男が頭を下げている……現気象庁長官を務める、高村と言う男だ。

彼がこの財団……魔術財団と言う胡散臭い場所に足を運んだのには理由があった。

高村の祖父は同じ気象庁の長官を昔務めていた、その祖父が死ぬまで呪いのように呟き続けた遺言があった……


「もし次大災害の予測があったら必ず財団に相談をしろ、絶対だなにがあっても頼れ」


それが祖父の言葉だった……だが気象庁の面々はそんな祖父の戯言等相手にしていなかった。

そもそも財団の存在など議員の一部しかしらないほどの組織だったし、知っていたとしてもそんな魔術なんて怪しいものに頼ることなどありえなかった。

なんど大災害の予測があろうが財団を頼ることなど一度も……

しかし、災害の予測が出るたびにその予測を裏切りそれ以上の大災害が人々に降り注いだ。

いつからか国民は気象庁を信じなくなり、このままでは人々は混乱し事態の集束が出来なくなってしまうと考えた上層部から命令され、高村はこの場所に足を運んだのだが……


「いやーね、うちの上司も来た時はそれ相応の態度で示せって言われてるんですけどねぇ」


ふんぞり返った男はつるつるの頭を光らせながら高村を睨む。

この男は北原信吾きたはらしんご魔術財団のNo2を務める男だ、こんななりをしているがとても義理堅く、他の財団人から信頼されてる名実ともにNo2なのだ。

そんな男、北原がこんな態度に出ているのかは上記したが長年のお互いのいざこざのせいである。

善意で協力する、そんなのは信用できない……でも危ないから手を貸せ、都合のいい判断である。

ただ、今は留守にしているのだが財団の代表である人物は相手がそれ相応の態度をとれば快く協力しろと北原に命令している。

しかし、納得できない北原はこんな態度で必要以上の誠意を見せろと言っているのだ。


「確かに都合のいいお願いかもしれないですが……」


高村は頭を深く下げたまま、北原に頼みこむ……

北原も、彼らがきた最初は煮え切らないものがあったが彼らも所詮、お上の手足なのだ危なくなれば責任を押し付けられて斬られるだけ……


「わあかった、引き受けるよもともとそのために活動してるようなものだしな」


「ありがとうございます」


「じゃあ、あとは任せな。そっちには専門の奴が顔を出すと思うけど協力してくれや」


そう言って北原はしっかりと座りなおし、高村らが部屋から出て行くのを見送った。


「今度こそ当たりであることを祈るぜ」


北原は雨の降り続く外を眺めた。

そしてそんな北原を眺める影が遥か遠くのビル群の屋上にいた。


「計画に始動……作戦開始ミッションスタートです。ボス」


頭に付けた小型インカムに向かって影は話しかけた。

黒いレインコートで姿は分からないが、外見から歳いかぬ少女であることは見て取れた。

日本人ではないのか髪の毛は薄青い色をしており、顔立ちも日本離れしていた。


『あー分かった。ったく信吾の奴どんだけ時間かけてんだ……』


「同感……どうせ、腹が立って時間かけたにきまってる」


『まあ、いいさ後は計画通りに頼む』


了解ラジャ


そう言って通信が切れた、少女はかなりの高さのビルを何のためらいもなく飛びおりネオンの中へと消えていった。





「ほーら遅れるな新人」


「待ってくれそんな焦らせないで」


スーツ姿の男女が長い廊下を歩いていた。

親子にしては歳が近い気がする……

女性の方は綺麗な長い黒髪を揺らし、完璧に近いプロポーションをしている。

顔立ちも整っており、モデルかと言われたら納得してしまうであろう。

男の方はまだまだ垢抜けない容姿でスーツもきているというよりは着られていると言った感じだ。

若干濃いめの肌をしているが日焼けと言った感じだろうか、髪は短くあまり清潔感を感じない。

しかも緊張しているのか、汗もかいておりそれも相まって外見は綺麗とは言えない。


「ほら入れよ」


女性に押され、扉を開けて中にはいる。

中には数人のスーツを来た人間が机に向かって作業をしていた。


「諸君おはよ!」


女性が大きな声で男の後ろから挨拶する。

作業をしていた数人は手を止めて渋々と言った感じで扉の方をみる。


「紹介するよ、彼がここの新メンバー……ほら自分で自己紹介しろ」


「あ、はい。僕は榊良太さかきりょうた……です。よろしく……です」


榊が自己紹介を終えるとドッと笑いが起こる。


「おいおいボスもっとまともな人間やとえねーのか」


一人の男が笑いながら女性にそういう、他の人間も笑いながら各々なにかを言っている。


「おいおい、私の息子に酷い言いようじゃねーか」


一瞬で静まり返る……いや凍りついたと言った方が正しいか。


「なんだ、お前ら聞いてなかったけ?」


「ってかボスが言ってないの間違いでしょ……」


どこからかそんな声が聞こえた。


「いやーすまんすまん……」


ボスと呼ばれている女性の名前は榊明子さかきあきここの魔術財団の実質のNo1を務める、もともとはこの勝海に代々住む領家の一族だったが廃れた一族の復興とお家が守ってきた地脈を守るために財団を作り上げた。

