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院長室にて

水浴びを終えた私がアグリストと一緒に食堂に着くと、丁度朝食の準備ができた所だった。

「フィルズ、あなたはここよ」

わーい、懐かしいなぁ院長先生の隣の席!

……子どもの頃は悪さをする度にここに座らせられたものだ。

マーガレット先生が院長先生になってからは座った事は無かったが、まさか今更になって…。

悪い事はしてないのに落ち着かないのは、食堂にいる全員の視線を浴びる場所だからだろう。


オムレツは無くなったが焼きたてパンに分厚いベーコン、取れたての野菜のサラダに具だくさんなスープというかなり豪勢な朝食。

アグリスト達がいるから色々余裕が出来たんだろう。

畑は広くなってたし家畜小屋も鶏用と牛用のきちんとしたものが建っていた。

大人が5人に子どもが8人。

女の子が3人もいる。

最年少は内気そうな5歳ぐらいの女の子で、1番大きな子どもが10歳ぐらいの、なんというかあの頃のザナントに似た男の子。

所謂突っ張りたい年頃という奴だ。

残念だが少年よ、私は強いぞ。

睨むのは良いが後で後悔する事になっても知らんからな。

はっはっはーっ!

なんてね。


朝食を食べ終わると院長先生は私を連れて院長室に向かった。

あー、ここも悪さをしたら連れてこられた思い出が……うぅ…。

その時は院長机に向かった以前の院長先生が祈るように手を組んでにっこり笑いながら淡々と諭してくれたのだが、今回はマーガレット院長先生に促され応接用のソファーに座っている。

テーブルを挟んだ向かいに院長先生がいて、その表情は少し暗い。

……何故だ。

もっと歓迎して茶菓子を振る舞ってくれても良いと思うんだがこれじゃまるで尋問みたいじゃないか!

昔は座ってみたかったこのソファーもこんな状況じゃ堪能できん!!

「それにしてもフィルズ、あなた何ヶ月あちらにいたの?」

…………どうやら院長室は私が逃げ出してきたという疑惑を捨てきれないらしい。

それでここに連れ込まれた訳か!

普通に皆の前で聞いてくれても問題ないんだけどね…。

「いや、月単位じゃなくて」

伝承じゃあ1ヶ月で数十年が当たり前だからって、私の成長を見て判断して欲しいものだ!

身長は変わってなくても髪はセミロングからロングになってるし、顔だって大人びたし、胸だって以前の服が着れなくなるぐらい膨らみましたよ!!

固定観念を横に置いて私の成長を見てくれ!

「2週間ぐらい?」

何でだ!

15年も経ってるから院長先生の記憶の中の私は朧気なのか!?

だからこれだけ成長してるのに比較が出来なくて気付かないの!?

「少し惜しい。 週単位でもなくて」

落ち着け落ち着け……そうだ、数字は合ってるからあとは単位をね…。

というか週単位になったら行き来出来ないでしょうが!

「ふ、2日!?」


おーけー、臨戦態勢バッチリ。


「向こうで2年働いて19歳になりましたっ!! に•ね•ん•か•ん! あっちにいましたーっ!! この耄碌ババァ!!」

「嘘おっしゃい!! こっちでは15年しか経ってないのよ!!」

「最っ低でも1ヶ月でしょうが! 何で単位が減っていくのよもう呆けたの!? 大体あんな仕事が数ヶ月で終わるか!!」

「もしかしたら仕事内容全部がこっちの世界で新月の日に1日で往復して向こうに居たのが合計で2日の可能性もあるでしょうが!」

「そんなまどろっこしい事するかーっ!!」

「本当に向こうの世界に2年いたとしたら何でこっちでは15年しか経ってないのよ!?」

「きちんと話すから黙って聞け!! それでまだ疑うなら今度は拳で語り合うぞごるぁっ!!」

「やってやろうじゃねぇかスカポンタンっ!! テメェ如きに負けるほど耄碌してねぇぞ糞ガキがぁ!!」

ぜぇぜぇと互いに荒い息を吐きながら睨み合う。

おうおうかかってこいやぁ!


………じゃなくてまず説明からだ説明。

深呼吸して握った拳と構えを解く。

ヤバい応接テーブルに足を乗せてしまった…と思ったが院長先生も同じ事をしていたのでセーフセーフ。

「まず何も言わないで聞いてね」

念を押してもう一度静かな声で言うと院長先生も真面目な顔になった。

「こほん…分かりました」

ソファーに身を預け、叫んだせいでカラカラの喉は唾を飲み込めば元通り。

んんっ、柔な喉は持ち合わせちゃいないからな!


……うん、大丈夫だけどさっさと話を終わらせて美味しいコーヒーが飲みたいわー…。

大丈夫だけどね!

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