表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊魔術師の何が悪い?  作者: 礼賛
9/26

焼肉パーティー!

また遅くなりました…

申し訳ないです。


続きも頑張って書いていきたいと思いますので、今後もよろしくお願いします

 火を熾してそこらへんの枝に肉を刺して焼くだけ、そう考えて始めた焼肉の罠だったが、前提から間違えていたかもしれない。


 第一の間違えは自分の精神面だ。

 考えてみれば「死霊」属性の判定が下った時から、ほとんど肉を口にしたことが無かった。肉は高価である為に、役に立たない属性をもっている子どもに与えないとでも言うように、兄姉妹は食べることを許されたが、こっちは年に1度炭化寸前の肉の欠片を口にするだけだった。

 属性が分かるまでは普通に肉を食べていたからこそ、肉の味はよく分かっている。これで肉の味も知らなければ良かったのだが、肉好きだった僕からすればとてつもない拷問だった。


 その肉が大量に目の前にある。

 今までのように肉を食べるなという家族は周りにいない。

 だが、食べられない。

 骸骨スケルトンの食べ残しの為、恐らく食べれば食中毒を確実に起こすだろう。

 故に食べられない。

 食中毒を覚悟して食べると、今度はゴブリンが集められない。

 故に食べられない。

 鶏肉は狩りで得られている。

 でもやはり鳥以外の肉も食べたい。兎や猪は美味い。実は灰色狼グレイウルフの肉も美味い。

 だがここで焼いている肉は上手く処理できていないために、かなり血生臭いだろう。

 故に食べられない。

 食べられない、食べられない、食べラれなイ、食べらレナイ、食ベラレナイ、タベラレナイ!!


 暫く焼肉の前で葛藤に負けそうになり、悶絶していたのは僕と灰色狼グレイウルフ骸骨スケルトンだけの秘密になりそうだった。


 

 第二の間違い。

 焼肉を焼いてゴブリンを集める。この手段は非常に上手くいった。

 何故今までこの方法を採った冒険者がいないのか不思議だったが、その理由が下で起きている戦闘、というよりも種族間バトルロイヤルだろう。

 下と言うのも、集まってきたゴブリンを奇襲で倒そうと木の上に陣取っていたのだが、それが一番の幸運だった。

 焼肉の匂いに釣られて集まったのは3種族。

 姿を現したのは灰色狼グレイウルフ、次にコボルト、それとゴブリンだった。


 最初に一匹の灰色狼グレイウルフが現れ、肉を食べようとした瞬間、コボルトが2匹その場に現れた。コボルトを見た灰色狼グレイウルフは、多勢に無勢を感じ取ったのか肉から一旦離れた。一方のコボルトも弓と短剣を構えて、肉を挟んでの睨み合いとなった。劣勢を感じた灰色狼グレイウルフが遠吠えを発すると、コボルトもすかさず首に掛けた笛を鳴らした。


 2つの音が響く中、やってきたのがゴブリンだった。ゴブリンは剣や斧を携えた5匹だった。その思わぬ乱入者ライバルの出現に、その場は三竦みとなった。ゴブリンも今の遠吠えや笛の音が目の前にいる2組のライバル達が発した物と気付いたのか、5匹の内の1匹がその場から離れた。恐らく仲間を呼びにいったのだと考え、ちょっとした小競り合いで済むだろうと楽天的に考えていた、その時までは…

 そう焼肉の魔力を甘く見過ぎていた…


 戦況が膠着状態に入って5分。

 こちらの想像を上回る戦力の補充が3種族全体から来た。

 灰色狼グレイウルフの群れのリーダーらしき森狼フォレストウルフを筆頭に灰色狼グレイウルフが50匹くらい。

 コボルト側も武装したコボルトが70匹くらい。

 更にゴブリンは120匹ほどいただろうか。

 その援軍が三方向から肉を中心にして睨み合いを始めたのだ。


 正直泣きたくなった。

 と言うか、涙が本当に出たが声は出さなかった。

 幸い、焼肉の匂いに紛れて灰色狼グレイウルフの鼻でも、気付かなかったらしい。

 もし見つかっていれば、バトルロイヤルの勝者への報酬に、人間1人分の肉が追加されるところだった。


 その場での膠着状態を最初に動かしたのは森狼フォレストウルフが率いる灰色狼グレイウルフの群れだった。群れは二手に分かれてコボルトとゴブリンの群れに突っ込むと、コボルトは弓で牽制し、ゴブリンは剣や斧を構えて応戦した。