もともと家から追い出された身だったが一族全員が亡くなったのを機に家を継いだ。それまでは中東で傭兵をしており腕はそれなりだったらしい……

そんな中、戦争難民として保護したのが良太だった。

良太は、幼いながらもそれなりに戦闘をこなしておりどこかの少年兵だと思われたのだが記憶がなく渋々、明子が養子として保護したのだ。


「ってな訳でこれからよろしく頼むわ!康則、こいつの教育はお前に任せる」


「俺ッすか?無理ですよ」


「いいからやれ!じゃ、私は別の仕事があるから」


そう言って明子早足で早々に立ち去ってしまった。


「はあ、まったく……」


康則はちらっと良太を見る。

まあ、たまには違う仕事もいいかと思った……


「それで……お前この仕事内容どんくらいきいてる?」


「いや……全然聞いてない。です」


「そっか……ボスだもんな……まあいいや一緒に外回り行こうぜ」


康則は良太を連れて外へ出た。

この不幸な男の名前は佐々木康則ささきやすのり財団立ち上げ当初から居る一人で不器用だが正義感が強く財団幹部の一人で明子の学生時代からの友人でもある。なにかと雑用を押し付けられがちだがそれも良いかと思っている。体つきはごつく背も高い昔は柔道をしていたが今はそれも引退して財団業務の細かいフォローをしている。

世話焼きお兄さん、なおパソコン作業は苦手。


「さーて、外回りなんていってでてきたけど自己紹介しようか……俺は佐々木康則、佐々木って呼んでくれや。で坊主は?」


「榊良太です」


「そうかそうか、緊張はとけたか?」


「え、あっはい!」


なんだ良い子じゃねーか、ボスに育てられたんじゃどんなこになったか心配になっちまったよ。と康則は思ったが口には出さなかった。


「ってことで財団の話なんだが……正直所属してる俺ですら胡散臭いとしか言いようがない!この土地……まあ強いては世界の気脈と言われる流れを管理し守るのが俺らだ、大雑把にいえばこれぐらいしか説明しようがない……で俺らの仕事内容なんだが、まあなんていうか……風水師兼任建築って感じか、あとは土地の区画管理とか……まあ本業は別にあるがなそれは今はいい。とにかく、気脈の流れを守護するのが俺らだそのために不動産や建築会社に話しを通したり、国の事業開発のアドバイスをしたりだな」


「は、はい」


「まあ、すぐに理解しろってのは無理だから徐々になれてきゃいいよ。多分ボスの事だからこっち方面じゃないことは分かるし。まあ言われたことをやっとけばいいよ」


「はい、分かりました佐々木さん」


「さて……早速仕事だ」


康則は、人ごみの中で突然走りだした、良太も後に続く。

ビルとビルの間に路地に入り込む……すると突然路地の入口が黒いものに覆われる。


「な、なんですかこれ……」


「見とけ、これが俺達のもう一つの仕事だ」


目の前にはフードを深くかぶった人間が立っておりその人間は影のかかった顔からこちらを睨んでいるように見える。


「憑依・天手力男神アメノタヂカラオ


康則の体が一回り大きくなる。

それと同じようにフードの人物もフードを脱ぎ去る、すると妖怪のようなトカゲの化け物が現れた。


「しねえ!」


化け物はとんでもない速度で康則に飛びかかった。


「上等だ!おらぁ!」


康則は正面から化け物を受け止めると、力づくで持ち上げると壁に思いっきり叩きつけた。

それでも化け物は飛びかかってくる。


「いいかげんにしろやあああ」


康則は大声を上げながら思いっきり殴り飛ばした。


「よしきたー」


ガッツポーズをする康則。

しかし、路地の入り口側にも同じような化け物が現れた。


「佐々木さんやっていいんですよね」


良太は落ち着いた口調で淡々と言う、康則が「ああ……」と言うと。


「魔術強化レベルⅢ」


良太は目にもとまらぬ速度で化け物を蹴り飛ばす。

そして隠し持っていたナイフを化け物の首元に刺す。

苦しそうにもがく化け物。


「魔術付与・爆」


そうつぶやいて二本目のナイフを化け物に刺す。

するとナイフが破裂して化け物の肉体を削ぎ取る。

化け物はどす黒い血を流しながらその場に伏した。


「ほほう、強化系かボスらしい教育だ」


「母さん……いやボスにはこうやって育てられましたから」


「頼もしいもんだ」


「佐々木さん」


「ああそうだ」


突然現れた化け物は、地脈に流れる霊気を餌とする妖魔。

普段は人の姿に化けているのだが本体はトカゲのような二足歩行の化け物で力がとても強く、魔法抵抗も高いため対処はこの二人のように肉弾戦闘や武器による攻撃が友好である。


「さて、それだけ能力と知識があるなら俺と同じ部署でいいな」


「佐々木さんと?」


「そうだ、俺の部署は見回りと戦闘専門だ。その代わりそれ以外は暇だから事務処理もあるぞ。これからよろしくな」


「はい、こちらこそ……」


戦闘しているときは人が変るんだなと……康則は思った。


★ステータス紹介

S……天才

A……才能

B……秀でている

C……一般

D……劣っている


【佐々木康則】

ステータス:筋力A耐久B魔力C敏捷C

好物:酒

特技:憑依


【榊良太】

ステータス:筋力C耐久C魔力A+敏捷A

好物:ボトルシップ

特技:魔力強化


【妖魔】

ステータス:筋力C耐久A魔力D敏捷B

好物:霊気

特殊:魔法に対する高い抵抗力。

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