閑話 その1 その時の家族の反応は?
正ヒロインになるのかまだ未定だけど、ヒロイン候補の登場です。
主人公の母親や兄、姉の名前はまだありません。
というか、今後出番の予定は無しの予定…。
「予定は未定」は素晴らしい言葉ですw
なのでちょっと読み難いかもしれません。
あとブックマーク登録感謝ですw
前回までは説明回が多く、一日しか話の中では進んでいませんが次回以降からは時間がもう少し早くなるかな?です。
ご意見・ご感想は気が向いたらで良いので、貰えると嬉しいです。
評価も同様です。
まぁ、あまり評価の方は気にしていないことが多いですが…。
合わせて誤字脱字のご指摘もお待ちしております。
初めましてセリナです。
突然ですが、慕っていた兄が突然、姿を眩ませて何処かへ行ってしまいました。
今朝、誰よりも早く起きて家事の手伝いをさせられていた兄の物音が聞こえず、不審に思って最初に動き出したのは私でした。
いつもならば廊下の掃除や朝食の準備など、母親が命じた仕事をしているのでそれに伴った音が聞こえる筈です。でも、今日はその音が一切聞こえず、家の中は静まり返っています。
(もしかして寝坊してる?それとも兄さんの10歳の誕生日だから、家事をしなくても良いって言われたのかな?)
自分なりに理由を考えてみるが、そのどれもが納得がいかない。
前者の理由は無い筈だ。最初の頃に何度か兄が寝坊したことがあったが、それに対して母親や、他の兄や姉が容赦の無い折檻を加えているのを知っている。それ以来、兄が寝坊した所を見たことが無かった。
では、10歳という大きな区切りの誕生日だから、家事をやらない許可が出たのだろうか?
恐らくそれも違うはずだ。あの3人がそんなことで許可を出す筈がない。
本来ならば10歳というのは能力さえあれば、初めて独り立ちを許されることになる年齢だ。冒険者になるのも、仕事に就くことだって可能だ。(ただ、見習いと称して8歳から商家に住み込むこともあるが…)
そう10歳になると様々なことで、親の商人が不要になる。その事実が私に嫌な結末を考えさせる原因だった。
兄は家族から疎まれていた。
母は兄を無視して一切育てる気は無いと面と向かって言い放ち、実際にその通りに接していた。
上の兄は将来を嘱望されており、母から甘やかされている。その為、上の兄の性格は傲慢で、狭量な器の持ち主だった。下の弟である兄を苛めており、自分の思い通りにいかないことがあるとすぐに下の兄を(本人か見れば弟)を殴っていた。
姉はさらに酷かった。姉も将来を嘱望されており、母のお気に入りでもあった。確かに私から見ても美人だが、内面は最悪の一言だった。自分の美貌と能力を誇る様に振る舞い、自分を認めない相手がいると癇癪を起した。素晴らしい「癒」の属性でありながら、わざわざお金を払って治療を望んできた者に対しても、生理的に嫌いだと感じると「そんな者に癒しをすることは出来ません。」と突き離すこと数十回。
上の兄も姉もこの街に実は1人ずつしかいない属性の持ち主だ。「光」と「癒」の属性を持つ人は、13歳になると決められた場所へと修行に行くことになっており、その修業を受けるということは将来を約束されている。そう母と上に兄、それに姉は口を揃えて言い、周りもそれに同調している。
だが実は現実はそんなに甘くないのだと、私と下の兄だけは知っている。2人だけでは無い。冒険者ギルドの誰もが知っている。私達も冒険者たちに嘆息混じりに教えられた。
「お前たちの母さんや兄さん、姉さんは、既に自分たちが優れた存在だって吹いているようだが、それは間違いだ。兄さんも姉さんも8歳の時にLv3を叩き出したのは確かに凄い。でもなそこから4年は経つのに全く成長していない。」
その時に目の前にいたのは30代半ばくらいの冒険者グループのリーダーで、この人も実は「光」の属性持ちらしく、Lvは5。その冒険者は酒を少しずつ舐める様に飲みながら教えてくれた。
