8
――――――――
「それで?誰か分からないんだ、その助けてくれた人 。」
「うん…気を失う寸前だったし、雨でよく見えなかったんだ。」
そっか、言ってラケットを地面に置いて自分も座る。
体育の先生は先程何か用があって出ていって、その隙に皆思い思いに休んだりラリーをしたりしている
「でも、やっぱり本当だったんだ。」
「え?」
こそりと美雨は耳に口を近づけて
「最近アクマがうろつくようになったって話
」
「―え」
「噂よ、知らなかったんだ、二組の子も見たって言うらしいし、」
「そうなんだ…でも、一体どうしてー」
「そこよ、実はこれも噂なんだけど、」
ひそり、声を潜めて
「何か、探してるらしいよ、」
「探してる?何それ」
「聞いたんだって、その子アクマの声を」「…」
「お前じゃない、って」
「…!」
確かにアクマには発声器官が備わっているモノもいる。
だがそれだって並のアクマに出来ることじゃない、イレギュラーな存在だ
そんなアクマが、闊歩しているなんてーーー
そこで先生が帰ってきた、その話はうやむやになってしまったが、何か心に引っ掛かっていた 放課後、
美雨の部活が終わるのを図書館で待つことにした。
パラ…
「…」
適当な本をめく時間を潰す。
やっぱり迎えに来てもらえば良かったかなと考えている時、何気なく階下をみると
よく知った影が見えた。
少しの間考えて、それから席を立った。
ーーー
「ねぇ、白夜」
「…」
その背中に声をかける
彼女は父の弟の娘で、自分の従姉妹にあたる。
たまに家に訪れる事はあるが、最近はあまり話をした事がなく、こうして学園であっても特に会話もない。
それはクラスが違うから、ではなくて
「…」
避けられてる、そういった方に近い。
「…何」
「ぇ、っと何してるのかなって
別に何も、」
「そ、そう」
「…」
「…用がないなら行ってもいいかしら。」
「あ、う、うん」
いつもこんな調子だ。
小さい頃はそうではなかった気がする。本当の姉妹のように育った記憶がある。
変わってしまったのはいつからだろう?
自分に向けられる視線の冷たさに気づいたのはいつ頃だっただろうか。
「…」