71 シャーロットを助け出すために
そして放課後。リズはホースが御者を務める馬車に乗り、シャーロットがいるという王都の外れの別荘に向かっていた。
馬車に揺られて、窓外を流れる景色を眺めながら、リズは思考を巡らせていた。シャーロットを婚約者から引きずり下ろすための策を、彼女を助け出すための起死回生の案を。
昨日の夜も考え続けていた。授業を受けている間も考え続けていた。そしてこうしていまも考え続けている。
アイデア自体はいくつか思いついていた。フランソワーズが自分にやったような流言を流すこと……リリアンナが自分にしようとしたように傷をつけること……あるいはいっそのことシャーロットと恋人に駆け落ちしてもらって、自分達はそれを誤魔化して二人は死んだと偽装すること……。他にもいくつかあった。
しかし、そのいずれにおいても、確実性に欠けていた。フランソワーズやリリアンナがしたことを真似しても、自分のときと同じように失敗に終わってしまうかもしれない。シャーロットと恋人の死の偽装も、ちゃんと綿密に調べられてしまってはバレてしまうだろう。
(確実に、百パーセント、絶対に成功する方法……絶対に成功させなくちゃいけない、方法……)
もしも失敗すれば、シャーロットと恋人の身を逆に危険に晒してしまうことになる。リズ自身も、フランソワーズやリリアンナのように王都やヴォクス家に近づくことができなくなる……。
(いえ、わたしが王都やヴォクス家に近づけなくなるのは構わない……シャーロットさんを助けられなくなるのが、嫌。絶対に、一生、後悔することになるから)
後悔しないために、シャーロットを助け出すために……だから、リズは懸命に考え続ける。これだけは絶対に失敗させてはいけないのだから。
そうして考え続けている間にも馬車は進み続けて……夕方の陽が地平線の彼方に沈んでいこうとしているときに、ようやくのことで目的の別荘らしき建物が見えてきた。
御者台に通じる小窓の向こうからフォースの声。
「リーゼロッテ様。間もなくシャーロット様の別荘に到着いたします。……準備はよろしいですか?」
「…………」
彼が聞いているのは、無論シャーロットを婚約者から下ろすための方策だ。だが、リズは答えることができない。
代わりに彼女は小窓に頭をもたれさせるようにして、つぶやいた。気落ちした声で。
「……ごめんなさい……考えてはいるんです……いくつか思いついてはいるんです……でも、どれも失敗する可能性を否定しきれなくて……これだけは絶対に成功させなくちゃいけないのに……」
「…………」
それはリズが見せる二回目の弱音だった。一回目は昨夜の庭園で……あのときシャーロットを助けると豪語したのに、いまだに確実な方法を思いつけていなかった。
そんな自分に嫌気がさすくらいに。




