69 この運命から助けないと
スクエア達はいつの間にかいなくなっていた。あるいはフォースの足音を聞いて逃げたのかもしれない。
「見回りにきたのですが、どうしてリーゼロッテ様がこんなところに……? お部屋でお休みになって……」
彼が最後まで言う前に、彼女は彼の胸へと飛び込んで、その背中に手を回して抱きついていた。
「⁉ リーゼロッテ様⁉」
「なにも言わないでください……少しの間、このままでいさせてください……お願いだから……」
「…………」
いったいどういうことなのかと、戸惑った顔を浮かべながらも、フォースはリズの言うままにしていた……。
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「……なるほど……そんなことが……」
「……はい……」
落ち着きを取り戻したあと、リズはフォースから離れて先ほど目撃したことを話していた。
その話をする前に、東屋にある椅子に腰をかけてはどうかとフォースが勧めたのだが、リズは静かに首を横に振っていた。その意味するところを、フォースはいま察していた。
少なくとも、いま、スクエア達がいたところにはいたくなかったのだと。
「……スクエア様にも困ったものですね……そのメイドにも。これ以上、女性関係をややこしくしないようにと言われているはずなのですが」
「…………」
「リーゼロッテ様……?」
リズの様子はいつもと違っていた。スクエアや、一緒にいたメイドに対して、驚いているわけでも困惑しているわけでも、まして怒っているわけでもない。
リズはなにかを思い詰めた顔をしていた。そんな真面目な顔をフォースに向けて言う。
「フォースさん。わたし、シャーロットさんをスクエアさんの婚約者から引きずり下ろしてみせます」
「……!」
「具体的にどうやるのかは、まだ決めていませんけど……。でも、あんな男の人のために、シャーロットさんを悲しい目に遭わせるわけにはいきません。シャーロットさんをこの運命から助けないと」
「……本当に、よろしいのですか? もしシャーロット様を婚約者でなくしてしまえば、あとに残されたリーゼロッテ様が……」
婚約者はリズただ一人だけとなり、リズ自身を婚約者の座から引きずり下ろす者がいなくなってしまうことになる。
しかしリズは力強く、決心した顔でうなずいた。
「あとのことは、あとで考えます。いまはシャーロットさんを助けないといけないんです。だから、わたしに協力してください、フォースさん」
リズのその決心を汲み取って、フォースは自分の胸に白手袋をはめた右手を添えると恭しく答えた。
「分かりました。リーゼロッテ様。私は貴女に協力いたします」
その手の甲が一瞬きらりと光り、王家の紋章がその一瞬だけ浮かび上がった。
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