65 助けてあげてください
夫人がリズをまっすぐに見つめた。
『リーゼロッテ様。貴女を信じて、言います。シャーロットさん達を助けてあげてください。悪役のヴォクス家の私が、こんなこと言うのはおかしいのでしょうが』
『…………っ』
返答することができないでいるリズに代わって、フォースが口を挟んだ。
『しかしエリザベス様、スクエア様がそうしているのならば、エリザベス様やヴォクス様が婚約を破棄するように言い渡せるのではないでしょうか?』
『……残念ながら、これらはあくまでなんとか聞き込みして調べ上げた話で、スクエアがそうしたという直接の物的証拠がないのです』
『ならば、私の記録魔法で……』
『フランソワーズのときのように、記録と記憶を読み取れば、ですか? しかし貴方も知っているように、記録魔法はあくまで魔法です。高等技術ではありますがその気になれば記録を改竄することもできます』
『それは……』
『だからこそ、警察も私達も記録魔法だけでは取り締まることができません。記録魔法の情報を元にして、それ以外の物的証拠も集める必要があります。フランソワーズのときもあのあと、あの写真やそれを撮影した小型カメラ、そしてそれらに付着していたフランソワーズの指紋などを迅速に調べてから、彼女が主犯であると確定させました。まあ、フランソワーズ自身が早々に諦めて白状してくれたことも大きいですが』
『……はい、そうでしたね……』
そこでヴォクス夫人は申し訳ない表情になる。
『しかし、申し訳ありません、これは私の落ち度ですが……フランソワーズの追放の言い渡しの過程で、貴方の記録魔法と映像のことがスクエアに知られてしまいました。息子はどうしようもない浮気性ですが、やはりヴォクス家の血を引いているだけあって、頭もそれなりに回るのです……正確には悪知恵でしょうが。貴方の記録魔法を知って、すぐにスクエアはいろいろと対策してしまったようです』
『対策、ですか……?』
『ええ。詳しいことは分かりませんが、おそらく記録魔法に対するアンチ魔法の類いでしょう。少なくとも、シャーロットさんの件に関する記録魔法での情報収集は、期待しないほうがよいでしょう。……誠に申し訳ありません……』
『……いえ……フランソワーズ様の件では、記録魔法の情報の申告をしたのは私です。そうしなければフランソワーズ様を追放できなかったのですから、これは仕方のないことです。エリザベス様の責任ではありません』
『…………』