 だがそのゴブリンの振り下ろす剣の切っ先は、灰色狼グレイウルフだけでなくコボルトにも向かい、コボルトの放つ弓矢も灰色狼グレイウルフとゴブリンの上に降り注いだ。


 結果、戦闘の場は混乱を極めた。

 コボルトの放った弓矢は灰色狼グレイウルフの脳天やゴブリンの体を貫き、灰色狼グレイウルフの牙や爪は血に塗れ小さな肉片までこびり付いていた。ゴブリンの武器には血や脂で真っ赤に染まり、鈍く光っていた。


 剣や牙がぶつかる音や肉を切る音、矢が空気を切る音などが暫くの間、戦場に響いていたが、徐々に優劣が出始めた。

 最初に優位に戦いを進めていたのは森狼フォレストウルフが率いる灰色狼グレイウルフの群れだったが、数の少なさが災いした。ゴブリンとコボルトに同時に攻撃したことも劣勢へと繋がった。ゴブリンとコボルトからの挟撃を受け、灰色狼グレイウルフはその数を急速に減らしていった。


 残ったのはコボルトとゴブリンだが、やはりここでも数の差が出たが、決定的だったのは武器だった。コボルトたちの武器は主に弓矢だったが、数の少ない灰色狼グレイウルフには矢を協力して射ることが出来ていたが、数の多いゴブリンでは撃ち漏らしもあり接近戦へと持ち込まれた。コボルトはダガーなどの短剣で応戦したが、剣や斧で襲ってくる相手に堪えきることは出来なかった。

 そしてゴブリンとコボルトの間の戦いが激化したところで、森狼フォレストウルフは残った灰色狼グレイウルフを引き連れて戦場から退き始めていた。コボルトは撤退を始めた灰色狼グレイウルフに向かっても攻撃を続けたために弾幕が薄くなっていたことも敗因に繋がった。


 この戦いでの勝者はゴブリンだったが、ゴブリンたちも決して大勝と言う訳ではなかった。コボルトはほぼ殲滅した代わりに、120匹はいたであろう群れは既に20匹前後となってしまっていた。もっとも戦いの最中で進化バージョンアップした固体もいたのか、生き残りの中にはゴブリンの純粋強化されたホブゴブリン2体に、攻撃特化型のゴブリンソルジャー、回復役のゴブリンプリースト、魔法攻撃の得意なゴブリンシャーマン、ゴブリンを束ねるゴブリンリーダーがそれぞれ1体ずつ生まれていた。


 他にも弓矢での遠距離攻撃が得意なゴブリンアーチャー、探索役のゴブリンシーカーなどが存在するが、生まれていないことは幸いだった。この2種類のゴブリンならば、木の上にいる人間を見つけることなど容易い筈なのだから…


 新しく生まれたゴブリンリーダーはすぐに残りのゴブリン達を纏め上げると、通常のゴブリンを4体その場に残し、残りのゴブリン全てを引き連れて灰色狼グレイウルフたちの追撃へと向かって行った。

 残されたゴブリン4体は仲間やコボルトの屍骸から装備品を剥がし、灰色狼グレイウルフからは毛皮を剥ぎ取るなど、戦後処理を行い始めた。


 ゆっくりと遠ざかるゴブリンリーダー達の姿が十分に離れたことを確認しながら、木の上でゆっくりと剣を抜いた。傍で待機していた灰色狼グレイウルフ骸骨スケルトンもゆっくりと起き上がり奇襲の準備を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