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10056日目
昨夜はずっとあの子の相手をしていたので中途半端に日記が切れてしまった。
もとい。
あの子は部屋を出ることはなかったが、私が恐る恐るそばに寄ると、ぽつりぽつりと母の事を話してくれた。
聞けば、物心ついた時からずっと二人きりであったらしい。
理由は良く知らないとあの子自身は言っていた。
大事な母だとも言った。
しかし、思い出話を語る口調に悲壮感はなかった。
悲しさよりも、愛おしさが先に感じられる語り口。
それからは、どのような時にあっても、淡く燐光を放つような景色が感じられた。
私には、その話の情景の中の方が余程、『聖域』と称するに相応しいように思える。
最後に、これからどうするのかと問うと、あの子は一言、
「仇を」
と呟いた。




