第2話、物理と精神
「うぅ…」
目覚めると体がひどくダルいが、斬られた痛みも無かったし傷自体も存在しない。
肩を回したり、伸びをしてみたりしたがどこにも異常は感じない。
こういう部分はゲームだが
風景や五感がリアル過ぎてここが仮想世界だということを忘れそうなんだよなぁ。
という所で周りを見渡してみる
前方には広めの草原があり右前方には森が見える。
後ろ側は高い壁が続いている。
どうやら俺はこの高い壁の近くで倒れていたらしい。
とりあえず入り口を探して壁にそって歩く。
◆
…俺は先程から小さな引っかかりを覚えている。
「なんか見覚えがあるんだよなぁ…」
この壁をどこかで見たような気がするのだ。
「…あ」
そして気付く、あの洞窟から見たこの世界、左側の湾岸にあった街の壁がこんな色だったと。
つまり一度死に戻りしたことにより何故か大陸端の街に飛ばされたのだ。
つまりあの骸骨どもは死にイベントだったんだな、そうに違いない。
と考えていたとき
俺の視界にフルアーマーの人が立っているのが見えた。
もう少し近づくとそれが門番か何かであることに気付く、何故なら同じフルアーマーの人がもう1人いてその2人の間に巨大な鉄の扉があったからだ。
「ここから入ればいいのか…?」
フルアーマーの門番が立ち、閉じた重厚な鉄の門から漂う威圧感は歴戦の風格を思わせる。
俺が右の門番話かけると
目の前に顔ほどのウィンドウが出現し中に入るかどうかの確認をされる。
迷わず【はい】のボタンを押すと
視界が光の粒に覆われ次瞬、門を背に
視界の先に大きな城を捉えるメインストリートらしき場所に立っていた。
俺と城までは距離があるらしくよく見えないが城までの間に噴水のある広場があることに気付く。
その噴水に“ザ・布の服!”みたいな装備の人が沢山いることから彼らがプレイヤーだと推測できる
俺はとりあえず噴水に向かって歩みを進めた。
◆
噴水広場についたはいいのだが
先程からプレイヤーらしき人にやたらじろじろ見られてる気がする…
目があう奴あう奴皆ギョッとした顔をして去ってゆく
…俺、そんな怖い顔してたか?
たしかに高校生にしては老けてるって言わなくはないが
それは良い意味での渋さがあり父親似のキリッとした目、形のいい眉で中々に男前だと思っている
間違ってもヤのつく自由業みたいな顔はしてない筈だ。
…ならなんだこの反応は
とここで俺は見知った顔を発見する。
姉と妹だ。
先に始めた姉貴達は既に合流していたらしい
俺は駆け寄り話かける。
「おーい、姉貴~」
…何だその反応。
2人ともまるで不審者を見るような目をしている
「…どうかしたのか?」
と俺が聞くと姉がふと何かに気づいたような顔をして
俺を指差しながら言う。
「姉貴って…もしかして信也?」
この際美羽が姉の方をみて
「はぁ?」
みたいな顔をしているのはスルーしよう。
「…もしかしてなにも俺だが?」
当然だろという意味を込めてそういうと
姉が「ちょっと来なさい」と俺を噴水の方へ引っ張っていく。
「な、なんだよ」
と言うと
「いいからこれを見なさい!」
と俺の後頭部を持ちお辞儀の要領で
目の前まできた水面で俺の顔を見せr…
「……は?」
そこには…
スレンダーな体付きをし、いくら美白をしてもたどり着けない程の白さをした
骸骨g…
「えええええええええええええええ!?」
俺があまりのことに驚愕していると姉貴から「うるさい」と一喝をうけその驚愕を胸にしまった。
◆
「さて、説明してもらいましょうか」
とその鋭い目を向けてくるのは、クレアこと姉貴。
俺達はあれから場所を移しNPCが経営する喫茶店で世界的に人気がある黒い某炭酸飲料を飲んでいる。
さて、何故こんなことになったかとの問いだが。
「俺が聞きたいぐらいだ」
としか言えない。
すると、ナナこと美羽が
「お兄ちゃんのことだからまた何かやったに決まってるじゃない」
とか失礼なことを言ってきたので反論しようと思ったが
姉がそれに同調したので反論が出来なくなった。
なので原因をもう一度考えてみると
「…あ!」
一つの原因が思い浮かぶ。
姉達がこちらを見ながら俺の話を待っているので言ってやる。
「キャラクター作成場面がバグってたんだよ」
どうだ!と俺のせいじゃないことを告げるように言うと
美羽が若干悔しそうにしている。
