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初対面には名乗りましょう

 テストの成績が飛躍的に良くなった。原因は分かっているゲームをしていないからだ。いざ、他のゲームをやろうと思っても、ハードを双子に独占されているし、そうなると時間が余ったので宿題を真面目にやり始めた。

「それじゃあ、駄目なんだ。弟よ」

 朱莉がふらふらになりながら、勉強をしているボクの膝に乗ってきた。

「あたしはゲームの人工知能、弟がゲームをできないと言うのは、あたしたちの存在意義に関わる」

「まあ、母さんと父さんが喜んでいるから、ボクは気にしていないけどね」

 実際、本当の姉ができたように家の中は活気付いている。朱莉と巴は性格が違うが、素材が良いので見た目が綺麗だ。なので、BR用の新しい服を買ったり、空いている時間は遊んだりと、色々なイベントが発生している。

「弟はゲームができなくてそれでいいのか」

 まあ、テストの成績は上がったけど。

「よくないけど、スライムに勝てないんじゃあ」

「私、下へ行く」

 巴もふらふらになりながら階段を降りた。しばらくしたらピアノの音が聞こえてきた。

「ほら、これだよ」

 朱莉が自信満々に腕を組んだ。

「あたしたちはステータスに関係なく、成長しているんだ。あたしもただ運動をしているだけじゃあないんだよ。ゲーム内でステータスを超えたところで勝負しようとしているんだ。その証拠に、あたしたちは粘り強くなったんだ。スライムの攻撃を避けられるんだよ。巴のピアノが上手くなっているように、あたしたちは成長をしている」

 朱莉の言う通りかも知れない、勉強をしている時に後ろで聞こえる全滅のゲーム音が、今日は少なかったかも知れない。

「ステータスという戒めをぶっちぎるのよ!」

 朱莉はめらめらと燃えていた。活発なばかりでなく、熱血漢であった。

「もう少し時間が経てば、FPSのゲームを買って貰おうかと……」

「だめ! まず、これを倒さないと……あたしたち使えないみたいじゃない!」

 BRの両目が少しだけ赤くなった。眼のレンズを洗う場合は涙が出るが、ここまで表現されるとなると、その必死さに止めることは出来なかった。

「分かったよ。まだ買わないことにするよ」

「やったー! ありがとう」

 ちゅっ。と頬にキスをしてきた。

「そうだ……明日、学校へ行く?」



 次の日の昼休みだった。

「最近、ゲームしていないんじゃないのか?」

 友人の上条が目の前で弁当を広げて、話しかけてきた。

「やっているよ。プレイ時間だけは負ける気がしないねぇ」

「BRも買いにいったんだろ。俺のマーズと友達になってもらいたいんだけど」マーズは上条の膝の上に乗り、卵焼きを摘まもうとしていた。赤髪のトレンチコートを着た女の子だった。

「僕も楽しみにしていた」

 少しだけボーイッシュだけど、ゲームをしていて何度も助けられたことがあり、二人っきりで話したときも女の子っぽくてドキドキしたことがある。

 机の横の鞄がモゴモゴと動いた。チャックが開くと、

「早く紹介してよ」

 朱莉は飛んでボクの頭に着地した。

「朱莉だよ。よろしくね」

 巴はゆっくりと降りて、机に腰をかけた。

「巴です。よろしく」

 その登場の瞬間に、教室中がざわめいた。最初の朱莉の登場でも、その造詣の美しさに全員の目が引かれた。朱莉は髪形を変えていた。短い髪にして、ゴムで二本の小さな尻尾を作っている。一体だけでも眼を引くのに、続けて巴が出てきた。巴は長い髪のまま三つ編みにしていて、知的に見えるように伊達眼鏡をつけていた。

「二人合わせて、シスターズ!」

 朱莉は言ったが、巴は黙って俯いていた。恥ずかしいようだ。

「僕はマーズだよ。というか、二人は双子?」

「その通り、世界初の双子BRだよ! そして今日で学校デビューだ」

 サラリと余計なことを言った。

 言った瞬間に、BR好きの連中に取り囲まれた。色んな質問が飛び交うので、弁当をおいてとっとと逃げてしまった。行き着いた先は屋上だ。

「なんでー。ちやほやされたかったのに」

「盗まれるかもよ」

「えっ、なにそれ」

「たまにあるんだよ。BRって人工知能が高いだろ。だから分解して――」

「いやー!」朱莉は耳を塞いだ

「こ、怖い」巴は僕の足に抱きついた。

「まあ、そう簡単に盗まれることも無いけど、絶対に変な人にはついていかないでよ。二人はボクの大切な姉なんだからね」



 午後の授業が始まる直前に、自習と言われた。

「さ、最悪だ」

 周りから人がいっぱい集まってきた。

「みーくん」女子生徒で昔からの幼馴染の御坂が朱莉と目を合わせて言った。「借りていい? ガールズトークと言うものをしたいのですが」

「なんですか、ガールズトークって」

 珍しく巴が言うと、御坂が、

「女の子同士の秘密の会話だよ。ねえねえ、行こう」

「知らない人について行っちゃ駄目なんだよ!」

 朱莉が御坂を見ながら、その場でシャドーボクシングをした。

「きゃあー、可愛い」

「か、可愛い?」

 脅しているつもりだったのが、予想外な反応だった。

「連れて行くよー」

 良いって言っていないのに……。


「やばいんじゃないの?」

 双子がいなくなった後は、上条しか残らなかった。

「何が?」

「生活の隅々まで知っているんだろ。双子の口から何が漏れるか分からないぞ」

「……別に変なことしていないし」

「まあ、それなら良いだけどな」

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