73 『愛の道』
……もしかしてフォースさんにはなにか考えが思いついたのかもしれない……。
リズはそう察すると、素直にフォースの言うことを聞いて、女性に一時の暇を告げるカーテシーをしてドアに背を向けた。ドアが閉まる音を背後に、歩きながらフォースに聞く。
「なにか思いついたんですか、フォースさん?」
「……日課のお散歩という話から、おそらくシャーロット様は、どこかで恋人のかたとお会いしているのかもしれません」
「あ……」
そこでリズも気づいた。別荘の後ろは、小さくはあっても森が広がっている。別荘の窓から見えない木立の陰などで、シャーロットと恋人が密会している可能性は充分あった。
「なるほど……でも、どこで会っているのかは……?」
「毎日同じ場所を通って会っているのであれば、地面の草が踏みしめられて道を示してくれているかもしれません。獣道ならぬ、シャーロット様と恋人様の『愛の道』といったところでしょうか」
「……フォースさんって、けっこうロマンチストなんですね」
「……私は考えられる可能性を言っただけです。ロマンティストな点は、否定はできませんが」
「……実はわたしもけっこうロマンスに憧れたりするんですよ。ふふ」
フォースがリズを見た。なぜ微笑んだのか分からないというような、不思議そうな顔をしていた。そんな彼を見て、リズはもっとおかしくなってしまう。
とはいえ、いまはシャーロットを探すのが先決だった。フォースの隣を歩きながら、彼女は地面に残されているかもしれない痕跡を探していき……夕闇に覆われて見えにくくなっているが、それを見つけた。
「見てください、フォースさん。フォースさんの言う通り、雑草が踏まれた跡があります」
フォースが夕闇に包まれる木立に視線を投げる。
「森へと続いているようです。向かいましょう」
「はい」
「……もしここで決着をつけるなら、足音も立てないようにしましょう」
「……ですね」
二人は押し黙って、足音も忍ばせて森の奥へと進んでいく。数分ほど歩いたとき、フォースがリズの前に腕を伸ばして止まらせた。
しーっと、フォースが口元に人差し指を持っていって、そばにあった木立の一本の陰に隠れる。リズもすぐに彼のそばに行って、同じように隠れた。
フォースが前方を見るように目で合図して、リズもそちらを見やる。暗闇に包まれる木立のなかに、うっすらとだがなにか……いや、誰かの姿がぼんやりと見えた。
距離にして、おそらく五、六メートルくらいだろうか。最初は目が暗闇に慣れていないこともあって、一人の大柄な人物かと思ったが……目を凝らしてよく見てみると、それは二人の男女が抱き合っている姿だった。
シャーロットと恋人の男性だった。




