96 真っ先に答えを示したのは
スクエアとリズ、および他の者達……皆に二度目の驚愕が走り抜けた。そしてフォースのその宣言に対して真っ先に答えを示したのはリズであり……彼女は口元に当てていた両手をドレスの長い裾に下ろすと、おもむろにその裾をびりびりと破り取っていった。
「し、新婦……⁉」
神父の声には構わずに破った長い裾を放り捨てると、リズは先ほどよりは短くなったドレスの両端を持ち上げながらフォースへと駆けていき、彼へと跳ぶように抱きついていく。
「フォースさん!」
「リーゼロッテ様!」
互いの名を呼び合いながら、二人は固く抱擁する。人々が呆気に取られて見ているだけのなか、憤怒の形相で叫び声を上げたのはスクエアだった。
「き、貴様ら! よくもこの俺の結婚式でそんな不貞をしやがって! 王子を騙る偽物が! 貴様は極刑に」
リズとともにフォースがスクエアを見返し、信念を持った強い目で言った。
「不貞行為をしていたのはあなたのほうです、スクエア=ヴォクス」
「な、何を言って」
「証人なら数え切れないくらいいますよ。……あなたと密やかに婚約していたと主張する女性がたが。みなさん、これがスクエア=ヴォクスの本性です」
フォースの言葉を合図として、教会の外で隠れて様子を伺っていた多くの女性達が彼の背後に並び立っていく。全員が裏切られたことに対する激情を露わにしていた。
「な、き、君達は……⁉」
「あんた! 私が一番だって言ったじゃない!」「私を正妻にしてくれる約束はどうなったのよ!」「私だけ愛してるって言ってたでしょ!」「結婚指輪はきらびやかなダイヤを散りばめようってのは嘘だったの⁉」
「ま、待ってくれ、これには訳が……!」
他の女性達も口々に文句を連ねていて、いまにも暴動が起きそうな騒ぎになりつつあった。
そんななか、フォースが使用人席に座るメイドの一人をちらりと見て言う。
「加えてスクエア=ヴォクス、あなたは自家のメイドにも手を出していたようですね。……貴女もこのままでよろしいのですか?」
「……っ」
最後の一言はメイドに向けられた言葉であり……我慢がならなくなったらしいメイドが立ち上がり、彼女もまたスクエアへと大声の文句を口にした。
「酷いです! あんな田舎娘なんかさっさと婚約破棄して、君を正妻にしてあげるって言ってくれたのに! こんなのあんまりです!」
「い、いやあれはだね、忘れていたわけじゃなくて」
なおもスクエアが言い逃れをしようとしたとき、とてつもない衝撃音が天井付近に響き渡った。突然のことに騒ぎが一瞬で静寂し……片手を頭上に伸ばしていたヴォクス氏が静かな怒りを湛えた顔つきで立ち上がる。
「もういい! スクエア!」
「と、父さん?」




