15
「もう一度よ、虎徹」
首に当たる剣圧。
視線を動かさずともその存在は理解出来た。
「はい」
すっと竹刀を引き息一つ乱さぬ声で彼女はそう言った。
眼前に写る光景に、ただ人は心奪われる。
かくも疾風の如く
かくも閃光の如く
その術の一つ一つに
畏怖し
情景の年すら抱かせる。
ヒュオ……!
時を告げる音が道場内容に鈍く響く。
彼女はそのまま竹刀を下けげて
「もうこんな時間?少し休憩をしよう。」
「はい、姉上」
青年も竹刀をおろす。
見物していた青年達もゾロゾロ列をなし回廊へといく。
何人かがのこっていたが、大体が今日の訓練のものだ。竹刀や防具を取り出したり、と
早朝の訓練が終われば本格的な訓練が始まる。
今日は日曜日ともあって通常より慌ただしく作業がはじまる。
その様を見ながら道具を片付ける青年へ声を掛ける
「虎徹」
「はい」
「どうしてあの時そのまま撃ち込まずに後退したの。」
それは二回目に打ち込んだとき、彼の一撃は完璧たった。
「なぜあの時撃ち込まずに後退したの」
三度目の攻撃は正直こちらの体勢を崩しかねない一撃だった。
しかし
不意に彼は竹刀を止め、いったん体勢を整えてから再び攻撃を再開した。
疑念を含んだ言葉。
だが青年の眼は湖底のように静やかで深海の如くただ暗い。
真意を明かすように、彼女はただ逸らすことなくその瞳を見詰める。
「あのまま三撃目を続けても、確実に姉上を崩せたとは思いませんでした。
故に引き、改めての手段に問いました。
姉上の意を害したのであれば、非礼をお詫びします。申し訳ございません。」
そう言って、ためらいなく頭を下げる青年。
たじろいたのは彼女の方
「いや、そこまでは………」
小さく息を吐いて
「別に貴方を責めているわけじゃない。おかしな問いかけをして悪かったわ。」
「朝食は?もうとったの?」
まだと返した彼と共に久々の二人きりの朝食をとった。
先刻の門下生の大半は此処に住み込みで働いているものたちの娘や息子、ここには居住はおろか食堂さえ揃っている。
故に稽古の後は各々の居住に戻ったり食堂で腹を満たす者もいる。
二人も同じ、食堂ではないか道場より少し離れた場所に位置する屋敷内。
何分もまたぬうちに食事を運んできてくれたのは古くからこの家に従事してくれた老人。
一言二言会話をした後姉弟の食事故にとすぐまた厨房へと下がっていった。
静かな食事、しかしけれど張り詰めたものではなくて、ゆっくりとおだやかなものだった。
「今日は何があるの?学園で修練?」
「いいえ、期末が近いので今日はその、修学を」
「ああ、そう。そういえばもう直ぐだったわね。どう、進んでる?」
「すこし、応用で手間取るところがいい今日は集中してやってみようかと」
「そう、あとで差し入れを持っていってあげる。」
「はい、ありがとうございます。」




