91 恋愛としての好きは?
女性がフォースに聞く。
「リーゼロッテさん? 別れたあとって……あのあと会ってないの? あなたは彼女の世話役だったんじゃないの?」
「……その、今夜はヴォクス様とエリザベス様に無理を言って外してもらいました……」
「…………、リーゼロッテさんと別れる前までに何があったのか、話してくれる? 誰かに聞かれると困るだろうから、なかに入って」
「……はい……」
そうしてフォースは女性の部屋へと入り、用意された椅子に疲れたように腰を下ろすと、リズが屋敷に帰ってきてからの出来事を話し始めた。
――――。
話が終わり、女性はフォースの対面の椅子に座りながら自分の顎に手を当てて考え込む。そんな女性にフォースが尋ねた。
「……いったい、私の身になにが起きているのでしょうか……? スクエア様の拳を受け止めたときの衝撃が、身体に影響してしまっているのでしょうか……?」
「いや、それはないでしょうね。スクエアさんの拳はフォース様の胸には当たっていないのだから、胸が痛くなったり苦しくなるはずがありません。魔力や魔法の波動を使われたわけでもないのでしょう?」
「……はい……ではなにが原因なのでしょうか……?」
絨毯の敷かれた床を見ていた女性の目が、フォースへと上げられる。
「逆にお聞きします。失礼ながら、フォース様、誰かを好きになったことはありますか?」
「……え……? ……それがなにか関係が……?」
「はい。とにかく、誰かを好きになったことは?」
「……父上や母上、弟や妹、それと王宮の使用人達や飼っている動物達のことは好きですよ……あとこのお屋敷にいる人達のことも……」
「それは好きは好きでも親愛や友愛としての好きです。そうではなく、恋愛としての好きは? この人と恋人になりたい、もっと進んで結婚したいと思ったことはありますか?」
「……っ⁉」
フォースは明らかに動揺した。彼はすぐには答えなかったが、その様子を見た女性は即座に理解して、あちゃーとでも言いたげに自分の額に手を当てる。
「やっぱりですか……」
「た、確かに私は誰かに恋したことはありませんが……それとこれとなにか関係があるのですか? 私のこの胸の痛みと苦しみは事実なのですよ?」
「では診察魔法で診てみましょうか」
女性が指をぱちんと鳴らし、フォースの胸部を挟むように、二つのウィンドウが胸部の前後に現れる。そのウィンドウが淡い光を放ち……数秒後、その光が消えて結果が表示された。
【異常なし。健康体】




