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あれから……
あの日の別れから5年が経った。
今じゃ俺も立派な高校2年生。
普通の高校に通い、普通の生活をしている。
ずば抜けて頭がいいとか、かっこよくない。
自分でも中の中だと思う。
「元気ないね~」
隣の席から声がする。
彼女の名前は高柳明音、俺を変えてくれた女。
あの日以来凄くお世話になってて、家族同士でも食事に行く仲になった。
「そうか ?」
素っ気ない返事をする。
明音はそう、と言って黒板に体を向けた。
明音には悪いと思ってる、この態度。
自分でもムカついてしまう。
口じゃ言えないから心の中でいっつも謝ってる。
窓の外にある大きな木が風に揺れる。
ヒューと音を立てて風は何処かへ飛んで行く。
いったい何処へ行くんだろう、俺もあんな風に何処かへ飛んでいきたい。
不意にそんなことを思うようになった。
この事を考えてると授業なんて頭に入ってこない。
知らない内に終わって明音と帰ってる。
そんな毎日がここ1,2週間続いてる。
いけないと分かってる。
母さんにも叱られた。
だけど、どうしても考えてしまう。
……久美のことを。