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『私とヤるか、ゲームやるか』〜正体を隠した憧れの『神プレイヤー』が、タワマンで小悪魔JKを最強の指揮官(IGL)に育て上げる〜  作者: 夕姫


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2. 私とヤるか、ゲームやるか

 2. 私とヤるか、ゲームやるか



 指定された住所は、都内でも一等地にある見上げるような高級タワーマンションだった。


「……マジかよ。あの社長、姪っ子にどんだけいい部屋住ませてんだ」


 エントランスにいるコンシェルジュに名前を告げると、すでに話が通っていたらしく、専用のエレベーターで高層階へと案内された。


 ふかふかの絨毯が敷かれた内廊下を進み、指定された部屋のインターホンを鳴らす。


「はーい。開いてるから適当に入ってー」


 スピーカー越しに、少し気怠げな若い女の声がした。重厚なドアを開けて中に入ると、壁一面のガラス窓から都内の絶景が見渡せる……はずなのだが、分厚い遮光カーテンが完全に閉め切られていた。


 広々としたリビングのど真ん中を占領しているのは、最高級のゲーミングチェアと、何台ものモニターが怪しく光るプロ顔負けのゲーム環境。


 だが、その周囲は高級タワマンの品格を台無しにする惨状だった。


 オシャレなはずのガラステーブルの上には、エナジードリンクの空き缶が陣地を争うように並び、丸まったコンビニの袋やスナック菓子のゴミが無造作に放置されている。高級そうな革張りのソファには脱ぎっぱなしのパーカーやルームウェアがだらしなく引っ掛けられ、床には謎のケーブル類が乱雑に這い回っていた。


 足の踏み場もない「ゴミ屋敷」とまではいかないが、年頃の女子高生の部屋としてはあまりにも無頓着すぎる。


 そして、その惨状の中心――デスクの前で長い足を組み、スマホをいじっている少女がいた。


「あー。あなたが新しい家庭教師?」


 くるりと椅子を回転させ、彼女がオレを見上げる。その瞬間、オレは息を呑みそうになった。艶やかな金髪のロングヘアー。整った顔立ち。だが、何よりもオレの目を引いた……というか、目のやり場に困ったのは、そのあまりにも無防備な格好だった。


 ダボダボのオーバーサイズのTシャツは襟元が大きくズレており、華奢な肩と白い肌が覗いている。下は極端に短いショートパンツで、すらりとした太ももが剥き出しだ。いくらオートロックのタワマンとはいえ、初めて来る大人の男を前にして警戒心がなさすぎる。


「……鳴海です。一応、今日一日君のゲームを見るように言われてきた。よろしくお願いいたします」


 オレは必死に視線を泳がせないよう、どうにか大人の平坦な声を絞り出す。


 彼女――小鳥遊柚葉は、16歳の女子高生とは思えないほど大人びた、小悪魔のような笑みを浮かべた。


「ふーん。なんかもっと強そうな人が来るかと思ったけど、案外普通っていうか……パッとしないお兄さんじゃん」


「パッとしなくて悪かったな……とりあえず……」


 柚葉はふらりと立ち上がると、ゴミを避けてオレの目の前まで歩み寄り、至近距離で見上げてきた。甘ったるい香水の匂いと、不摂生な生活特有のけだるい熱。


 彼女はオレの胸元にそっと両手を這わせると、極端に短いショートパンツから伸びる白い太ももをオレの脚にすり寄せ、小悪魔のような、ひどく退廃的な笑みを浮かべた。


「ねえ、お兄さん。ここには私とお兄さんだけしかいない……家庭教師をする前に……お互いを理解した方が良くない?相性とかさ」


「相性?」


「うん。……例えば……私とヤるか、ゲームやるか。どっちがいい?」


「……は?」


「現役JKを抱けるんだよ?お兄さんみたいな冴えない大人には、一生ないチャンスでしょ?」


 そう言って、柚葉は背伸びをし、オレの耳元に唇を寄せた。


 ゆったりとしたTシャツ越しでも伝わってくる、女性らしい柔らかなふくらみが、オレの腕にむにゅっと意図的に押し当てられる。決して極端に大きいわけではないが、男の理性を揺さぶるには十分すぎるほど魅力的で、絶妙なサイズ感だった。


