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ザシュ
―狙い通り、その額に矢は刺さった。
(このスキに)
だが
ブルブルブル
小さく震え、手の一本が矢を抜き投げ捨てる。
「ああっ」
酷く緩慢な動作に見えるのに、それ以上に自分の動きは劣っていた。
だから
もう一つの手に襲われてもよけきれなかった。
ドン!
「…!?」
薙ぎ払われ、体が宙に浮く。
大きな音と共に地面に打ち付けられる
ズッ―――
這うようにしてそいつは近付いてきて、間髪入れずに首を絞めあげられ持ち上げられる。
アクマが人間を襲う理由の一つに、人間の生気を奪う事があげられる。
生気を吸えば吸う程にアクマの力は増す。
逆に生気を吸われた人間は衰弱していく。
「ぐっ…」
目の前が真っ赤になる
息が出来ずにただバタバタともがく事しか出来ない。
手から力なく弓が落ちる。
本来表情のないアクマだが、笑っているように見えた。
――だめだ
―――意識が
飛ぶ寸前、
目の前の黒が、まっぷたつに割れるのを見た。