70 彼女の別荘
翌日。リズはスクエアの両親と朝食をともにしていた。スクエアの姿はなかった。
その朝食の席にて、リズはリリアンナの処遇を聞いていた。ヴォクス夫人いわく。
「リリアンナの件ですが、昨夜のうちに彼女の国外追放が決定致しました。大まかな内容はフランソワーズのときと同様です。つまり、リーゼロッテ様達を傷つけようとした者を婚約者とし続けることは、ヴォクス家の名誉と信頼を傷つけることにつながる……よってリリアンナを国外追放とし、王都とヴォクス家に近寄ることを禁じ、リリアンナを心配した家族もまた彼女の追放先に移住することになりました」
「……そうですか……」
「まあ、リリアンナは冒険者としても活動しているらしいので、追放や、王都とヴォクス家に近寄ることはあまり痛手ではないかもしれませんが。ヴォクス家の権力と財産を好き勝手に使われなくなったこと、およびリーゼロッテ様達の身を危険に晒さなくなったことだけでも良しとしましょう」
「……そうですね……」
リズはどこか上の空な様子だった。考えごとでもしているのか、心ここにあらずといった感じだった。
そんな彼女にヴォクス夫人が心配そうな声をかける。
「リーゼロッテ様? 大丈夫ですか?」
「……へ……?」
「ぼーっとしておられたようでしたから。体調でも悪いのですか? もしかして昨日のリリアンナの襲撃のショックがまだ……?」
「あ、いえ、そうじゃないんです……っ」
「そうですか……?」
「はい……ちょっと、シャーロットさんのことを考えていただけで……」
「……!」
夫人がヴォクス氏と目を見交わせる。直接口には出していないが、夫人が昨夜リズやフォースに依頼したことは、ヴォクス氏の依頼でもあるのだ。
「……そうですか……。リーゼロッテ様は今日も学園ですよね。もし放課後にシャーロットさんとお話したいというのであれば、王都の外れにある彼女の別荘を訪れてはいかがでしょう?」
「え……シャーロットさんの別荘、ですか……?」
「はい。最近のシャーロットさんは、時間さえあればその別荘で過ごしているそうです。別荘の前は草原が広がり、後ろは小さな森がある、そんな緑に囲まれた良いところですよ」
「…………」
……そこに行けば、シャーロットさんがいる。そこに行けば、なにかがあり、なにかが分かる……。
ヴォクス夫人は、まるで言外にそう言っているようだった。
リズは小さく静かにうなずいた。
「分かりました。放課後、そこに行ってみます」
「……では、ホースをお供につけましょう。ホースはそこまでの道を知っていますから」
壁際に控えていたホースにリズが目を向けると、彼もまた静かにうなずいた。
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