「属性で確かに進む道は開けるかもしれないが、Lvが最後には物を言う。本当に大成したいならば、13歳になるまでにLv5まで上り詰める必要がある。特に「光」と「癒」の場合、修業があるだろう?その時までにLv5以上になった場合はエリートクラスに、それ以下の場合は十把一絡げで扱われる。で、Lvを上げるには年単位での鍛錬が必要だ。」
そこまで言うと冒険者は遠い目になると、「俺は無理だったが…。」と呟く様に言った。私と下の兄はその言葉に強い思いが凝縮されてるように感じ、続きを促すことが出来なかった。
「まぁ、俺のことは良い。だがお前さんたちはまだ8歳と5歳で、十分に時間がある。兄さんや姉さんは今から猛烈な勢いで鍛錬してギリギリだろう。才能限界っていうのもあって、必ず鍛錬したからと言ってLvが上がり続ける訳ではないが…。」
その後、その冒険者は魔力の練り方や鍛錬の仕方を教えてくれたが、幼かった私にはまだ十分に理解することが出来なかった。だが一緒にいた下の兄は理解できたようで、他の家族がいない時間や寝静まった頃に鍛錬を繰り返すのを何度か見かけることがあった。
私はそんな下の兄が大好きだった。「死霊」属性と言えば街の誰もが嫌うが、そんなことは関係無い。優しくて努力家の下の兄は私のヒーローだった。
だがそんな下の兄の動きが変わったのは半年ほど前からだった。それまでも冒険者ギルドに入り浸っていたが、家の中で何かを考え込むことが増え、父が遺してくれたお金を持って出かけることもあった。帰ってくると何かを買って来たようだが、中身は教えて貰え無かった。
そんな下の兄が普段通りの生活をしていないということが、私の嫌な予感と不安を掻き立てたが、それは最悪の形で的中した。
リビングには既に母がおり、その手には手紙が一通握られている。母はその手紙を興味無さそうに読んでいたが、私に気付くとその手紙を私に渡しながら言った。
「あの子のことは忘れなさい。どのみち、この家には不要の子だったのだから。」
その言葉にやはりと感じながら手紙を受け取って読んだ。そこには綺麗なな文字で書かれて一文が書かれているだけだった。
〈冒険者となってこの家を出ます。〉
たったそれだけだった。私は涙が滲みそうになるのを我慢していると、母は素っ気ない声で言った。
「あんな最低の属性持ちなど我が家の恥です。それと貴方もそろそろ8歳になるので教えておくことがあります。貴方は私の子ではありません。私の自慢の息子は3歳の時には「光」属性が備わっていることが分かり、あの子を支える存在として貴方を実の両親から買い取りました。あの子が修業から帰ってくるまではある程度の自由を認めますが、それ以降はあの子の妻となって支えなさい。それが貴方の役割よ。」
「え?」
その母親と思っていた女性からの言葉に最大級の衝撃を受けたが、母だった女性はそんな私の反応に構わずに笑顔になって言った。
「さぁ、あの子が起きて来るから腕によりを掛けたご馳走にしないとね。我が家の恥も消えて、清々しい毎日がおくれるわ。」
そう言うとその女性はキッチンへと向かって行く。
取り残された私はショックで暫く動けなかった。
信じられなかった。
私が養子であること。
あんな最低な上の兄への|結婚相手(生贄)であること。
大好きな兄と血が繋がっていないこと。
私は倒れそうになりながらも、たった1つ得られた希望に縋った。
そう下の兄とは血が繋がらない。
恋人や夫婦になれる。
その為にはどうすれば良いのか?
それも大丈夫だ。
下の兄が全て教えてくれた。
冒険者になる方法も、魔力の鍛錬の方法も。
だから今、倒れている暇は無い。
気づかれては駄目。悟られても駄目。
普段と変わりの無い生活を心掛ける。
そして10歳になったら下の兄を見習って冒険者になれば良い。
そうして下の兄、ううん違う。
あの愛しい人の傍に向かおう。
それまでは我慢だ。
私も絶対にこんな家を出てやる!!