唯一の居場所
ー無法者のすみどころーー
カランカランッ
ドアの上に付いている「リア」という怪物の素材の1つ
ガラスから出来た物が涼しそうな音を鳴らし俺の入店を歓迎する
ここは俺のようなどうしようも無い奴等が最後に行き着く場所なので
無法地帯と呼ばれ街に住む人々から嫌われている場所でもある
ここだけが俺を待ってくれる
俺と同じ境遇の奴等でも仲間になれなかったのに
ここに居る奴はそいつらより気が合う
「またソイツかよマイルド
そろそろ「キメカ」か「ロム」ぐらい
サクッとぶっ殺して持って来いよな」
カウンターに座る男はソラル
俺と同じ時期にこの場所に来て今では
リーダーと呼ばれるこの店屋の店主と同等の力を持つ
この世界にもどこかの小さな島国で発売されている
ゲームと同じようにレベルというものが存在するが
経験値を得る方法が少しだけ変わっている
敵を倒した瞬間に経験値は貰えず
依頼人の依頼を達成して討伐依頼怪物を倒し
依頼場所に置かれた箱に入れた時に貰えるのだ
依頼箱は怪物の近くに置いてるのでわざわざ依頼人の
待つ場所まで持ってこなくていいのだが依頼人が
怪物を見たいと言ったので殺して持ってきたのだ
まあ、ここの奴等も無法者とはいえ怪物の強さ・出現場所などを
完璧に把握してるから俺が敵を持ってこないと逃げたと思われるのが嫌だからでもある
その男の2つ隣のカウンターの椅子に座る女性の肩を後ろから軽く叩き奥の部屋を指差す
女性は俺の後ろで肉塊となった怪物を見てホッと安心しきったような表情をし無言で頷いた
「カイベルっ!!
コイツと女性を奥の部屋まで案内してくれねえか?」
カイベルは俺の少し後に入ってきた職業遊び人の男である
遊び人といってもコイツの腕はかなり凄く横切った奴の
臓物を引きちぎる姿を頭に植え付けて相手を恐怖で震え上がらせる
まだ、ただの一般人にしか効かないとこが難点だが
後一年もすれば俺までコイツにひれ伏すかもしれないと思う自分がいる
「おい、誰に口聞いてんだ?
あっ、マイルドさんだと知らず失礼な事を
本当に申し訳あありませんっ!!」
振り返る前にあった誰にでも見える殺気を閉じ込めたカイベルは
元気そうな声を出して俺の肩に背負う怪物を片手で持ち上げ女性を奥の部屋に連れて行く
カイベルを呼んだのは怪物を倒した時に得た経験値と素材を見たかったからである
ポケットに入れている電子機器「トロイトロン」を取り出し真ん中の大きなボタンを強く押す
起動するまでにマスターの持つ酒をコップに注いで貰い一気飲みをしてコップを机に置いた
「最近変わった依頼人は居なくなったんかマスター?」
そう言うとマスターは深刻な顔をして机の下から一冊のノートを取り出しページをめくる
「居るのは居るのですが昔より過激な依頼人が多くなったのでこのノートに書いてるのです」
俺がこの場所に来た時は戦争後というのもあったが
皆が皆敵同士で誰かと眼があったら直ぐに殺されるぐらい酷かった
その時に来た依頼人も荒くれ者ばかりで依頼は
ギャングの頭を殺してくれだとか俺の親を殺してくれとかばっかりだった
いつの間にかそんな依頼人もこの場所に来なくなり
突然現れた怪物の討伐依頼だけになった
でも、それからは前みたいな刺激が身体の中から
消えてしまい俺の世界も元に戻っていた