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【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?  作者: ナロー


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92/98

92 そしてフォースは――。


 女性が言う。


「ほらね。やっぱり異常はありませんでした」

「し、しかし、ならこの胸の痛みと苦しみはなんなのですか……⁉ 私は確かに……っ」


 思わず立ち上がったフォースをまっすぐに見据えて、女性は答えた。


「恋患いです。……まさか実際にこんなこと言う日が来るとは思いませんでしたが」


 やれやれと女性が肩をすくめる。フォースが真面目なことは知っていたが、まさかここまで鈍感で朴念仁だとは思っていなかったのだ。


「こい……わずらい……⁉」

「恋の病と言い換えてもいいかもしれませんね。恋愛ものの漫画や小説などでときおり出てくるでしょう?」

「……自分は、そのようなものはあまり読みませんので……」

「ああ、フォース様は学術書や魔法書のほうをよく読むのでしたね。とりあえずお座りください」

「…………」


 まさか自分がそんな……とでも言いたげに困惑した様子を見せながらも、フォースは再び椅子に腰を下ろす。彼は戸惑いの目を女性に向けながら聞いた。


「……どうすれば、この病は治るのでしょうか……?」

「あのですね、本当に病気になっているわけではなく、あくまで比喩的な表現です。恋愛感情に正解や特効薬などというものはありません」


 ……この人は初恋らしいからなぁ……。そう思いつつ、半ば呆れながらも女性は言った。


「それでも、しいて特効薬があるとすれば、その恋に決着をつけることでしょうね」

「……決着……」

「一番は成就させることで、それができないのならきちんと諦めて失恋させること。いつまでも宙ぶらりんのままでは、ずっと胸のわだかまりは消えてくれないでしょう。最悪、一生後悔することになります」

「…………、……私は……どうすれば良いのでしょうか……?」


 うつむきがちにフォースは尋ねたが、女性は突き放すように答えた。


「言ったでしょう、恋愛にこれという決まった正解はないのです。他人に決めてもらうものでもありません。自分の恋の正解は、自分で導き出さなければいけません」

「……それが……自分なりの決着である、と……」

「その通り。理解が早くて助かります」


 女性は座っていた椅子から立ち上がりながら。


「フォース様が誰に恋したのかは、あえて聞かないでおきましょう。まあ、話の流れ的に察しはつきますしね。それよりも大切なことは」


 フォースがうつむいていた視線を女性へと上げる。その彼に女性が締めくくるように言った。


「フォース様がどうしたいか、どうするべきか、です。時間はもうあまり残されてはいませんが、それでも完全にないわけではありません。残された時間で考えて、行動して、あるいは選択して、自分なりの答えを導いてください」

「……私に、できるでしょうか……」

「できなければ、そのときはそれまでのことです。自分を信じてください」

「…………」

「貴方に女神と天使の加護があらんことを。まあ、気まぐれな女神と怠惰な天使かもしれませんが」


 女性が微笑む。

 そしてフォースは――。




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