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28日目
今回は爆速でも酔わなかった。
一人喜んでいると、馬が悔しげに「チッ」と舌打ちしたのが聞こえた。
……馬よ。
お前、人が苦しむの見て面白がってたな。
気を取り直して旅の仲間の住まいを訪ねる。
今回出迎えてくれたのは娘だった。
二度目の基礎化粧品の融通の要請は、彼女の興味をそそったらしい。
「もしかして、恋人でもできた?」
その答えに、僕は窮した。
僕は思い込みが激しい方だとは自覚しているが、あのひととそういう風になりたいという程大それてはいない。
そういう、生々しい事はあのひとに似合わない。
僕のあのひとへの執着は、おそらく喪った母への愛情の転化だ。
恋人は要らない。
強いて言うなら、家族が欲しい。
ぽつりとそう呟くと、娘は立ち上がり意気込んで、
「今日は泊まって行きなさい」
と僕に言った。
夕飯のシチューは、母がかつて作ってくれたそれとよく似た味がしてとても美味しかった。
良い人たちです。
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