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神様の恋愛事情。  作者: 563
神様と私の出会い編
9/11

神様は、お願いする

話がぐだぐだです。すみません。

玄関で突っ立ていても仕方がないので私は春様を部屋に通すことにした。まぁ通す前にもう家のなかに入られているのだけれど。そして何故か黒猫も一緒にいる。


我が物顔でいる黒猫は春様のとなりにある座布団の上で丸くなっている。


夏だというのにくそ暑い温かいお茶を春様の前に出した。私も喉が渇いていたが沸かしたてのお茶を一気にあおろうとは思わなかった。そのお茶を先に手をつけたのは春様だった。部屋に入ってから何も言わない春様は猫を撫でるという行為以外じっとしている。昨日は上がって座布団に座ったとたんお茶を要求してきたというのに。


春様は湯飲みを持ちゆっくりとお茶を飲む。そしてぽつり、と呟く。



「美空ちゃんが入れてくれたお茶……。」



ぽっ、と、効果音が付きそうなほど頬を染めた春様は私をちらりとみて微笑んだ。おっかしいな私、お茶になにか変なのいれたっけ?



「…………。」

「…………。」

「…………。」

「…………。」



なんか苦しい。猫と神様相手は私にとっては辛すぎる。出来る物なら誰かと交代してもらいたい。誰か!春様がおかしいです!


沈黙は蝉の鳴き声と猫のゴロゴロとした鳴き声しか聞こえない。春様は猫を膝にのせて首を撫でている。夏なのに暑くないのだろうか、ただでさえ着物を着ているのに汗一つかいていない。私はタンクトップと短パンというのにもう若干汗をかいている。神様特殊能力が羨ましい限りだ。そう思って春様を見ていると、




「……神社の掃除のことについてのことだけれど、」




沈黙を破ったのは春様だった。私はぼーっと眺めていた春様の着物から春様の顔に視線を移した。春様の目元はまだ赤いがいたって真剣な顔だった。




「美空ちゃんは丁寧に掃除してくれたし、私としては適任だと思うのだけれど。」

「地元のみなさんもそうなんじゃないですか?」

「…………美空ちゃんがいい。」



なんて我が儘な神様だ。

春様は口元を膨らませ、私はじっと見つめる。



「私は、あんまりにも汚かったので掃除をしただけで掃除係になろうとしてやったわけじゃないです。」



あまりにも汚くて放っておいたら祟られそうだからやった、とは言わないが。


春様は指を机になぞりながらふぅ、と息を吐く。そして憂いに満ちた目で私をじっと見つめる。そうしても駄目?っとでも言うように。そして膝に乗っている猫までもが私を見つめる。まるで私を責めるような目をして。



「…………どうしても駄目なの?美空ちゃん。」

「私以外の人に頼んで下さい。」

「……神様特別御利益がつくのに?」

「神様の御利益は贔屓でやるもんじゃないと思いますよ。」

「むむ、」



春様は着物の袖に手を入れる。黒猫は私をみて大欠伸をする。蝉はジージーと鳴いている。



「……神様のお願い、聞いてくれない?」



春様が唇を尖らせていう様子を見て私の何かが切れた。



「…………っもう!なんなんですかっ!掃除で何でこんな話し合わなきゃならないんですか!」



暑くて、イライラして。もとより短気な私はとうとう頭に血が上る。私の声に猫は驚き、春様も一緒に驚いて目を丸くしている。



ああああ、もう。今日はなんにもしてないのに!まだ荷解きもまだで朝ご飯も食べてないのに!


田舎だったら都会の五月蠅い機械音や人のざわざわとした忙しい音から逃れられると思えば、今度は神様だ。私はゆっくりと過ごしていたいのに!


そんな私の心の叫びも届かず、春様はきょとんとした顔で応える。



「え?だって美空ちゃんがいいし…」

「もうっ!春様も我が儘過ぎるっ!なんなんですか!祟られると思って掃除したのに!やっかい事になるならやらなければ良かった!」



ぎゃんぎゃんわめく私に春様はおろおろしだし、私は立ち上がって、春様の前に指を突き詰める。春様は驚いてその指を見つめる。



「……美空ちゃん、落ち着こうか、」



春様は困ったようにその指を納めようとするが私の口は止まらない。



「神様神様って!なんなんですか!浮かぶし!瞬間移動するし!汗かかないし!狛犬動くし!怖いんですよ!そんでもってなんで神様に絡まれなくちゃいけないんですか!」

「いや、わかったから。」

「ああああああ、もうやだ。こんな事言っちゃたら多分祟られるぅ、あああもう!」

「た、祟らないから。」

「私は祟られたことがあるんです!」

「う、うん。」

「……あああああ、もうっ!じれったい!そんなにいうなら分かりました!掃除係引き受けてあげます!」

「は?え?…どういうこと?」



交換条件があるけれど!と、心の中に付け加え、春様をみれば春様はきょとんとしている。


頭に出てくる言葉をどんどん言っていった私は、少しずつ頭が冷めていく。そして色々と言葉が抜けている事に気付き私は焦りはじめる。―――ちがう、色々抜けてる!心の中で交換条件がある、なんていってどうする!口に出さなければ伝わらないに決まっているじゃないか!慌ててそれを付け加えようとするが時は既に遅し。


私が言い訳しようにも、春様は顔を輝かせて私に抱きついてきた。春様膝の上に乗っていた黒猫はそのまま落とされ「に"ゃっ」と悲鳴を上げる。



「美空ちゃん!ありがとう!」

「ちがいます!交換条件があるので聞いて下さいよ!」

「美空ちゃん大好き!私のために掃除頑張ってくださいねっ!」

「何が私のためですか!っ聞いて下さいってばっ!」




おかしい、こんなはずじゃない。



美空ちゃんが思った以上に頑固だから話も進まない。なので美空ちゃんにキレてもらった。ついでに思っていたことを春様にちゃっかり暴露。



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