72 貴女の味方
「……どうしたらいいのか……だんだん分からなくなってきちゃって……わたしがもっと頭が良くて、権力やお金があれば……」
「リーゼロッテ様」
小窓の向こうからフォースが言った。これだけは確実で、確信を持って言えるという声で。
「私は貴女の味方です。また協力者です。貴女一人だけが悩む必要はありません」
「……フォースさん……」
「ぎりぎりまで考えましょう。私もまた昨夜から考えています、いまだに答えは見つかりませんが。それでも考え続ければ、必ずや道は開けるはずです。大丈夫、貴女には私がついています」
「……ありがとう、ございます……」
……そうだ、弱音を吐いている場合じゃない、考えるんだ、考えるのよ、リーゼロッテ……。
フォースの励ましに元気をもらって、リズはもう一度、思考の海へと潜っていく。やがて馬車が停止し、ドアが開かれた。
「……参りましょう、リーゼロッテ様。この先にいらっしゃるシャーロット様に会いに」
「……はい」
ドアから外へと出て、リズは別荘の玄関へと向かっていく。玄関ドアのそばにつけられた呼び鈴を押すと、はーいという声がして中年の使用人の女性が顔を見せた。
「こんばんは、私はリーゼロッテと申します。シャーロットさんの知り合いなんですけど、シャーロットさんはいらっしゃいますか?」
「まぁまぁ、こんな遠いところまで、ありがとうございます。大変だったでしょう」
女性は明るく受け答えした。その様子から、リーゼロッテがシャーロットと同じくスクエアの婚約者であることを知らないらしい。
あるいはシャーロットが話していないのだろう。
「シャーロット様なら、日課のお散歩に出掛けておられますよ。いつも日没くらいに帰ってこられるので、もうそろそろ帰宅するのではないかしら」
シャーロットの知り合い、かつ、御者姿のフォースを連れているリズを見て、リズのことも貴族の娘だと思ったらしい。
「よろしければ、中に入ってお待ちになってください。いま紅茶とお菓子を用意しますから」
「あ……それじゃあ……」
リズが答えようとしたとき、フォースが口を挟んだ。
「ご厚意、ありがとうございます。しかしシャーロット様を差し置いて、先に紅茶とお菓子をいただくわけにもいかないでしょう。シャーロット様がお近くにいるのでしたら、散策がてら私達が探してみます。紅茶とお菓子は、シャーロット様とともにいただきましょう」
「あら、そうですか? でも、その方がもっと美味しく楽しく頂けますわね。それじゃあ私はお茶会の用意をして、お待ちしています」
「ありがとうございます」
フォースがリズに言う。
「それでは参りましょう、リーゼロッテ様」
「え、あ、はい」




