ポンコツの詩
掲載日:2026/08/27
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
まずは詩の一節を添え、ご挨拶とさせていただきます。
白く乾いた鳥かごの底で
誰も知らない歌が鳴っている
声はなく、息も吐かず
ただ風の通り道として震えて
かつて翼を支えていた胸骨が
名もない空の重さを記憶しているように
削げ落ちた肉の向こう側で
静かな輪郭を空に刻んでいる
満ちるための音はいらない
からっぽの管を抜けていく風が
世界にただひとつの響きを残す
空を骨にして
言葉はふたたび透き通っていく
閉じ込められていた檻のなかで
あたたかな影をふりほどき
ただ透明な風となって
わたしは静かに飛んでいく
作品解説と後書き
本詩は、生命が去った後に残された「骨」と「風」を通じて、言葉や存在が極限まで削ぎ落とされた瞬間の美を描いた作品です。
鳥かごという不在の檻:かつて主が存在した場所(鳥かご)は、今や「白く乾いた」空白の象徴です。そこに残された胸骨は、飛翔の記憶を抱えたまま、ただ風を通す楽器へと変化しています。
空を骨にする:肉体という重荷(言葉の装飾や感情の過剰)が削げ落ちたことで、かえって「からっぽの管」を通る風の音が際立ちます。失うことでしか到達できない、純粋で透き通った存在のあり方を表現しています。




