気になる依頼人
だが、そんなマンネリ化した日々も今日この瞬間を持って終わりになる予感がする
目の前にあるノートにビッシリと細かく書かれた
依頼人・依頼・依頼理由は1人1人が全然違い掲示板に貼られた依頼とは異なるものばかりだった
ノートの右上には天叉5年1と書かれており
ページをめくるごとに1の数字は2・3へと変わっていく
「いったい1年間で何人もの依頼人がここにやってくるんや?
俺は殆ど毎日来てんのにこんなにも人が来てるとは知らんぞ」
「マイルドさんのような職業の方にはあまりにも
危険な依頼だと思ったので剣士または格闘家の人にのみ依頼してるのです」
「なんだよ俺は部外者みたいな扱いなんかよ
依頼を見てもねえのに外されんのはなんか納得いかねえな」
「そうは言ってもバイトの私が店主の命令に逆らうのは
命まで持って行かれますのですいません・・・」
オドオドしながら俺に向かって何度も頭を下げるマスターを眺める
店主は屋根裏部屋から右手に赤と白の混ざり合ったフルーツを持って
勢いよく飛び降りて床に両足を突き刺した
「別にいいんじゃねえの?
マイルドのレベルなら1つの依頼ぐらい
命を失わさずに達成出来るんちゃうかな~~」
そう言うと店主は俺の持っている「トロイトロン」を
奪い取り画面を見て俺のレベルを分かっていたのか
一切驚かず俺の掌に置きカウンターの席に座り込む
「ついに自由人のレベル上限に達してしまったか
俺は数々の職業を転々と渡り歩いて来たけど自由人だけは
他の職業に比べて段違いな程苦しかったな・・・
今から厳しくなるぞマイルドっ!!」
店主は俺の背中を強く叩き火の玉を俺の身体に
ぶつけてマスターから1枚の紙を受け取り渡してきた
何度あるか分からない火は俺の身体中を這いずり回り
身体を焼け焦がそうとしたがその火は痛みより優しさ
による新しい痛みの感じがした
「絶対にお前の顔を思い切り殴ってやるからな」
この言葉が俺と店主の最後だとは思わず怒りを込めた
右手の拳を強く握り締め俺はその場を去った
「店主でさえギリギリ生き延びたあの限定能力
まだ21歳のマイルドさんは乗り越えられるのでしょうか?
私はあの人の努力は他の人よりも分かっているハズです
しかし今からは努力なんて何の意味を持ちまっ・・」
店主はマスターの口を左手で押さえマスターの口の中に
持っているフルーツを思い切り突っ込んだ
「男が女みたいに長ったらしく話すんじゃねえよ
マイルドだって伊達に21年間も生きてねえ
男ってのはピンチになった時こそ男になる生き物なんやからさ」