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不思議な感触だ。手を伸ばしてもつかめるものはない。
星の重さに引き込まれて、体が闇に飲まれていく。
「ゴボッ、、、。」
体の中から空気とともに、生命に必要なものが失われていく。
酸素、熱、エネルギー、活力。
沈みゆく自分を動かすほどの力すら、もはや残っていない。
これだけ何もかも失われたというのに、まだ俺には残っているものがある。
そう、水だ。
体の中に際限なく流れ込んでくるこの液体。
あれだけ恐怖していたはずなのに。
なんでこいつの中で息絶えなくちゃならないんだ。
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「、、、っはぁ、、、、はあ、はあ、、、。」
相変わらず手を伸ばしてもつかめるものはない。
だが、俺の体はベッドに沈んでいるだけだった。
「夢にしては、ずいぶん嫌な質感だったな、、。」
さらさらというよりはまるでまとわりつくようで、とてもじっとりしていた。
「なんで沈む夢なんて見なくちゃいけないんだ、、。」
そんなことより不思議とのどが渇いた、おぼれた夢を見たのに不思議なものだ。
キッチンへ移動し、コップを手に取って、水を注いで、、、。
説明するまでもなく単調な、誰でも当たり前に行う動作のはずなのに。
「なんでかすごい違和感があるな、、。」
なんだか嫌な感覚だ、まあいい、とにかく水が飲みたい。
コップを口に運んだ、その瞬間だった。
『バシャッ』
ガラスが割れる音がしたはずだった。
だけど、水が落ちる音のほうが大きかった。
だって、水の量が多すぎたから。コップの中に入っていたはずの量の、何倍という量が落ちたから。
「あ゛え、、?」
ガラスの破片で、足から血が出ている。
水の量が多すぎて、キッチンが水浸しだ。
だけどそれ以上に、心臓の拍動で意識がもうろうとしている。
呼吸が荒くなりすぎて、目がチカチカ光ってよく見えない。
だが、見えなくても分かった。
感覚がなくなっていた。
俺の、さっきまでコップを持っていたはずの右腕は。
あるべきところから、なくなっていた。




