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「そこから先は、記憶がありません。 」
管理官の人も今の自分とおなじように苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
あのあと、近所の人に倒れ込んでいた所を見つけられて、一先ず病院に運ばれたらしい。
目立った外傷はなく、から迎えが来るまで管理官―――
中央退魔機関の担当の人に話を聞かれる事になった。
管理局が侵入したアクマに気付いた時には、既にその反応は消えていたらしい。
そして、最近になって同じ報告が多発しているらしく、その対処に追われているらしかった、
――
バタン
「恵里香さん、大丈夫ですか?!」
「宗二兄さん?! は、はい平気です。」
彼は自分が小さい頃から慕っている、親戚のお兄さんだ。
自分の弓の先生でもあり、今現在も家に住み込みで家事の手伝いや道場の師範をしている。
「アクマに襲われたのですか?怪我はないですか?」
「はい、大丈夫です。」
と言っても心配そうに眼鏡越しに表情が曇る。
それから管理官の人と何やら話をして、
少ししてこちらに向き直る。
「立てますか?」
「は、はい」
「帰りましょう」
はい、と短く返事をして立ちあがる。
少しクラりとしたが、構わず歩を進める。
いつの間にか、雨は止んでいた。