…あとで覚えてとけよ
と思ってると姉貴が口を開く
「あんた変なボタン押さなかった?」
「…え?」
そう言えば押したような…
だが今それを言えば美羽に馬鹿にされそうなので、ごまかすか
「いや押してないよ」
「へぇ…嘘つくんだー」
この一言で勝敗が決し
美羽にドヤ顔をされた。
「あんたが押したボタンは【状況模写】よ」
と何事も無かったかの如く姉貴が説明を入れる。
「これを押すと怪我や汚れ状態異常が見た目に出るようになるの」
だから、といって俺に某炭酸飲料を飲ませる。
「こうやって飲み込んだものも見えるってわけ」
ここでよぎった疑問をぶつけてみる
「それ押さないと見えないの?」
すると姉貴が溜め息混じりに言う
「押しても普通は見えないわよ…ただ」
と言って今度は美羽に飲むように言う。
美羽は目の前のオレンジジュースを持ち
それを口につけると
次瞬…コップが空になった。
だが反応をみるからにしっかり味は感じているようだ。
「…これは食品だけじゃないわよ」
◆
姉貴の説明によると、他のアイテムにも
影響し
回復する為にはポショーンを飲み干さなければならない、装備を変えるには、いちいち着替えなければならない、敵の返り血で装備が汚れる等のデメリットがあるそうだ。
「なんでそんなもんがあんだよ…」
と俺が呟くと、美羽が自信満々に説明する。
「これはね!スポンサーの食品メーカーの要望でつけられたんだって!」
これがないと例えば“生姜焼き定食”を食べる場合でも、生姜焼きの味だけしか感じない。
だがこれを入れれば食べたものの味がする為、キャベツを食べればキャベツの味、ご飯を食べればご飯の味がするらしい。
…あれ?なかなか良くね
と俺が言うと
2人から散々言われる
「あのねぇ、回復が遅れるってのがどれほど恐ろしいことか分からない?このゲームでは回復量が増えるほど量が増えるのよ」
と言うが、俺は楽しむ為にこのゲームをやる訳で…
食事が楽しめるならそれはそれで
と言ったら呆れられ
諦めたのか話が変わる。
「で?どんなスキルとったのよ」
と姉貴が言うので
「スキルウィンドウ出ろ!」
と言って姉に見せるその直後
―クレアさんから対戦要請があります受けますか?―
といったウィンドウが出たので
華麗にスルーして。
「なにが駄目なんだよ!」
と反論してやる。
どうやらゲーム内では申請なしに攻撃できないようだから怖いものなどない。
「…全てよ!」
とどこか、もどかしそうに言うが
姉貴の言及は続く。
「まず、なんで攻撃技がないのよ!」
俺は何言ってんだと言う風に反論をする。
「あるだろうが【聖者の十字架】がよ!」
するとその返しを予想していたかのような速度で返される
「そんなもん当たるわけ無いでしょうが!」
俺は少し心あたりがあったが、その考えを押しのけるように言う。
「範囲攻撃なんだから当たるだろうが!」
それにまたもや反射的な速度で返してくる
「その範囲が凄まじく狭いって言ってんのよ!」
うっ…やっぱりか…
姉貴は俺が反論出来ないとみると
次の問題を突きつける。
「それに【愚か者の沼】って、あんたが愚か者よ!」
うっ…確かに…
さっき使った時に自分がかかって酷い目にあったので何も言えない俺に
更に問題が突きつけられる
「何が【バインディング】よ!!使ったら最後使用中止まで自分も動けないじゃない!」
なん…だと…
と驚愕する俺に最後の問題だ告げられる
「【陰縫い】にいたっては使うことすら出来ないバグスキルじゃない!!」
その一言の後
俺は拳骨の一撃も喰らうことなく
地にふしたのだった。
―後書き
教訓
女性に口で勝負を挑むな。
はい2話目です。
なぜ信也が骸骨かというと
途中からVGをかぶった影響で
身体情報の読み取りを失敗しているからで
唯一読み取れか骨格だけが表示されているからです。
体系によって当たり判定も変わる為
当たり判定は骨部分だけになります。
小説内で出さないだろいから補足すると
キャラクター設定時にいじれるのは
髪型や髪色
眉毛の形や色
瞳の形や色(猫目可能)
睫毛の長さや色
脂肪や筋肉の付き具合
です
よって基本フレームである骨格なんかは変えられないので
基本別人には出来ないようになっています。
スキルについては後々説明しますのでお楽しみを。
それでは
今年も良いお年を!