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第十三夜(2)


「確かに扉が開いているね。」

「ここに来てあんた扉を動かした?」

「少しだけ動かしましたけど、確かに最初から開いていました。」


 三人が店に到着するとまずは扉の状況を確認することにした。扉はかなり開いていたわけではなく、ほんの少し隙間ができるほどしか最初は開いていなかったとリュカは説明する。


「店の鍵はどういう作りだったかな。」

「ルイが作ってくれた魔法陣と魔法で作られた鍵穴に、ルイの血液が入った鍵を差し込む形式です。僕は魔力が少ないせいでこの強い魔力のかかった鍵穴を開けられないから、直接魔力が込められたルイの血で開けるようになってます。」


 リュカはそう言ってコートの内ポケットから鍵を取り出す。鍵は半透明で、中に血管のような管が張り巡らされてその中にルイの血液が入れられている。その血液入りの鍵が鍵穴に入ると反応を起こし、魔法が発動し開くという構造だ。以前ルイが屋敷にきて以来ちょくちょくリュカの元を訪れていたルイは、既存の鍵では不安だと新しく鍵を作ってくれたのだ。


「なんか悪趣味な鍵ね。」

「仕方ないじゃないですか!」

「魔法陣が壊されている形跡がないかはわかるかい?」

「これは魔法陣と魔法の掛け合わせた複雑な物なので、ルイに見てもらわないと僕にはどうしようもないです。」

「一回鍵かけてみれば?」


 サラの提案にリュカは鍵を通すが普段通り施錠も解錠もできた。


「念の為ルイくんにピッキングできる隙ができていないか確認してもらおう。電話はあるかい?」

「店内にあります。でも中に誰かいるかも…。」

「全員で入るから安心してくれ。」


 三人は恐る恐る店内に入った。店内は特に荒らされた形跡はなく、いつも通りの光景だ。しかしリュカは恐怖で少し物音がするだけで異様に驚いてしまう。

 やっとのことで店の電話が置いてある場所まで到着し、リュカはダイヤルを回す。すると数コールもしないうちにルイが電話に出た。


「あ、ルイ!?仕事中にごめん。今ルイに確認したいことがあって。」

「や〜ん!!リュカから電話だなんてどうしたの?リュカより大事な仕事なんてないから大丈夫だよ!」

「うん、あのね、僕の店の鍵なんだけど、前変えてくれたじゃん。だけど今日何者かが侵入したみたいで鍵が壊れていないか見て欲しいんだ。」

「え!?泥棒が入ったってこと!?許せない!リュカの大切なお店に!」


 ルイはリュカのことになると周りが見えなくなるようでひたすら怒りに満ちていた。


「あれ?でも確認するって言ってもどうやって確認するのかしら。かなり距離あるわよ。」


 サラはふと疑問に思いユリウスを見上げた。


「魔法で鍵が作れる位だから魔女はなんでもできるだろう。」


 どう確認するかもわからずとりあえず電話させたのかとサラは心の内でユリウスにツッコミを入れた。


「それで、今からこっちに来れる?」

「もちろん!リュカのためならどこでもいくよ!今魔法陣は描ける?」


 リュカは店内を見渡し大きめの紙とペンを見つけた。


「うん大丈夫。」

「じゃあ僕も用意するから、描けたら教えて!」


 そう言って二人は一度受話器を下ろすと、紙に丸を描き、その中にに数字やら見たことのない言語のようなものを描いていく。その様子をサラとユリウスは不思議そうに眺めていた。


 数分後、紙いっぱいに解読できない文字が羅列され、リュカは額を拭ってまた受話器を手に取る。


「ルイ、描けたよ。」

「うん、僕も。じゃあ今から行くから少し離れて。」


 ルイに言われリュカは紙を床に置き二人を少し遠ざける。


「じゃあいち、に、のはいっ」


 ルイの掛け声の後、受話器の向こうではごとっとルイの受話器が落ちる音がした。それと同時にリュカが描いた魔法陣の上にはルイが立っていた。


「ふぅ!転送魔法成功!リュカの魔法陣は相変わらず丁寧だね!失敗すると体の半分だけ転送されちゃったりするから。」


 突然現れたルイにサラは目を丸くして、ユリウスは感心したようにうっすら笑みを浮かべる。


(こいつら魔女だけど、本当に魔女みたいなことをさらっとやったわね。)


 サラは二人に能力を見せつけられてなんだか不服そうだった。


「リュカ怖い目に遭わなかった?大丈夫?」


 ルイは目を潤ませリュカの腕に抱きつき、問題の扉まで移動した。そして鍵穴に向かって杖を向け、リュカのようにペンで書かずとも空中に魔法陣を発生させ、それを見つめたり、何か唱えたりして異常がないか真剣に確認した。しかし何もなかったようでルイは立ち上がる。


「特にいじられた形跡はないよ。第一僕が作った鍵がそう簡単に、しかも吸血鬼なんかに破られる訳ないじゃん。誰、鍵の性能を疑った奴は。」


 ルイはそう言い、言った犯人はわかっているといった圧をかけながらユリウスを睨んだが、ユリウスは俄然ニコニコと微笑んでいるだけだった。


「まぁ良いや。リュカが無事なら。じゃあ僕は戻るから、リュカ、くれぐれも気をつけるんだよ。悪い吸血鬼なんてわんさかいるんだからね!」


 ルイはリュカのおでこに口付けると先ほどの魔法陣に乗り、あっという間に姿を消した。元の仕事場に戻ったのだろう。ルイが去ってからユリウスも安心したようで鍵穴を覗く。


「いやぁ、鍵が故障していなくてよかった。」

「でもどうやって開けたんだろう…。」

「だからあんたが鍵をかけ忘れたのよ!」

「それは絶対ないです!僕覚えてますもん!」

「念の為、店の中も確認しておこうか。リュカの店は薬品を扱う。何か盗られていたら大変だ。先ほど警察にも先に確認すると伝えてあるから。」


 ユリウスは冷静に店内の確認を提案した。確かにこの店には販売する薬の他に、リュカが趣味で保有している薬品もある。それは薬になるものと、使い方を間違えれば毒にもなるものがあるため、在庫の確認は大切だ。三人は再び店内に入り手分けして確認作業を始めた。


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