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二回、戸を叩けば返答がかえってくる。
カラリ
あけた先には言えば塵一つない几帳面に整頓された部屋。
「お茶、持ってきたわ。少し休憩しましょう?」
「ありがとうございます。」
「どう?進んでる?」
カチャ
器をおいてお茶を注ぐ。
お茶のいい香りが鼻をついた。
「あ、いえ…」
少し歯切れの悪い言葉。
姉はなんとなくノートをみて
「あぁ、ここね、少し複雑ね。私も少し手間取ったわ。」
「あの、姉上、もしお邪魔でなければ」
と、弟の問いに一もニもなくうなづいた。
「それで、さっきの問いにこの式を応用して」
「はい、」
「ほら、じゃあこれ、次の式をさっきと同じように解いてみて」
「分かりました。」
ーーーーーーー
「姉上、できました。これでどうですか」
「うん、正解、やっぱり貴方は覚えが早いわね。要領さえつかめればすぐ慣れて行くわ。」
「いえ、姉上の教え方が上手いのです。おかげで助かりました。」
生真面目にいう彼に、彼女は小さく笑った。
「ふふ、大袈裟ね、あらもうこんな時間なの。ごめんなさい。」
「お時間をとらせてしまって申し訳ありませんでした。」
弟も続いて立ち上がろうとするのを彼女は制して、
「あまり根を詰めすぎないようにね。あなたは少し頑張りすぎるところがあるから。」
それから
自然な動作で彼の頭を緩くなでた。
「あ姉上?」
「あ、ごめんなさい、昔を思い出してつい」
慌てて彼女はを離す。
そのまますくと立ち上がり、
「もう行くわ、また後で、虎徹、」
「…はい姉上」
そのまま姉、白夜は足早に去っていた。の
パタン
閉められた障子
その戸を背に
(本当にどうかしている)
己の行動に小さく赤面してそれを振り切るように早足で廊下を渡っていった。




