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【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?  作者: ナロー


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89/98

89 好きです


 リズは言った。それまで我慢していた本音を。いままで言ってはいけないと自制していた本心を。

 リズの気持ちは限界に近づいていた。


「わたし、嫌です! あんな人と結婚なんて! そんなことするくらいなら死んだほうがマシです!」

「っ! それはいけませんリーゼロッテ様!」

「じゃあどうすればいいんですか⁉ あの人と結婚して、死んだような毎日を、一生を生きろっていうんですか⁉」

「それは……」

「助けてください、フォースさん!」

「っ⁉」


 リズが叫ぶように言う。事実、それは彼女の心の叫びだった。


「フォースさんはいつだって助けてくれたじゃないですか! フランソワーズさんのときのように、リリアンナさんのときのように、シャーロットさんのときのように、これも助けてくださいよ!」


 そのときになって、ようやくのことでリズは自分の気持ちに気づいた。否、無意識、潜在意識では以前からそう思っていたのだ。

 だがフォースの正体が分かるまでは年齢差を言い訳にして、正体が分かったあとは身分差を言い訳にして、気づかないようにしていたのだ。

 フォースの胸に埋めていた顔を上げて、リズは彼の顔をまっすぐ見て言った。彼女の瞳には涙が潤んでいた。


「好きです、フォースさん」

「……!」

「王子さまだからじゃない。お金持ちだからじゃない。強いからでもない。あなたはとても優しくて、わたしが困ったときは助けてくれて、かといってわたしに気づかせることも恩を売ろうともしないで……そんな人知れない優しさを持つあなたが好きです。たとえあなたが王子さまじゃなくても、お金持ちじゃなくても、強くなくても……最初に会ったおじさんの姿だったとしても、わたしは好きになっていました」

「…………。……リーゼロッテ様……私は……」


 フォースがなにかを口にしようとしたとき、閉じられている玄関の扉の向こうから足音が聞こえてきた。扉を開けて、一人の女性……回復魔法士の女性が顔を見せる。


「あ、リーゼロッテさんにホースさん、こんなところにいたのね。エリザベス様がお待ちですよ。明日の準備が色々あるのですから早く来てほしいって。……って、リーゼロッテさん、泣いてるの? どこか怪我したの?」


 女性が近づいてこようとするが、それより早くフォースはリズから離れると彼女に背を向けて玄関へと歩いていく。


「…………いえ、目にゴミが入ったようで、それを取ろうとしていたのです。なかなか取れないようで、私も近寄って様子を見ていました……」


 それはフォースの言い訳だった。リズが自分のすぐそばにいた言い訳を女性にしたのだ。あるいは自分への言い訳として。

 リズに振り返ることもせず、フォースはそのまま玄関から屋敷に入ると、


「……私は先にエリザベス様のところに行って、明日の準備を手伝ってきます。リーゼロッテ様のことはお願いします」

「それは別にいいけど……」

「それでは……」


 フォースが廊下を進んでいく。その背中を見送った女性がリズを見た。


「何かあったの?」

「…………」


 リズは答えず、いつまでもフォースの背中を見つめていた。

 ……置いていかないで……。

 リズはいつまでも見つめていた。




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