「……おい。冗談だろ、離れろ……」


「冗談じゃないよ。ほら、お兄さんの心臓、すっごい音立ててるじゃん」


 オレが後ずさろうとすると、柚葉は逃がさないとばかりにオレの首に腕を回し、さらに体重を預けてきた。甘い吐息が、オレの首筋をくすぐる。


「ゲームなんていつでもできるでしょ? でも、私は今だけだよ。……奥の部屋、ベッド広いからさ。お兄さんの好きなようにしていいよ?」


 柚葉はオレの目を見つめたまま、ゆっくりとオレの手を掴んだ。そして、そのオレの手を、自分のTシャツの下、柔らかな胸のふくらみへと力強く押し当てた。


「なっ……!?」


「ほら?柔らかいでしょ。……少し力を入れたらさ。……私も気持ちよくなるし、お兄さんも……ね?」


(――ッッッ!? ちょ、待て待て待て待て!! 距離が近いとか柔らかいとかいうレベルじゃねえ! 直接触ってる! クリティカルヒット! TTKキルタイムゼロ! 瞬殺ワンパンだろ、こんなの!! オレの理性がヘッドショットどころかグレネードで粉砕されかけてるぞ!!)


 脳内でけたたましいアラートが鳴り響く。金髪美少女の至近距離からの過激すぎる色仕掛け。しかも自分の身体をオレの手で愛撫させようとする明確なGOサイン。男として平常心でいられるわけがない。


 だが、ここで一線レッドラインを越えれば、オレは手取り3ヶ月分を失うどころか、未成年略取と淫行で『社会的に完全なゲームオーバー』を迎える。


 オレは必死に顔の筋肉を引き攣らせ、全神経を指先に集中させて、その柔らかな感触から手を振りほどいた。


「おい。近接戦闘(CQC)を仕掛けるなら、まずはフラッシュバンを投げてからにしろ。それと、オレの手を勝手に『ヒットボックス(当たり判定)』に誘導するな」


「ひっとぼっくす? ……ふふっ、何それ。お兄さん、もしかして童貞?」


 柚葉はクスクスと笑いながら、オレの手が離れても気にせず、自分の身体をさらに強く擦り寄せてきた。


「強がらなくていいのに。今まで来たおじさんたち、みーんな最後は『私』を選んだよ?お兄さんも、我慢しなくていいんだよ……?」


 完全にオレを「チョロい大人」として舐め腐っている動きだ。


(くそっ、この小悪魔め……!だが残念だったな。お前のその安い誘惑の裏にある『致命的な罠』は、とっくに丸見えなんだよ!)


 オレは小さくため息をつくと。


 無言のまま、足元に落ちていた彼女のパーカーを拾い上げ、柚葉の頭からバサッと乱暴に被せた。


「きゃっ!? な、ちょっと何すんのよ!」


 視界を奪われてジタバタする柚葉の頭を、パーカー越しにポンと軽く叩く。


「……悪いが、オレは子供の安い挑発に乗るほど暇じゃない。それに、オレはお前の叔母さん……社長から『手取り3ヶ月分』という莫大な額で雇われてるんだ。お前の身体より、その金の方がオレには100倍魅力的だ」


「は……?いや、だから私は……!」


「大体、お前みたいな高校生に手を出したら社会的に終わる。ただでさえ無職なのに、これ以上人生ハードモードにしてたまるか」


 オレの身も蓋もない返答に、柚葉はパーカーから顔を出し、ぽかんと口を開けた。そして、顔を真っ赤にしてオレを睨みつける。


「む、無職!?あんた、プロのコーチじゃないの!?素人!?」


「プロのコーチじゃないが、このゲームについては詳しいから問題ないだろ。社長から言われて来てる時点でそこは信用してもらわないとな」


 オレはため息をつき、彼女の隣のサブPCの前にどっかと腰を下ろした。


「……それとな。ゲームを始める前に、そのポケットに入ってるスマホを机の上に出せ。心配ならボイスレコーダーの録音は回したままでも構わないけどな」


「……えっ?」


 柚葉の身体が、ビクッと硬直した。


「ついでに、あのメインモニターの上。Webカメラの作動ランプが緑色に点きっぱなしだぞ。……今まで来たコーチ連中は、お前のその『ヒットボックス』の誘惑に釣られて手を出そうとした瞬間、録音と録画の罠を突きつけられて脅され、追い出されたんだろうな」


 オレが呆れたように言うと、柚葉は完全に図星を突かれた顔で、サァッと血の気が引かせた。


「な、なんで……」


「情報を制する者が盤面を制するからだ。お前の安っぽいセットアップなんて、部屋に入った瞬間に見えてたよ」


 オレは顎でモニターをしゃくった。


「そんなくだらないテストで身を守ってる暇があるなら、画面に向かえ。お前のプレイを見てやるから、とりあえず一試合やってみろ」


「……っ! なによ偉そうに!」


 オレの冷たい態度と、自分の罠を完全に見透かされた悔しさで、柚葉は舌打ちをしてチェアにドカッと座り直した。そして、親の仇のように激しくマウスを動かし、新たなマッチングの開始ボタンをターンと叩いた。

『面白い!』

『続きが気になるな』


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